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1章 部下は会社を辞めたがる
辞めさせて欲しいんです
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話は昨日の朝に遡る。
いつものように出勤し、鞄を席に置くとすぐに台所でこだわりのコーヒーを淹れていた。
うまいコーヒーを淹れるのは、大して楽しみのない仕事中の唯一の娯楽だ。
「係長、あの…」
そんなときに、安藤の声が背後から聞こえた。
「おー、すぐそっち行くわ」
「すみません」
席に戻ると、すぐに安藤がおれの横に立った。
見ると、その表情がやけに沈んでいる。
安藤は元々童顔で、黙っていれば高校生のようにも見えてしまう。
女の子にモテそうなスッキリした顔立ちをしているが、今は幽霊のように、目を見開いているものの表情がない。
手には封筒を握っていた。長時間握っていたのか、手汗で湿っているように見える。
「会議室で話すか?」
尋常じゃない雰囲気を察し、おれは安藤と部屋を出た。
何となく、何を話すつもりかは察してしまったが、そうではないことを祈りつつ会議室のドアを開ける。
「あの…辞めさせて欲しいんです」
部屋に入ると、イスに座りもせずに、突然安藤は切り出した。
やっぱりか…彼は目を伏せたまま、自分の中の葛藤を抑えるかのように佇んでいる。
「まぁ、とりあえず座って話そうぜ」
下手をすれば、手に持っている退職願であろう封筒をおれに突きつけて、そのまま帰りそうな気配さえする。
少しでも落ち着かせるため、イスに座らせた。
おれの立場から言うと、彼には辞めて欲しくない。
というか、辞められると非常に困る。
いつものように出勤し、鞄を席に置くとすぐに台所でこだわりのコーヒーを淹れていた。
うまいコーヒーを淹れるのは、大して楽しみのない仕事中の唯一の娯楽だ。
「係長、あの…」
そんなときに、安藤の声が背後から聞こえた。
「おー、すぐそっち行くわ」
「すみません」
席に戻ると、すぐに安藤がおれの横に立った。
見ると、その表情がやけに沈んでいる。
安藤は元々童顔で、黙っていれば高校生のようにも見えてしまう。
女の子にモテそうなスッキリした顔立ちをしているが、今は幽霊のように、目を見開いているものの表情がない。
手には封筒を握っていた。長時間握っていたのか、手汗で湿っているように見える。
「会議室で話すか?」
尋常じゃない雰囲気を察し、おれは安藤と部屋を出た。
何となく、何を話すつもりかは察してしまったが、そうではないことを祈りつつ会議室のドアを開ける。
「あの…辞めさせて欲しいんです」
部屋に入ると、イスに座りもせずに、突然安藤は切り出した。
やっぱりか…彼は目を伏せたまま、自分の中の葛藤を抑えるかのように佇んでいる。
「まぁ、とりあえず座って話そうぜ」
下手をすれば、手に持っている退職願であろう封筒をおれに突きつけて、そのまま帰りそうな気配さえする。
少しでも落ち着かせるため、イスに座らせた。
おれの立場から言うと、彼には辞めて欲しくない。
というか、辞められると非常に困る。
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