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第二章【動いていない世界】
第一幕『管理局、都市伝説化』
これまでに起こった解決が難しいと思われる問題。
自分自身が数十年後からタイムリープして来た可能性があること。
同級生の顔や名前、過去の出来事を断片的に忘れ去っていることだ。
最早、これらは医者だろうが学者だろうか答えを出すことはできない。
ある超特殊な人間を除いては……。
「あそこ、あんまり行きたくないんだけどなー」
気乗りはしない。そこはタイムリープを使う上で必ず通過する場所だ。
通常なら通過するだけで、そこへ長く停滞してはいけない。そういう決まりなのだ。
ちょっとややこしい言い回しかもしれない。要するに狭間の世界みたいなものだ。
私たちが住む世界は『動いている世界』、タイムリープは『動いている世界』から『動いている過去の世界』へと行く。その間に通過するのが『動いていない世界』だ。
動いていない世界はタイムリープで通過するだけだ。
タイムリーパーに課せられる禁則事項は、この動いていない世界を管理する者たちが発布している。
動いていない世界、つまり時間と時間の間を管理、監視している者がいる。
私は自室のベッドで意識体となり、タイムリープを試みた。
そして、目を閉じて少しばかり念じると、動かない世界が目の前に広がっていた。
(――赤っぽい視界でいいんだっけ?)
動いていない世界は現実世界と比べると、ちょっとカラーが変だ。
これは入り方にもよるのだが、私の眼が変になってるのかもしれない。
しばらく動いていない世界を歩く。
この世界は一見すると、現実世界と変わらない。町の中に家が建ち並び、道路もあるが車は通っていない。
ただ、何もかも動いていないだけだ。一部を除いて……。
キョロキョロ辺りを見ながら歩いていると、
「コラッ! こっち入ったらいかんじゃないか!」
工具箱を片手に持った作業服姿の中年男性が駆け寄ってきた。
「なんだ、またお前か。ここはなるべく来るなって言ってるのに、懲りない奴だなぁ……」
幸運だった。前にタイムリープを失敗して動いていない世界に落ちたときにここで出会った人だった。
「……すみません、村さん。どうしても聞きたいことがあって……。すぐ会うためにこの方法で来たんです……」
その中年男性は前に村山と名乗っていた。
話をするうちに村さんと呼ぶようになった。
「禁則に触れない範囲なら答えられるけど?」
村さんはやれやれといった表情で近くにあったベンチに腰を下ろした。
「タイムリープが影響して現在の自分に何か変化が現れることがありますか? 例えば未来の自分が今いる自分を乗っ取ったら何か変異しますか?」
隠しても仕方ないので率直に疑問をぶつけてみた。
「お前なー。それ思いっきり禁則犯した後の話じゃないのか!?」
村さんはベンチにふんぞり返って、はぁーっと大きな溜息をついた。
「あの、例えばって話ですからね。例えばの……」
「じゃ、わしも例えばで答える。もし、今のお前自身が未来のお前に乗っ取られていたら……」
期待していた通りの答えが返ってくるだろう、そんな予感が十分あった。
「――乗っ取られていたら、その影響が体の変調として出る。そんでまたタイムリープやっちまう未来へ行きやすい心身になるってわけだ」
ああ、期待以上の答えだ。恐ろしい結論を導き出してくれるものだ。さすが時空間のプロというべきか。
『やっぱり私はタイムリープした私自身に乗っ取られている!? そして、心身にその影響が出ている?』
村さんが話し終わると同時に私は表情を曇らせた。
それを村さんは見逃さなかった。
「お前、この前来たときと雰囲気ちょっと違うよな?」
決定的なのだろうか。私は禁則を犯しているのか……?
「んん? そんなことないです。変わりないですけど……」
その場は誤魔化すことにした。
おそらく、気付かれているんだろうけど……。
「まあ、いいや。とりあえず、ここ長居禁止な!stabの上の方がうるさいからよ」
stabは動いていない世界の管理局の人たちをそう呼ぶ。
何故この名前なのかはよく解らない。
村さんはゴソゴソと作業服の中から無線機のようなものを取り出してアンテナを伸ばした。
「はい、こちら△△地区、〇〇地点管轄の村山。今から一名帰します。はい、はい、それじゃお願いします」
村さんと無線の向こうにいる人のやり取りをしばらく見ていた。
「それじゃあ、今から帰ってもらうけど、用意はいいか?」
そう言うと同時にブルーライトをこちらに向けてきた。
「ああ、そうだ村さん、ここの人が都市伝説化しちゃってますよ。時空のおっさんって呼ばれてるの知ってましたか?」
「知ってるよー。おっさんって若い女もガキもいるのにな。前に迷い込んだ奴が、わしを見て時空のおっさんですかって訊くんだ。まずは時空って辞書で調べてこいって言ってやった」
確かにそうなのだ。時空のおっさんというネーミングはおかしいのだ。時空って普段の現実世界も時空に含まれる。動いていない世界は時空と時空の間にあるから時空のおっさんは正しいネーミングと言えない。時空のおっさんはそこら辺にいる普通のおっさんってことになる。
――――そんな話をしているうちに意識が朦朧としてきた。
「そろそろだな。二度と来るなとは言わんが、頻繁に来過ぎるなよ。お前らタイムリ……」
村さんが話し終えるのを待たずして意識はそこで途絶えた。
――そして、私は現界へ戻る……。
自分自身が数十年後からタイムリープして来た可能性があること。
同級生の顔や名前、過去の出来事を断片的に忘れ去っていることだ。
最早、これらは医者だろうが学者だろうか答えを出すことはできない。
ある超特殊な人間を除いては……。
「あそこ、あんまり行きたくないんだけどなー」
気乗りはしない。そこはタイムリープを使う上で必ず通過する場所だ。
通常なら通過するだけで、そこへ長く停滞してはいけない。そういう決まりなのだ。
ちょっとややこしい言い回しかもしれない。要するに狭間の世界みたいなものだ。
私たちが住む世界は『動いている世界』、タイムリープは『動いている世界』から『動いている過去の世界』へと行く。その間に通過するのが『動いていない世界』だ。
動いていない世界はタイムリープで通過するだけだ。
タイムリーパーに課せられる禁則事項は、この動いていない世界を管理する者たちが発布している。
動いていない世界、つまり時間と時間の間を管理、監視している者がいる。
私は自室のベッドで意識体となり、タイムリープを試みた。
そして、目を閉じて少しばかり念じると、動かない世界が目の前に広がっていた。
(――赤っぽい視界でいいんだっけ?)
動いていない世界は現実世界と比べると、ちょっとカラーが変だ。
これは入り方にもよるのだが、私の眼が変になってるのかもしれない。
しばらく動いていない世界を歩く。
この世界は一見すると、現実世界と変わらない。町の中に家が建ち並び、道路もあるが車は通っていない。
ただ、何もかも動いていないだけだ。一部を除いて……。
キョロキョロ辺りを見ながら歩いていると、
「コラッ! こっち入ったらいかんじゃないか!」
工具箱を片手に持った作業服姿の中年男性が駆け寄ってきた。
「なんだ、またお前か。ここはなるべく来るなって言ってるのに、懲りない奴だなぁ……」
幸運だった。前にタイムリープを失敗して動いていない世界に落ちたときにここで出会った人だった。
「……すみません、村さん。どうしても聞きたいことがあって……。すぐ会うためにこの方法で来たんです……」
その中年男性は前に村山と名乗っていた。
話をするうちに村さんと呼ぶようになった。
「禁則に触れない範囲なら答えられるけど?」
村さんはやれやれといった表情で近くにあったベンチに腰を下ろした。
「タイムリープが影響して現在の自分に何か変化が現れることがありますか? 例えば未来の自分が今いる自分を乗っ取ったら何か変異しますか?」
隠しても仕方ないので率直に疑問をぶつけてみた。
「お前なー。それ思いっきり禁則犯した後の話じゃないのか!?」
村さんはベンチにふんぞり返って、はぁーっと大きな溜息をついた。
「あの、例えばって話ですからね。例えばの……」
「じゃ、わしも例えばで答える。もし、今のお前自身が未来のお前に乗っ取られていたら……」
期待していた通りの答えが返ってくるだろう、そんな予感が十分あった。
「――乗っ取られていたら、その影響が体の変調として出る。そんでまたタイムリープやっちまう未来へ行きやすい心身になるってわけだ」
ああ、期待以上の答えだ。恐ろしい結論を導き出してくれるものだ。さすが時空間のプロというべきか。
『やっぱり私はタイムリープした私自身に乗っ取られている!? そして、心身にその影響が出ている?』
村さんが話し終わると同時に私は表情を曇らせた。
それを村さんは見逃さなかった。
「お前、この前来たときと雰囲気ちょっと違うよな?」
決定的なのだろうか。私は禁則を犯しているのか……?
「んん? そんなことないです。変わりないですけど……」
その場は誤魔化すことにした。
おそらく、気付かれているんだろうけど……。
「まあ、いいや。とりあえず、ここ長居禁止な!stabの上の方がうるさいからよ」
stabは動いていない世界の管理局の人たちをそう呼ぶ。
何故この名前なのかはよく解らない。
村さんはゴソゴソと作業服の中から無線機のようなものを取り出してアンテナを伸ばした。
「はい、こちら△△地区、〇〇地点管轄の村山。今から一名帰します。はい、はい、それじゃお願いします」
村さんと無線の向こうにいる人のやり取りをしばらく見ていた。
「それじゃあ、今から帰ってもらうけど、用意はいいか?」
そう言うと同時にブルーライトをこちらに向けてきた。
「ああ、そうだ村さん、ここの人が都市伝説化しちゃってますよ。時空のおっさんって呼ばれてるの知ってましたか?」
「知ってるよー。おっさんって若い女もガキもいるのにな。前に迷い込んだ奴が、わしを見て時空のおっさんですかって訊くんだ。まずは時空って辞書で調べてこいって言ってやった」
確かにそうなのだ。時空のおっさんというネーミングはおかしいのだ。時空って普段の現実世界も時空に含まれる。動いていない世界は時空と時空の間にあるから時空のおっさんは正しいネーミングと言えない。時空のおっさんはそこら辺にいる普通のおっさんってことになる。
――――そんな話をしているうちに意識が朦朧としてきた。
「そろそろだな。二度と来るなとは言わんが、頻繁に来過ぎるなよ。お前らタイムリ……」
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