【R18•完結】「子どもさえできれば自由にしていいから」と言った夫が執着溺愛して離婚してくれません

紀ノこっぱ

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10.指の記憶2★

「奥様、お茶会はどうでしたか?」

 私が帰り着くのまっていてくれたみたい、玄関に入ってすぐ、フィンが迎えてくれた。

「ああ……まあ、普通に終われたわ」
「そのわりには、お疲れのご様子です」
「……私、世の中の旦那様っていうものを、よく知らなかったんだわ。実家の両親が淡々としていたから。でも……お優しい旦那様ってけっこうあちこちにいるんだなって」
「……シリル様はお優しい方ですよ」

 そうかしらね。

 それは、夜は……優しいわ。
 でもあれは、子づくりの最中だし、私と同じように早く子どもが欲しくて、身篭る確率を上げるため。
 私のための優しさとは、言えないのじゃないかしら。

「屋敷の外では、シリル様は……お父上の喪に服していない、情が薄いと、その生育から心無いことを耳に入れる方がいるかもしれません。でも、そんなことはないですからね」
「シリルの……育ち方?」
「シリル様は乳母に育てられた方なのです。お産みになったお母様、前パスコヴィラダ公爵夫人は公爵との契約により、結婚と出産をしただけだと、産後は家を出られて……ご自身の芸術を追求するため、流浪することを選ばれたそうです」

 シリルのお母様とお父様の関係、いよいよ初耳な話だった。
 シリルは「僕だって乳母育ち」と言っていたっけ?
 でも、彼のお母様が。
 契約で、結婚と出産。その後の自由な……あまりに自由すぎる先行き。まるで私たちのその後みたい。
 ううん、そんなご両親を踏襲して彼は私との割り切った結婚生活を始めたのね。

「でも、シリル様は乳母のモモリエ様──私の先輩ですけど、モモリエ様を実の母親のように大切にされていました。成人と同時に本当の息子さんと住む素敵なお家を贈って、そこで過ごしてほしいと送り出して。……情の深い方なんです」

 シリルが……情が深い?
 そうだったらいいのに。フィンの言葉が心に残ってしまう。
 あの夜の優しさに、期待したい自分。それを私はないふりで、自室に戻った。


 ˚˙༓࿇༓˙˚


 胸の中がもやもやする。
 けれど、夜の、ベッドに入ったシリルは甘く微笑んでくれる。

「しようか」

 そう誘いかけ、私を抱き寄せて。
 夜毎に繰り返している営みというのに、シリルの丁寧さははじめの頃から変わらない。ううん、もっと、ずっと丁寧になっている。
 リボンになったみたいに、容易く身体をほどかれて、私はシリルと体を繋ぐ。

 秘められたあわいを蕩かしながら、シリルは整った指先で私の唇をなぞった。

「ねえ、口を開けてみて」
「え……」

 戸惑って従わずにいると、シリルが私を突き上げる。

「あっ。……んぅ」

 嬌声とともにぽっかり開いた口に、するりと指が入ってくる。

「ふ……や、ふぁあ……」

 言葉の後半は邪魔されて、くぐもった。

「うん、上手。そのまま咥えていて……感じる?」

 舌に触れたシリルの指が、ぐるりと円を描く。

「ん……っ」
「口の中もね、気持ちいいところがあるんだよ」

 指が、上顎、頬の内肉へ触れていく。
 教えていくみたい。
 舌の横を撫でられて、口の中がそわそわした。

「……今、締まった。ダリア、ここがよかった?」
「わか……らな……」

 舌に絡められてうまく喋れない。
 シリルの指がやわやわと私の舌を宥める。

「恋人たちは、キスでお互いの舌と舌を使って刺激し合うんだよ。口の中の気持ちいいところ」
「ん……ふ……」

 言葉が引っかかる。
 シリルが、キスして舌で刺激しないのは、私は恋人じゃないから?
 恋情から触れ合っているわけじゃない。

 だから、指なんだ……。

 舌の裏側を優しくタッチされていると、身体が疼く。シリルをもっと奥深くに受け入れたくなる。
 腰を落として押し付ける私に、シリルは頭を撫でてくれた。

「ゆっくり……覚えていこうね」
「ふぁ、んん……」

 口の内壁で円を描き、ナカも連動して回した動きをしている。
 くるくる、ぐるぐると、快楽を溜め込む焦らしだ。
 口からも、下からも、水音が部屋に散る。
 シリルが私の中へ存在を書きこんでいく。

 キスをしないことを問いかけたいのを堪えて、それでも指を甘い、と舐めてしまう自分がここにいる──
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