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16彼の屋敷に行きます1
私は毎日気落ちしていたが家に帰ればロニオに癒され元気を貰えた。
そうやって私は元気を取り戻し、先週ピューリ殿下に騎士の服を作ったのでリビアンにも同じように騎士の服を作るべきと思い立った。
だってくよくよしても仕方がないじゃない。
シルフィの事だって彼女は親戚になるんだし、これからだって彼女は屋敷に出入りするのよ。
いちいちその程度で目くじら立てていたらやってはいけないじゃない。
それにしてもあの人いつもヴィントとの距離近いのよね‥
心のモヤモヤを追い払おうとリビアンの騎士服作りに取り掛かる。
色違いのフェルトに革で肩当てに胸ポケット、ベルトに紋章型のワッペンもすべて同じにした。もちろんソードベルトも同じ。
さあ、出来たわ。
これでふたりの喜ぶ姿が目に浮かぶわ。
週末がやって来た。
公爵家の迎えの馬車がやって来て執事のダートと侍女のライラが見送りをしてくれた。
お土産には、張り切って作った手作りのサンドイッチと領地から届いた新鮮な果物で作ってもらったジャムを持って行く。
伯爵家のタウンハウスとは比べ物にならない大きな鉄柵の門が見えた来た。そこに辿り着くまでにも広い庭。手入の行き届いた美しい庭園が柵越しに見えた。
「このおうちすごい大っきいね」
「そうね。ロニオ。今日もこの前王宮に言った時みたいにお行儀良くしてね」
「うん、ぼく知ってるよ。ここのお兄さんがお姉様のおっとになるんでしょ?」
「うふっ。そうよ。私とヴィント様は婚約した。ううん、結婚の約束をしたのよ」
「ふ~ん。そうなんだ。けっこんするんだ。じゃあ、お姉様はヴィント様をあいしてるんだね。よかったねお姉様」
ロニオはにっこり微笑んだ。
ロニオには絵本をよく読む。お話では結婚するのはいつも愛し合った人がするものだ。
はぁ~胸が痛い。私とヴィントはもちろん愛し合ってなどいない。王命に近い話でそうなっただけの関係。
でも、断ることも出来ないで、受け入れるしかない状況の中、何とかお互いを知って関係がうまく行くようにしたいと思ってはいる。が‥
そんな事ばかり考えていてはうまく行く事も行かなくなってしまう。
ロニオも心配するしきっとヴィントの弟のリビアンだっていい気持ちはしないだろう。
今日こそヴィントとのわだかまりを少しでもなくせるようにしよう!
私はそう意気込んで馬車を下りた。
「いらっしゃい。今日は俺もリビアンもすごく楽しみにしていたんだ」
笑顔で出迎えてくれたのはもちろんヴィントと弟のリビアンだった。
その後ろには公爵邸の使用人たちがずらりと控えているが。
すっと差し出された手にそっと手を乗せる。
この前手をつないだと言えるかどうか、手と握られたのは殿下がドレスを贈るとか言って慌ててヴィントが自分がドレスを贈ると言った時だったかしら?
あれは殿下があんなことを言ったからヴィントが焦っていたからそうなっただけで。
まったく、婚約者なのに手をつないだこともないなんて‥
もぉ!
そう思うと私は軽くヴィントの手を握っていた。
彼が少し驚いた顔で私を見た。
私は微笑んで「男性の手って大きな手ですね。いつもロニオの手ばかり握ってるので驚いてしまって」
「いいんだ。このまま手を繋いで入っても?」
「ええ、いいですね」
「ああ、巷では恋人はこんなふうに手をつなぐらしいんだ」
ヴィントはそう言うと指と指を絡めて手をつないだ。
「あっ‥」
「嫌だった?」
思わず握られた手が離れそうになる。私は嫌ではないと急いでその指を絡めとる。
ううんと首を横に振ると唇がうれしさで弧を描いた。
「それは何?」
ヴィントが反対の手に持っていた籠を覗き込む。
「あの‥これは‥実はヴィント様、この前プリンを食べ損ねたのでおわびにサンドイッチを作って来たんですけど‥」
うわぁ、やっぱり余計だったかな?
びくびく顔で彼を見る。
「わざわざ俺の為に?もしかしてサンドイッチはアマリエッタの手作りなのか?」
彼は驚いた顔で尋ねる。
「ええ、私が作ったのよ。ロニオもお手伝いしたの」
「そうか。それは楽しみだ。昼は庭で食べようか」
良かった。これで少しはわだかまりがなくなりそうかも。
ほっと振り返れば後ろからロニオとリビアンが付いて来ている。
いきなりロニオが言った。
「お姉様ってこんやくしゃとあいしあってるんだって」
ちょ、ロニオったら何を言うのよ!
私は馬車の中の話の事だと思ったがまさかここで言うとは思ってもいなかった。
ヴィントの顔が固まる。
「あの‥弟が‥その‥すみません」
「いいんだ。小さな子供だ。愛し合っているから婚約すると思って無理はない」
「じゃあ、お兄様もあいしてるんですか」今度はリビアンが聞いた。
ヴィントは真っ赤になって「ばか、子供が大人をからかうんじゃない。あ、愛してるから婚約したんだ!」
それってホントに?私の方が聞きたくなったが彼の温和な態度に来て良かったと思えた。
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