20 / 37
18彼の屋敷に行きます3
私は、ほっと息を吐いてどさりとソファーに座り込む。
ヴィントはすごく申し訳なさそうな顔はしているが‥
ロニオまで心配そうな顔で私を見ていた。
ああ、ロニオにまで心配させてるじゃない。
まったく。仕方ない。
私は肩をすくめると「ヴィント様すみません。私、お婆様に嫌われちゃいましたね」口角を無理やり上げる。
ヴィントは少しほっとしたような顔をした。
勘違いしないで。私はロニオの為にそう言っただけ!
「いや、いいんだ。アマリエッタ気にしないでくれ。サルバート家は代々宰相を輩出しているせいか気位が高いと言うか‥祖母は特に元は王女だから‥それなりのマナーだとか節度だとか華美になり過ぎないようにとか色々うるさくて俺にもいつもあの調子なんだ。でも、それさえ気をつければ気さくでいい人だから」
「ええ、きっとそうでしょうね。でも私の事は気に入らないみたいですからこれからもずっとあの態度変わらないと思いますけど」
「いや、そんな事は」
私は何とか微笑むがすっきりとしない。
当たり前じゃない!
もう!しっかりしなさいよ。妻一人守れないなんて男じゃないんじゃない?
ほんとにこんな人と結婚してやっている訳?
私、あんな嫌味な人とずっと一緒なんて無理だから‥
ヴィントは何か言いたそうに口ごもる。
もう、はっきりしない男ね。言いたいことがあれば言ってよ!
「あの‥この前のドレスの時もあんな事を言ったが気にしなくていい。アマリエッタは自分の好きな物を身につければいいから。お婆様が何か言ったら俺が対処する」
「はっ、そんなこと出来るわけないじゃない!あなたがお婆様に強く出れない事はもうわかったわ」
「いや、そんなことはない。アマリエッタは俺の婚約者だ。俺がいいと言ってるんだ。お婆様の事は気にしなくていい」
どうしたんだろう。
今日のヴィントが頗すこぶる頼りがいのある男みたいに見えるんだけど?
今までは無口だし嫌な奴なのかと思っていたけど‥
私を庇って守ろうとしてるわけ?
ほんと私って単純だからちょっと優しくされると答えなきゃって思うのよね。
私も意地を張ってないで本当の自分を知ってもらった方がいいのかも‥
「ヴィント様。実は私、見かけは派手ですけど本当はあまり派手なものは好きじゃないんです。服も大人しい感じの淡い色が好きですし、アクササリーや靴だって履き心地のいいものが好きなんです。まあ、今日はさすがに少し気合を入れたんですけどね」
私のドレスは淡いグリーンとベージュでハイネックですっきりしたデザイン。
だが、華美ではないしいやらしさもない。
それにもちろん一点ものだけど。
それにネイルは赤色。でも、爪は短いんだけど。
化粧はまあ、少し気合を入れたから‥口紅はネイルと同じ赤色。目元もくっきり。
これでも悩んだのよね。
彼の色って黒か金色だから。こんな色をいれたらド派手になっちゃうし‥
「アマリエッタ化粧もネイルも良く似合ってるから。その爪も調理をするから短くしてるんだろう?」
「あっ、わかりました?ええ、そうなんです。もちろん調理をするときはネイルも落としますよ。だから安心して下さい」
「ああ、そうだと思っていた。やっぱり君は俺の思っていた通りの人だ」
「やだ、ヴィント様。私の事かい被り過ぎですよ。期待外れさせても知りませんよ」
お婆様の一言にはさすがに引いたけど彼がこんな優しい人なら大丈夫かな。
なんて思うと気負っていた気持ちがすっと落ち着いていた。
あなたにおすすめの小説
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。
夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。
真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。
そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。
数量は合っている。
だが、なぜか中身の重量だけが減っている。
違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。
そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。
しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。
それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。
「では、正式な監査をお願いいたします」
やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり――
隠されていた不正はすべて暴かれる。
そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。
これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、
“正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。
再会の約束の場所に彼は現れなかった
四折 柊
恋愛
ロジェはジゼルに言った。「ジゼル。三年後にここに来てほしい。僕は君に正式に婚約を申し込みたい」と。平民のロジェは男爵令嬢であるジゼルにプロポーズするために博士号を得たいと考えていた。彼は能力を見込まれ、隣国の研究室に招待されたのだ。
そして三年後、ジゼルは約束の場所でロジェを待った。ところが彼は現れない。代わりにそこに来たのは見知らぬ美しい女性だった。彼女はジゼルに残酷な言葉を放つ。「彼は私と結婚することになりました」とーーーー。(全5話)
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
必要とされなくても、私はここにいます
あう
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスのもとへ嫁ぐことになったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、理想の妻になろうとも、誰かの上に立とうともしなかった。
口出ししない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
ただ静かに、そこにいるだけ。
そんな彼女の在り方は、少しずつ屋敷の空気を変えていく。
張りつめていた人々の距離はやわらぎ、日々の営みは穏やかに整いはじめる。
何かを勝ち取る物語ではない。
誰かを打ち負かす物語でもない。
それでも確かに、彼女がいることで守られていくものがある。
これは、
声高に愛を叫ばなくても伝わる想いと、
何も奪わないからこそ育っていく信頼を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。