そして、私は遡る。戻れないタイムリーパーの秘密

藍染惣右介兵衛

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第八章【時の最果て】

第四幕『珠玉のタイムリープ』

【前書き】
※以下、ネタバレがあります。


ここから読むと全ての謎が解けてしまいます。





 第一章から読んでいなければ、以下を読み進めるのはお勧めできません(・.・;)

ただでさえつまらない物語が……

すごくつまらなくなります(・▽・;)

【本文】
 その者は回転椅子に座ったまま振り返り、私に言葉を投げ返した。

「――ラスボスか? ラスボスは主人公《ヒーロー》に倒される運命だろ? 俺はラスボスにはならねえよ。そんでもって、お前も主人公《ヒーロー》じゃねえよな……」

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「村さん、この男に見覚えがありますよね? サリーさんはゴーグルで自分が死んだ時代に合わせて見てください!」

腰に引っ提げていたゴーグルをかけて、ダイヤルを回したサリーさんは驚きの声をあげた。

「ええっ……!? 君は……そんなっ!」

「おい、お前がいったいなんで亜空間《こんなとこ》にいるんだ!?」

サリーさんに続いて、村さんも見覚えのある顔にがく然としている。

「サリーさんの死も、村さんの死も、この男が関わっているんです! いや、亜空間の管理者の自殺にはコイツが関わっていると私は推察しました……なあ、そうだろ!?」












 「玉成満《ミツ》!!」

「まったりルミナ!!」

「玉成君!!」

私、サリーさん、村さん、三人同時にその男の名前を呼んだ。




 「なにやらお前が現界《あっち》でウロウロして探っている様子だったからな。亜空間《こっち》でも管理者の雁首揃えて、あたかも秘密に気付きましたとばかりに宣言してたよな?」

玉成《ミツ》は不敵に薄笑いを浮かべている。

「私が長岡親方の入院先をお前に聞いた時点で、村さんが死亡する日の様子を親方から聞くと思ったんだろ? それに、なにが『まったりルミナ』だ……ふざけた言葉遊戯《アナグラム》のネーミングだな!」

私は玉成《ミツ》に指摘した。

『まったり』という言葉は、昭和初期から中期に使われていない。

元々は地方の方言でしかない言葉が広まったのは平成に入ってからなのだ。

「ありゃ……? 玉成満《たまなりみつる》君って言ったよねぇ!? まったりルミナ……まつたりるみな……たまなり……みつる……あっ!」

サリーさんはこのくだらない言葉遊戯《アナグラム》に気付いたようだ。



 「ちょっと待ってくれ!それじゃあわしの死は……玉成君が仕組んだってのか!?」

村さんは玉成《ミツ》を指差して言った。

「そうですよ。長岡親方に二つの質問をするだけで答えは推察できました」







 ――――土曜日夕刻、〇〇〇記念病院、六階の二十三号室――――

私は長岡親方の方を振り返り、こう切り出したのだ。

「――親方、最後に二つだけ質問してもよろしいでしょうか?」

「うん? なんだ?」

「親方は今の稼業の前に芸人をやっていた時期はありますか? 実は昔の芸人でまったりのルミナを調べていまして……」

「いや、ないぞ。芸人でまったりのルミナ? 知らんな……」

シラをきっている様子には見えない。本当に知らないのだろう。

「それと……、一番大事なことを聞き忘れていました。村山さんが亡くなった日、事務所の鍵を村山さん以外の人に一度でも預けましたか?」

「おう、あの日は若松からお前ら二人来たじゃねえか。玉成の奴が積み込み手伝ったときに鍵を開けたんだが……おい、まさかっ!? 玉成が改造銃を……」

親方の言うとおり、引き出しの鍵を開けて改造銃にすり替えたのは玉成《ミツ》だろう。

しかし、玉成《ミツ》がタイムリーパーとなると証拠を残すわけがない。

「いいえ、違いますよ……私たちは学生だったんですよ? 改造銃なんて……」

この場は親方に堪《こら》えてもらうために誤魔化すしかないな。

「そうか……そりゃそうだよなあ。第一、玉成と村山は仕事場《テキヤ》でも仲が良かったからな。ガキだった玉成が拳銃すり替えて村山を殺《や》る理由なんてねえよな」

納得したという表情はしていなかったが、追撃の言葉が親方から発せられる前に私は病室を後にした。

――――玉成《ミツ》はタイムリーパーだった!――――










 病室での親方とのやり取りを私から聞いた村さんは驚きを隠せない様子だ。

「玉成君……、本当なのか!? 玩具銃《モデルガン》を改造銃にすり替えたのか!? お前はタイムリーパーでわしの行動を知っていたっていうのか!?」

「ちょっと待ってよぉー!まったりのルミナとそこにいる玉成君は容姿が違うよぉ? ゴーグルを付けて見ると、あたしが知ってる芸人のルミナだけど……なんで容姿が変わっちゃうのぉ?」

サリーさんの時代では、芸人トリオまったりのルミナ。

村さんの時代では、私の同級生で若松商店で共にバイトをしていた玉成満。





 「サリーさん、村さん、おそらくですが……玉成《ミツ》のタイムリープは我々のタイムリープと違うんですよ。サリーさん言いましたよね? タイムリープの方法はルミナから受け取った『時逆昇術』のメモが元になったと……」

私の言葉を遮るように玉成《ミツ》は椅子から立ち上がってパチパチ拍手を始めた。

「お見事! その通りだぞ親友! その女、キャバレーのミザリーに教えた時逆昇術と、俺のタイムリープは全く異なるものだ。それにまさかお前がタイムリープを忘れようとして、同級生の記憶をなくすとはな……イレギュラーな事態だったぞ!」

「そうだな、玉成《ミツ》! 逆にそれがお前への決定的な疑いの元になった! 同級生の顔や名前を忘れている中で一番付き合いの長いお前のことはすべて覚えていた。なに一つ欠けることなくだ……」

通常なら同窓会のお誘いで玉成《ミツ》が家に来たとき、『誰でしたっけ? 同窓会って誰の?』となるはずだ。

しかし、玉成《ミツ》との間にあまりにも頻繁に交流があったため、私の脳は失う対象を別のものに置き換えたのだ。つまり、玉成満《タイムリーパー》以外の同級生の記憶を霞ませた。











 「ね、ねぇ……。それじゃあ、あたしが死んだときも薬やお酒に細工したのかなぁ?」

サリーさんが私の方を向いて聞いてきた。

「そうでしょうね。お店で食事しているとき、既に薬を混ぜられていた可能性もあります。肩を借りて家まで送ってもらったんですよね? その後、眠剤とお酒に細工したんだと思いますよ。より強い薬と強いお酒にね」

私が言うと玉成《ミツ》はニヤリと笑いながら、また椅子にどかりと腰掛けた。

「実に察しがいいな。さすが俺の親友、さすが我が相棒だワトソン君! だけど、俺のタイムリープの方法まで推察することはできねえだろう?」

「誰がワトソンだ! それにお前はホームズじゃないだろ……、どちらかと言うとモリアーティ教授だぞ? 玉成《ミツ》、お前のタイムリープは明らかに私たちのと違う、まるで他人になりすまして……。まさか……他人の意識を乗っ取れるのか!?」

完全なタイムリープは通常、自分の意識を乗っ取って成功する。
まったく別人の意識を乗っ取るタイムリープ方法があるというのだろうか……。



 「――普段は謙虚で鈍感なクセに、ここ一番で鋭いなお前は。そうだ、俺のタイムリープは他人の意識を乗っ取ってしまう。そこのサリーという女の時代では、売れない芸人の意識を乗っ取った。そして、まったりというグループを作り、ルミナと名乗った。お前の言う、ふざけた言葉遊戯《アナグラム》でな!」

「……なあ、玉成《ミツ》。お前はいったいなにがしたいんだ? ループ中のタイムリーパーを自殺に追い込んで、亜空間《ここ》へ落とす意味はなんだ?」

私は玉成《ミツ》の座っている場所へ近付いた。
やはり、タワー一階の監視システムと同じようなコンピューターが並んでいる。

「自殺に追い込むか……。そうでもしないとタイムスパイラルからは抜けられんぞ! それに、命の恩人でもある親友を殺人鬼呼ばわりするんじゃねえよ」

命の恩人……?私の?何を言ってるんだろうか。











 「なんで玉成《ミツ》が私の命の恩人なんだ!? お互いいろいろ助け合って来たが命がけってほどのことはなかったはずだぞ!?」

少し大袈裟に見ても、命を救われたような事件などなかったはずだ。

「十一回だ、十一回!なんのことか解らねえのか?」

玉成《ミツ》は両手の人差し指を立てて、数字の十一を作っている。




 「まさかっ!? い、いや……少しだが予感はあったんだ……。他人の意識を乗っ取れるタイムリープがあること、自分の意識が乗っ取られたから離人症になって、タイムスパイラルを私だけが生きて脱出できたんじゃないかと……」

私の嫌な予感は悉《ことごと》く当たっていたというわけか……。








「――お前を六歳から一〇歳のタイムスパイラルから救い出したのは……俺だ!」
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