11 / 47
10.指の記憶2★
「奥様、お茶会はどうでしたか?」
私が帰り着くのまっていてくれたみたい、玄関に入ってすぐ、フィンが迎えてくれた。
「ああ……まあ、普通に終われたわ」
「そのわりには、お疲れのご様子です」
「……私、世の中の旦那様っていうものを、よく知らなかったんだわ。実家の両親が淡々としていたから。でも……お優しい旦那様ってけっこうあちこちにいるんだなって」
「……シリル様はお優しい方ですよ」
そうかしらね。
それは、夜は……優しいわ。
でもあれは、子づくりの最中だし、私と同じように早く子どもが欲しくて、身篭る確率を上げるため。
私のための優しさとは、言えないのじゃないかしら。
「屋敷の外では、シリル様は……お父上の喪に服していない、情が薄いと、その生育から心無いことを耳に入れる方がいるかもしれません。でも、そんなことはないですからね」
「シリルの……育ち方?」
「シリル様は乳母に育てられた方なのです。お産みになったお母様、前パスコヴィラダ公爵夫人は公爵との契約により、結婚と出産をしただけだと、産後は家を出られて……ご自身の芸術を追求するため、流浪することを選ばれたそうです」
シリルのお母様とお父様の関係、いよいよ初耳な話だった。
シリルは「僕だって乳母育ち」と言っていたっけ?
でも、彼のお母様が。
契約で、結婚と出産。その後の自由な……あまりに自由すぎる先行き。まるで私たちのその後みたい。
ううん、そんなご両親を踏襲して彼は私との割り切った結婚生活を始めたのね。
「でも、シリル様は乳母のモモリエ様──私の先輩ですけど、モモリエ様を実の母親のように大切にされていました。成人と同時に本当の息子さんと住む素敵なお家を贈って、そこで過ごしてほしいと送り出して。……情の深い方なんです」
シリルが……情が深い?
そうだったらいいのに。フィンの言葉が心に残ってしまう。
あの夜の優しさに、期待したい自分。それを私はないふりで、自室に戻った。
˚˙༓࿇༓˙˚
胸の中がもやもやする。
けれど、夜の、ベッドに入ったシリルは甘く微笑んでくれる。
「しようか」
そう誘いかけ、私を抱き寄せて。
夜毎に繰り返している営みというのに、シリルの丁寧さははじめの頃から変わらない。ううん、もっと、ずっと丁寧になっている。
リボンになったみたいに、容易く身体をほどかれて、私はシリルと体を繋ぐ。
秘められたあわいを蕩かしながら、シリルは整った指先で私の唇をなぞった。
「ねえ、口を開けてみて」
「え……」
戸惑って従わずにいると、シリルが私を突き上げる。
「あっ。……んぅ」
嬌声とともにぽっかり開いた口に、するりと指が入ってくる。
「ふ……や、ふぁあ……」
言葉の後半は邪魔されて、くぐもった。
「うん、上手。そのまま咥えていて……感じる?」
舌に触れたシリルの指が、ぐるりと円を描く。
「ん……っ」
「口の中もね、気持ちいいところがあるんだよ」
指が、上顎、頬の内肉へ触れていく。
教えていくみたい。
舌の横を撫でられて、口の中がそわそわした。
「……今、締まった。ダリア、ここがよかった?」
「わか……らな……」
舌に絡められてうまく喋れない。
シリルの指がやわやわと私の舌を宥める。
「恋人たちは、キスでお互いの舌と舌を使って刺激し合うんだよ。口の中の気持ちいいところ」
「ん……ふ……」
言葉が引っかかる。
シリルが、キスして舌で刺激しないのは、私は恋人じゃないから?
恋情から触れ合っているわけじゃない。
だから、指なんだ……。
舌の裏側を優しくタッチされていると、身体が疼く。シリルをもっと奥深くに受け入れたくなる。
腰を落として押し付ける私に、シリルは頭を撫でてくれた。
「ゆっくり……覚えていこうね」
「ふぁ、んん……」
口の内壁で円を描き、ナカも連動して回した動きをしている。
くるくる、ぐるぐると、快楽を溜め込む焦らしだ。
口からも、下からも、水音が部屋に散る。
シリルが私の中へ存在を書きこんでいく。
キスをしないことを問いかけたいのを堪えて、それでも指を甘い、と舐めてしまう自分がここにいる──
私が帰り着くのまっていてくれたみたい、玄関に入ってすぐ、フィンが迎えてくれた。
「ああ……まあ、普通に終われたわ」
「そのわりには、お疲れのご様子です」
「……私、世の中の旦那様っていうものを、よく知らなかったんだわ。実家の両親が淡々としていたから。でも……お優しい旦那様ってけっこうあちこちにいるんだなって」
「……シリル様はお優しい方ですよ」
そうかしらね。
それは、夜は……優しいわ。
でもあれは、子づくりの最中だし、私と同じように早く子どもが欲しくて、身篭る確率を上げるため。
私のための優しさとは、言えないのじゃないかしら。
「屋敷の外では、シリル様は……お父上の喪に服していない、情が薄いと、その生育から心無いことを耳に入れる方がいるかもしれません。でも、そんなことはないですからね」
「シリルの……育ち方?」
「シリル様は乳母に育てられた方なのです。お産みになったお母様、前パスコヴィラダ公爵夫人は公爵との契約により、結婚と出産をしただけだと、産後は家を出られて……ご自身の芸術を追求するため、流浪することを選ばれたそうです」
シリルのお母様とお父様の関係、いよいよ初耳な話だった。
シリルは「僕だって乳母育ち」と言っていたっけ?
でも、彼のお母様が。
契約で、結婚と出産。その後の自由な……あまりに自由すぎる先行き。まるで私たちのその後みたい。
ううん、そんなご両親を踏襲して彼は私との割り切った結婚生活を始めたのね。
「でも、シリル様は乳母のモモリエ様──私の先輩ですけど、モモリエ様を実の母親のように大切にされていました。成人と同時に本当の息子さんと住む素敵なお家を贈って、そこで過ごしてほしいと送り出して。……情の深い方なんです」
シリルが……情が深い?
そうだったらいいのに。フィンの言葉が心に残ってしまう。
あの夜の優しさに、期待したい自分。それを私はないふりで、自室に戻った。
˚˙༓࿇༓˙˚
胸の中がもやもやする。
けれど、夜の、ベッドに入ったシリルは甘く微笑んでくれる。
「しようか」
そう誘いかけ、私を抱き寄せて。
夜毎に繰り返している営みというのに、シリルの丁寧さははじめの頃から変わらない。ううん、もっと、ずっと丁寧になっている。
リボンになったみたいに、容易く身体をほどかれて、私はシリルと体を繋ぐ。
秘められたあわいを蕩かしながら、シリルは整った指先で私の唇をなぞった。
「ねえ、口を開けてみて」
「え……」
戸惑って従わずにいると、シリルが私を突き上げる。
「あっ。……んぅ」
嬌声とともにぽっかり開いた口に、するりと指が入ってくる。
「ふ……や、ふぁあ……」
言葉の後半は邪魔されて、くぐもった。
「うん、上手。そのまま咥えていて……感じる?」
舌に触れたシリルの指が、ぐるりと円を描く。
「ん……っ」
「口の中もね、気持ちいいところがあるんだよ」
指が、上顎、頬の内肉へ触れていく。
教えていくみたい。
舌の横を撫でられて、口の中がそわそわした。
「……今、締まった。ダリア、ここがよかった?」
「わか……らな……」
舌に絡められてうまく喋れない。
シリルの指がやわやわと私の舌を宥める。
「恋人たちは、キスでお互いの舌と舌を使って刺激し合うんだよ。口の中の気持ちいいところ」
「ん……ふ……」
言葉が引っかかる。
シリルが、キスして舌で刺激しないのは、私は恋人じゃないから?
恋情から触れ合っているわけじゃない。
だから、指なんだ……。
舌の裏側を優しくタッチされていると、身体が疼く。シリルをもっと奥深くに受け入れたくなる。
腰を落として押し付ける私に、シリルは頭を撫でてくれた。
「ゆっくり……覚えていこうね」
「ふぁ、んん……」
口の内壁で円を描き、ナカも連動して回した動きをしている。
くるくる、ぐるぐると、快楽を溜め込む焦らしだ。
口からも、下からも、水音が部屋に散る。
シリルが私の中へ存在を書きこんでいく。
キスをしないことを問いかけたいのを堪えて、それでも指を甘い、と舐めてしまう自分がここにいる──
あなたにおすすめの小説
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
辺境伯夫人は領地を紡ぐ
やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。
しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。
物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。
戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。
これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。
全50話の予定です
※表紙はイメージです
※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。