【R18•完結】「子どもさえできれば自由にしていいから」と言った夫が執着溺愛して離婚してくれません

紀ノこっぱ

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12.他人が語る夫の話2



「おお、構わないぞ。ダリア殿は苦労されていることだろう。なにせ……シリルのやつはおれと違って、屈折しているからな!」

(屈折……? しているかしら?)

 穏やかで、まっすぐな人では……?
 私にはそう思える。
 彼は理知的な人だから、あらゆることを理路整然と取り仕切っているし。

「星霜の年月蓄えられた万物への対応力……叡星えいせいの与える加護というのは、なまじ目端を利かせるゆえに屈折者でも生み出すのではないか。あいつも、もっとまっすぐ人と接することを覚えればいいのにな。おれのように!!」

 豪傑笑いをして、サムは胸を張った。

「あ、あの……?」
「ああ、意味がわからないのか」

 サムは、横目をして余裕の笑みを浮かべた。

「……巧妙だな。ま、気づいた頃には、あなたはもうドツボだろうな」

 なんだか、失礼な人じゃないかしら。友人の気安さってそうなのかしら。

 首を捻ったそのとき。
 バァン! と、勢いよく扉が開かれた。

「ダリア!!」

 息を切らせたシリルが、血相を変えて飛び込んできた。

「シリル様?」

 私のところへ急いだシリルは、鋭い視線をサムに向ける。

「僕の妻に会う時は、僕も同席させる約束だったはず。これは作法がなっていないのではないですか。サンヴルタン国王陛下」
「こっ、国王様!?」

 ちょっとちょっと。この方、国王様……?

 ああ……考えてみれば『パスコヴィラダ公爵』を呼び捨てで親しんで、小馬鹿にすらする方なんて、国内で限られているわよね。
 この、ゲストルームに人を呼びつけられるのだって。

「はっは、サムと愛称で呼んでくれと言ったのは、嘘ではないぞ。それくらいおれに親しんでくれるといい。シリルの妻なのだから」
「ダリアは、僕の妻なので。国王陛下に過剰に親しんだりはしませんよ」

 あら、さすが友人だけあるのかしら。
 シリルがなんだか、皮肉っぽい。
 牽制している感じというか。

「シリル、このド面食いめ。今なら理解できるぞ、どうりで数々の縁談を右から左に流していたわけだ」
「サンヴルタン! 興味本位だけで僕の妻を呼びつけるのはやめてくれないか」
「ん? なにか問題でも?」
「……君には常識というものがないのか。……ああ、無かったな。僕としたことが誤算のもとはそこだ」
「はっはっは! これは大正解だった。予定を無理やり開けて、ここに急行してよかったよ。こんなお前が見られる日が来るなんてな」

 シリルが私を隠すように国王の前に立つ。

「そのため……? 僕のダリアに余計なことを吹き込んでない? 君の常識はずれがうつったら困るんだけど」
「おれは、国王だぞ。常識的に国家を治めているのに」
「『常識的な国王』が、またずいぶんな人を王妃にすると言っているものですね」

 国王が、肩をすくめて喉の奥をクッと鳴らした。

「アルジェンか。仕方ないだろう。愛とは……王であろうと手に負えない」
「それだけ、愛する人がいるのだから。人の妻に興味持たないでください」

 親しみと触発が紙一重の会話にハラハラする。
 私の動揺を読み取ったのか、国王はにこりと表情を変えて言う。

「すまないな、また手配をするので遊びに来てくれ。次はアルジェンにも会ってほしい」
「は、はい」

 サムが国王だとわかったせいで、返事が上擦ってしまった。
 けれど、国王は剛毅に笑って退室した。

「僕も今日の仕事は終わらせたから、一緒に帰ろう」
「そうなの? わかったわ」

 国王がいなくなったら、シリルはまた素っ気ない。
 ううん、それどころか。イライラしているみたい。
 帰りの馬車では頬杖ついて、目を合わせてこなかった。

 家に着いて、馬車止まりから玄関までの道すがらに訪ねられる。

「ねえ、ダリア。君は……サンヴルタンと楽しそうだったね」
「え? そう……ね。豪快で明るい方だったもの」
「そっか。……ほんとうに、招待されたらまた会う気?」
「ええ、そのつもりよ」

 ライラックの眼が、細められた。
 なにか、不機嫌……?

「来て」
「ちょっと、シリル……様?」

 シリルが、私の手を強く引く。
 こんなシリルは、見たことがない。
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