社畜もなかなか悪くない

ふくろう

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5章 社畜は何がいいのか

上司を操る・・・?

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「へぇ、後輩君と仲良くなれたかぁ」

その夜、また昨日と同じ店に由美を呼び出したおれは、今日あったことを話していた。

「由美の言ってくれたことがふっと頭に浮かんでさ。ああ、こういうことだったのかって思ったよ。やっぱ由美はすげぇな」
 「でしょ。人事のエリートすごいんだから」

由美は得意げな表情を見せる。

「今日はおごるわ」
「ええ~!嬉しい!ありがとう!って、どっちにしろ裕一の番だったでしょ!」
「…由美ってさ、たまにノリが関西になるよな」
「あー、まぁね。これも人付き合いをうまくする方法の一つね。新人のときに、頑張って身につけたよ」

おとなしい性格の由美も、色々と人付き合いのテクニックを磨いたようだ。

人事といえど、そこは営業に通じるものがあるらしい。

「そしたら次は、支店長の攻略だね!」
「支店長?そんな話になったっけか?」
「今後、黒岩特殊板金の柏木って人に会いたいんでしょ?さらには向こうのミスを認めさせるために行くなら、今日と同じ裕一と後輩君が行っても追い払われるのがオチよ。こういうのは変化が大事なの。この場合の変化とは?」
「あー。さらに上を連れて行け、か」
「ご名答」

由美はニヤリと笑った。

さらに上とは、言うまでもなく伊澤支店長のことだ。

「しかしあのへそ曲がりがついて来てくれるとは思えねぇよ。どうせ椅子にふんぞり返って、お前が責任持て~しか言わないぜ」
「裕一は嫌われてるんだねぇ」
「そりゃそうだ」
「なら、裕一から好きになっちゃえば?」

おれは飲んでいたビールを吐き出しそうになった。

今日の由美はキラーパスが多い。

「そういう趣味はねんだけど」
「そういうことじゃなくて。信頼関係を作ろうって話をしてるの」
「あいつと、信頼ぃ?」

伊澤支店長のうざったい顔が思い浮かぶ。

奴と信頼し合っている自分の姿なんか、想像もできない。

「裕一は嫌でも、こんな状況を打開するなら、支店長の肩書きを借りるしかないでしょう?そのためには、支店長と仲良くなるしかないじゃない」
「いや、由美の言いたいことは分かるけどさ…」
「裕一、上司ってのはね、こっちが扱われる存在じゃないの。こっちが操るものなの」
「上司を…操る…?」

考えたこともないことだ。

「人って単純でね、自分がおだてられたり、頼ってくれたり、プラスの勘定を向ければ、悪い気は起きにくいものなの。裕一は、支店長さんに対してそういうことしてこなかったんじゃない?」
「そりゃそうだろ。足引っ張ったり、訳分からねぇ指示出すしかしねぇしさ」
「なら意識的に、支店長に相談したり、感謝したりしてみなよ。裕一に対する感情が少し変わるかも。それから、今回の件の協力をお願いするの」
「…はぁ…」

あまりにも現実離れしたような話なので、おれは受け止めきれない。

「まぁ、騙されたと思ってやってみなよ。上司が自分の希望通りに動いてくれるようになると、気分いいよ」

由美はそう言うと爽やかに笑う。

なかなかにブラックなことを言いながら、よくこんな明るい笑顔になれるものだ。

どうも由美と比べると、自分は子供のように思えてしまう。

おれはまだ表情を取り繕ったり、演技をするのが自分でも分かるほど下手なのだ。

しかし同時に、何とも言えない感情が高ぶってくるのを感じていた。

おれが、伊澤支店長を操る、か。

確かにそんなことができれば面白い。

そういえば…

「由美、わりぃ、今からちと会社戻るわ」
「お、何か思いついたんだね。わかった。がんばってね!」

おれは鞄を掴むと、勢いよく席を立った。

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