そして、私は遡る。戻れないタイムリーパーの秘密

藍染惣右介兵衛

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第一章【病むを得ず】

第一幕『自称タイムリーパー』

【前書き】
※第一章は主人公視点。現代です。
※基本的に説明口調でタイムリープを説明します。
__________________________

 自分の体を抜け出す感覚を覚えたのはいつの日だっただろう。
過度に疲れたり、酒を飲んだり、体調不良だったりすると睡眠の質がやたら悪い。
そんなとき、起こりがちな現象がいわゆる体外離脱というやつだ。

(来た……抜けそうだな)

 この数ヶ月、過去に患ったある病気を探るためにチャンスを待っていた。
体から勢いよく抜け出すと、感覚に慣れるまで周囲をウロウロと歩いてみる。





 ゆらゆらゆらり、頭がふらり。
なんとも現実感の無い不思議な世界になったものだ。

「あの時の変な感覚じは、ちゃんと病名が付いていたんだな……」


 私は10歳頃の自分自身を見下ろして勝手に納得する。

 家庭科の実習室で、ボーッと授業を受ける昔の自分。
夢の中にいるのか、現実にいるのか曖昧になっている自分がそこにいた。

 しばらくするとキーンと耳鳴りがし始める……。
まあ、いつもこんな感じで目覚めるのだが。





 私は、木原大。齢は33歳、独身。職業は会社員。自称タイムリーパーだ。

 タイムスリップとタイムリープを混同している人がたくさんいるから一応説明しておこう。

 タイムスリップは何らかの装置で肉体ごと時空変異させたり、予期せぬ事故で別の時代に飛ばされてしまうことだ。自分が生まれている時代なら、もう一人の自分がいる。

 タイムリープは装置を使って時間旅行すること、あるいはその身一つで時空変異を引き起こすことだ。肉体を持って行かない場合もこちらに属す。タイムスリップとの大きな違いは、過去の自分に戻ってしまう点だ。

 どっちも現実味を帯びていない、SFのお話だと思っておいてほしい。





 まず、タイムマシーンなんてものが発明されるのは理論上可能とはいえ、エネルギー問題から実現は不可能とされているし、ましてやタイムリープなどと言うとトンデモ扱いされてしまうだろう。

 私のタイムリープは、その昔占い師に基礎を教えてもらい、自己流で編み出した肉体を持って行かない方法だ。

 『戻りたい時間に行くことができても、過去の自分を乗っ取らない』

 時間を遡る能力を得た者の最大の禁則事項がこれ。





 ここまで読んで思っていないだろうか?

「過去へ戻って強くてニューゲームで、人生イージーモード!」

 ――そんなワケがない。
そうやって過去に戻って行った『アホ』は、とんでもない結末が待ってるだけだ。
 




「タイムリープの方法を教えてください」

 このように真面目に聞いてくる人もいる。
冗談交じりに漏らした与太話を本気にするタイプだ。

「どうして過去に戻りたいの? 理由を教えてくれないか?」

 必ずこう返答する。

 すると、戻りたい理由が実にくだらない。
多いのが恋愛関係、失恋したやら告白しておけばよかったなどなど……。
次に友人関係、人生の分岐路である進路関係も多い。

 くだらないと言ってしまったが、本人にとっては命がけの重大事かもしれない。

 しかし、それを差し引いても、タイムリープして過去の自分を乗っ取るほどのことではない。大きなリスクがあるからだ。

「方法を教えても、君には実践できない。何年も訓練も必要だ、難しいからね」

 とまあ、本気で聞かれると大概はスルーだ。
他人の事情に関わることほど面倒なことはない。

「どうしても戻ってやり直したいので、方法だけでも教えてくれませんか?」

 食い下がる奴もいるわけで、そんなときは決まってこう言う。

「タイムリープに必要なものは、2つある。1つ目は人体の中にあるものだ。2つ目は外部ツール、ツールと言ったら道具を使うくさいけど、道具じゃない。あとは自分で考えて探すことだ」





 
 
 今回、タイムリープした先は子どもの頃の変な違和感があった時期だ。
体調不良でもないのに、目の前がおかしい時期があった。

 離人症という認知機能の障害らしい。
夢の中にいるのか、現実にいるのか解らない。
別世界に自分だけが乖離したような、不思議な感覚を今でも覚えている。

「今って夢なのかな? 現実?」

 授業中にふと考えて、手鏡をしたものだ。





 タイムリープを終えて、現実に戻ってきた私は考えた。

「何故、離人症になったのか、その理由を知りたい」

   

 

 そして、私は遡る。


_______________________________
【後書き】
※この小説は時系列がかなり複雑になります。
※ストーリーが難解で理解出来なくなったらタブブラウザで読み終わったエピソードを開いてみてください。
※伏線の回収、人物視点の変更など、別の章でも同じ場面の話だったりします。是非比べてみてください。
※そうすることによって、真相に近づくことができるかもしれません。
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