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第六章【亜空間を翔る者】
第二幕『暴かれる甘美と禁秘』
「――それでは、失礼します!――」
前回同様、全部脱いだけどこれでよかったのかな?
「それで、これからどうすんのぉ? あたし自身の秘密も二種類あるよねぇ?」
言わずもがなの二種類の選択肢だが、今回は二者択一する気は毛頭ない。
「――あなたが知っている秘密全部知りたいって言いましたよね?」
「……わぁっ……!ちょ……ぶ」
なにかを言いかけたサリーさんの口を引き寄せて、自分の口で塞いだ。
「ちょ、ちょっと待ってよ! ちゃんとあたしの話を聞いてっ! 君はあたしが何者なのか知った上でそんなことをしているの!?」
目の前にいる若くて美しい人、彼女がどんな人間だったのかは村さんの内緒話で聞いている。
「実を言うと、村さんから聞いてます……。村さんを責めないでくださいね」
「責めないよー。責めないけど自分は責めるよ! 君をタイムリーパーにした元凶なんだよ……? 君にタイムリープを教えた占い師なんだよ? あの時の老婆だよ?」
切なく、悲しそうな表情をして目にたくさんの涙を溜めている。
「サリーさんが元アーカイブ・ホリックでタイムリーパーだったなら、当然私より世代が上の人だってことは解ってました。前回、こう言いましたよね?」
『君ってむっつり助兵衛さんだよねぇ……』『……君、やっぱりド助兵衛さんだぁ!』
「助兵衛さんって言い方がうちのお婆ちゃんと同じだったんですよ……。現代人ならスケベとかエッチとかヘンタイとか、そんな言い方するはずですから!」
「うっ、うぅ……お婆ちゃんと同じとか言わないでよぉー!今はタイムリープで遡ったときの死亡年齢なんだからね!でも、黙っててごめんねぇ……」
そう言いながらサリーさんはさめざめと泣き始めた……。
十分《じゅっぷん》弱経過しただろうか?泣いていたサリーさんは少し落ち着きを取り戻したようだ。
「――君にはもう一つ、話しておかないといけないことがあるんだぁ……」
充血した目をこすりながらサリーさんは口を開いた。
「その前に、タイムリープの方法を私や村さんに教えてしまったことを後悔しないでくださいね。あなたは間違っていないんですよ。こうやって再び会えたのもタイムリーパーになればこそでしょ」
結果的には老占い師、いやサリーさんが手渡した手順は一部誤りがあった。タイムリーパーになったのは自己責任なのだ。
「先にこちらから質問しますね。亜空間奉仕活動の初日、あなたはアイスコーヒーを飲むように勧めましたよね?」
そうだ、あの行動の真意を探れば管理者二人のうち、どちらが私を欺こうとしているのか判明するはずだ。
「ふぇ? あたしの大好物のアイスコーヒーを勧めたけど、君全然飲まなかったよねぇ?」
「村さんに言われたんですよ!亜空間で飲み食いすると、亜空間《ここ》と結びついて現実で目覚めなくなる可能性があるって。衝撃銃《ショックガン》の弊害より酷いと……」
真っ直ぐ見つめたサリーさんの顔は、涙が渇き安堵の表情に変わった。
「そっかぁ!それで君、あたしを避けて一ヶ月やり過ごしたんでしょー?」
「避けてたのばれてましたか……。それで真相はどうなんです? ここで飲み食いすると……」
言いかけるとサリーさんは腹を抱えて笑い出した。
「ぷはっ!ふふふっ!君、そんなの信じる方がダメダメだよぉー!ぷぷぷっ!」
目の前で裸婦が腹を抱えて笑い転げている……。なんともエロス……じゃなくて妙な光景だ。
「いや、おかしいとは思ってましたよ。物理法則なんか通じない世界で飲み食いする意味がないし、意識体だから排泄もないのに」
「ただね、全然影響がないわけじゃあないんだぁ……。村さんはそれを大袈裟に言ったんだねぇ」
「やっぱり、亜空間《ここ》と結びつくんですか?」
「微々たる影響だけどねぇ……。かなりの量を飲み食いすると亜空間と結びついちゃうかもね」
これで、わだかまりの一つは氷解した。彼女は悪意があってアイスコーヒーを勧めたのではない。
「三大欲求はねぇ、肉体の名残らしいよん」
瞬間的に思考を働かせた。三大欲求って何だっけ……?
「サリーさん、三大欲求って……食欲と排泄と食欲でしたっけ?」
「ぷーっ!君、勉強してないなぁ。食欲二回言ったよ!食欲と睡眠欲じゃないのぉー!」
なるほど、食欲は肉体の名残で、睡眠は意識体が疲弊したときに不可欠な要素だ。
「あれ? もう一つは排泄欲で当たってました?」
違うな、三大欲求は確か、食欲と睡眠欲と……。
「――もう一つはこれか!」
考えるのを止めて、サリーさんと唇を重ね合わせた。
「あ、そういえば……。体液もアウトだって村さん言ってたなぁ」
「君ねぇ、生々しくムードをぶち壊すプロじゃないのぉ? 体液も飲食物もここでは幻想なんだよー。あってないようなものなの!肉体の名残だから消えちゃうんだよぉ。さっき、あたしの涙が消えるとこ見てたでしょー?」
「なるほど!これでわだかまりは完全に解けました!あとは……」
再びサリーさんを抱き寄せて唇を重ね合わせたまま、両手を絡めて組み伏せた。
「……ほんとに顏に似合ない強引さと荒々しさがあるよねぇ……君は……」
――――その後しばらくの間――――――
タワー二階の仮眠室は、吐息とロックと軋み音で三重奏を奏でた。
布団の中でひとしきり戯《たわむ》れた後、本題に入ることにした。
「――さっき言いかけた、私に話しておかないといけないことってなんですか?」
「……君ねぇ、いきなりそれ? 余韻《よいん》を楽しむというか…。情緒がないなぁ……」
紅潮した顔のサリーさんが天井を見たまま呟いた。
「オスの事後は熱したフライパンに水をぶっかけるようなもんですよ。すぐ冷めるんです。それに、意識体じゃ空砲を発射したような……変な感じですね」
「――それじゃあ、とっても冷静な君に話しておこうかな……」
鼻先が触れる距離でこちらを向いたサリーさんから出た言葉は私を一秒で混乱させた。
「……君は……、元アーカイブ・ホリックなんだ。この世界で唯一、タイムスパイラルから抜け出した、生まれながらのタイムリーパーなの」
「だから、君の存在自体が管理局にとって最高機密の一つなんだよ……」
――私が、元アーカイブ・ホリック?
――――生まれながらのタイムリーパー?
前回同様、全部脱いだけどこれでよかったのかな?
「それで、これからどうすんのぉ? あたし自身の秘密も二種類あるよねぇ?」
言わずもがなの二種類の選択肢だが、今回は二者択一する気は毛頭ない。
「――あなたが知っている秘密全部知りたいって言いましたよね?」
「……わぁっ……!ちょ……ぶ」
なにかを言いかけたサリーさんの口を引き寄せて、自分の口で塞いだ。
「ちょ、ちょっと待ってよ! ちゃんとあたしの話を聞いてっ! 君はあたしが何者なのか知った上でそんなことをしているの!?」
目の前にいる若くて美しい人、彼女がどんな人間だったのかは村さんの内緒話で聞いている。
「実を言うと、村さんから聞いてます……。村さんを責めないでくださいね」
「責めないよー。責めないけど自分は責めるよ! 君をタイムリーパーにした元凶なんだよ……? 君にタイムリープを教えた占い師なんだよ? あの時の老婆だよ?」
切なく、悲しそうな表情をして目にたくさんの涙を溜めている。
「サリーさんが元アーカイブ・ホリックでタイムリーパーだったなら、当然私より世代が上の人だってことは解ってました。前回、こう言いましたよね?」
『君ってむっつり助兵衛さんだよねぇ……』『……君、やっぱりド助兵衛さんだぁ!』
「助兵衛さんって言い方がうちのお婆ちゃんと同じだったんですよ……。現代人ならスケベとかエッチとかヘンタイとか、そんな言い方するはずですから!」
「うっ、うぅ……お婆ちゃんと同じとか言わないでよぉー!今はタイムリープで遡ったときの死亡年齢なんだからね!でも、黙っててごめんねぇ……」
そう言いながらサリーさんはさめざめと泣き始めた……。
十分《じゅっぷん》弱経過しただろうか?泣いていたサリーさんは少し落ち着きを取り戻したようだ。
「――君にはもう一つ、話しておかないといけないことがあるんだぁ……」
充血した目をこすりながらサリーさんは口を開いた。
「その前に、タイムリープの方法を私や村さんに教えてしまったことを後悔しないでくださいね。あなたは間違っていないんですよ。こうやって再び会えたのもタイムリーパーになればこそでしょ」
結果的には老占い師、いやサリーさんが手渡した手順は一部誤りがあった。タイムリーパーになったのは自己責任なのだ。
「先にこちらから質問しますね。亜空間奉仕活動の初日、あなたはアイスコーヒーを飲むように勧めましたよね?」
そうだ、あの行動の真意を探れば管理者二人のうち、どちらが私を欺こうとしているのか判明するはずだ。
「ふぇ? あたしの大好物のアイスコーヒーを勧めたけど、君全然飲まなかったよねぇ?」
「村さんに言われたんですよ!亜空間で飲み食いすると、亜空間《ここ》と結びついて現実で目覚めなくなる可能性があるって。衝撃銃《ショックガン》の弊害より酷いと……」
真っ直ぐ見つめたサリーさんの顔は、涙が渇き安堵の表情に変わった。
「そっかぁ!それで君、あたしを避けて一ヶ月やり過ごしたんでしょー?」
「避けてたのばれてましたか……。それで真相はどうなんです? ここで飲み食いすると……」
言いかけるとサリーさんは腹を抱えて笑い出した。
「ぷはっ!ふふふっ!君、そんなの信じる方がダメダメだよぉー!ぷぷぷっ!」
目の前で裸婦が腹を抱えて笑い転げている……。なんともエロス……じゃなくて妙な光景だ。
「いや、おかしいとは思ってましたよ。物理法則なんか通じない世界で飲み食いする意味がないし、意識体だから排泄もないのに」
「ただね、全然影響がないわけじゃあないんだぁ……。村さんはそれを大袈裟に言ったんだねぇ」
「やっぱり、亜空間《ここ》と結びつくんですか?」
「微々たる影響だけどねぇ……。かなりの量を飲み食いすると亜空間と結びついちゃうかもね」
これで、わだかまりの一つは氷解した。彼女は悪意があってアイスコーヒーを勧めたのではない。
「三大欲求はねぇ、肉体の名残らしいよん」
瞬間的に思考を働かせた。三大欲求って何だっけ……?
「サリーさん、三大欲求って……食欲と排泄と食欲でしたっけ?」
「ぷーっ!君、勉強してないなぁ。食欲二回言ったよ!食欲と睡眠欲じゃないのぉー!」
なるほど、食欲は肉体の名残で、睡眠は意識体が疲弊したときに不可欠な要素だ。
「あれ? もう一つは排泄欲で当たってました?」
違うな、三大欲求は確か、食欲と睡眠欲と……。
「――もう一つはこれか!」
考えるのを止めて、サリーさんと唇を重ね合わせた。
「あ、そういえば……。体液もアウトだって村さん言ってたなぁ」
「君ねぇ、生々しくムードをぶち壊すプロじゃないのぉ? 体液も飲食物もここでは幻想なんだよー。あってないようなものなの!肉体の名残だから消えちゃうんだよぉ。さっき、あたしの涙が消えるとこ見てたでしょー?」
「なるほど!これでわだかまりは完全に解けました!あとは……」
再びサリーさんを抱き寄せて唇を重ね合わせたまま、両手を絡めて組み伏せた。
「……ほんとに顏に似合ない強引さと荒々しさがあるよねぇ……君は……」
――――その後しばらくの間――――――
タワー二階の仮眠室は、吐息とロックと軋み音で三重奏を奏でた。
布団の中でひとしきり戯《たわむ》れた後、本題に入ることにした。
「――さっき言いかけた、私に話しておかないといけないことってなんですか?」
「……君ねぇ、いきなりそれ? 余韻《よいん》を楽しむというか…。情緒がないなぁ……」
紅潮した顔のサリーさんが天井を見たまま呟いた。
「オスの事後は熱したフライパンに水をぶっかけるようなもんですよ。すぐ冷めるんです。それに、意識体じゃ空砲を発射したような……変な感じですね」
「――それじゃあ、とっても冷静な君に話しておこうかな……」
鼻先が触れる距離でこちらを向いたサリーさんから出た言葉は私を一秒で混乱させた。
「……君は……、元アーカイブ・ホリックなんだ。この世界で唯一、タイムスパイラルから抜け出した、生まれながらのタイムリーパーなの」
「だから、君の存在自体が管理局にとって最高機密の一つなんだよ……」
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