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平凡な日常と非平凡な夢
しおりを挟む大きな砂塵が舞い、それが過ぎて目を見開いた光景は赤と黒で埋め尽くされたかのようだった。
大きな赤と黒が埋め尽くす世界
沢山の兵が殺しあいをしている
片方は軍旗を抱えている。草冠みたいな輪っかに王冠。王冠の後ろには剣が
……軍事国家、ということを証明しているのだろう。
もう片方は、破れた布に描かれた粉々の王冠とその王冠を刺し壊した剣のカタチ。
「帝国に栄光あれ!!」
「帝国を滅ぼし、新たな世界に希望を!!」
叫ばれた二つの言葉は、お互いが全くの反対だった。
やがて、炎の轟音から僅かに声が聞こえる。子供の泣き声が、悲鳴が。
一つ瞬きをすると、場所が変わった。ここは、どこだろう。彼等は、こんなことをいつまで続ける?
…………なんて『哀しい』
どうして、こんなことが続いているのだろうか
これでは、とてもーー
ーー視界が暗転する
「愛乃さん?」
「…………はい?」
軽く揺さぶられ、目を覚ました。
倦怠感は若干あるものの、すぐに頭は覚醒できた。
あれ、いつのまに寝ていたのか?
ここは私の通っている学校の教室。目の前には見知った先生は英語の先生でもあり副担任でもある。
黒板には、私のノートには書き取っていない内容で一杯に埋め尽くされている。
周りから聞こえるかすかな笑い声や、嫌な視線。
……いま、英語、か。
「……………すみません」
あぁ、なんということだ
授業中に夢を見ていたのか。
頭を思わず抱えたくなるが、仕方なし
自業自得だが、居た堪れない思いをしながら授業を受けた。元々苦手な教科の授業というのもあり一番長く感じた授業だった……
「それで?」
「……しばらくは、英語の授業が受けにくくなっただけだよ」
教科書ノートをまとめて、ロッカーの中にしまい、次の授業の教科書ノートを取り出す中、同じクラスの友人との会話。彼女から持ち上げられたのは先ほどの爆睡事件。
「いや、本当……
授業がつまらんのは分かるけど、まさかあんな堂々と……」
「不可抗力だからね!?」
そう。あれは寝たくて寝たわけじゃないから!ここ大事。テストには出ないけど大事ですから。
しかし、まだ三十分も経っていないのに内容が思い出せなかった。不思議と靄がかかっていて酷い夢をみたような……
「……どうせ、遅くまでゲームしてたんでしょ? 」
「…………バレましたか?」
お察しのいい友人だ。
夜遅くまで周回をしていましたとも。ええ、そりゃもう朝の4時までね。
私のお気に入りのゲーム『幻想世界アグリュシファ』(携帯用ゲーム機対応ソフト)はストーリー評価も高く、キャラクターのビジュアルもどストライクでやり込み要素もありの私にとって底なし沼と化したゲームだ。
ユーザーさんからは『アグリュー』とか『幻想ワールド』とかで呼ばれている。
もう、あのストーリーを何度やり込んだか…………まだ、23回か。そう考えると全然か
やり込み要素の一つにクエストがあって、それがまた裏シナリオとしてもう最高でして!!
ルシェ(ヒロインでイケメン。精霊と契約して魔法を使用可能とした剣士)の生い立ちはメインストーリーでも触れていたところがあったけど、限定クエストでさらに深いところまで出てきたり……あぁ、思い出すだけであのクエストは泣けてくるよ……
まぁ、敵キャラも憎めないところもある。事実、私はその中のキャラクターに惚れたこともあった。……今も、愛してるけどね
悲しいところは何故、そういう敵キャラ人気ランキングで高い子から死んでいくのかなというところだ。私の惚れたキャラクターは2番目に死んだ。誠に解せぬ
「本当に、アグリュー好きだね……」
「それはもうね!大好きの域超えてますからね!……だからやろうぜ?部活の時に貸すからさっ!」
すかさずに布教に走る。
というのも、悲しいかな人気はあるものの私の学年でやっている人はそこまで多くはない。名前は『今年度神ゲームランキング』で一位をとったことにより知名度は上がったが、難易度が初心者ではつまづく点がちらほらとあるゲームなのだ(私がそうだった)。
「ごめん、私は他のゲームに嫁がいるから不倫はできないわ……」
そう言って、友人は携帯でゲームを開き嫁の画像を見せて来た。ちなみに、私は容量に空きがあったので友人のやっているゲームもやっている
「そういえば、次にこの子のイベントガチャが待っているんだっけ?」
「そうだよー!!回すしかないよね?来なくても、回転力を上げれば……」
「お、おう?ソウダネ…………」
ふふふ……と、不気味な笑みを浮かべる友人に軽く引く。
ついこの前までにやっていた期間限定ガチャで『最強のサポーター』と呼ばれる子が上がった時も彼女は爆死した。
描けば出る教という、意味不明な教に入ってその欲しいキャラの絵を私が描いたこともあった……。案の定爆死してたけど。
…………この友人、実はヤバイ位の課金勢です
ガチャは悪い何とやら、とは何処かのゲームの子が言っていたような。全くその通りでもあるが、なかなか引かせてくれない運営も運営である。
大体一番キャラクター数が多いURが何で1%切ってるんだ!!ちくしょう!!
「あ、そろそろ予鈴鳴るから行こう?」
「本当だ。そうだね~」
時刻はそろそろ次の授業までに迫っていた。
移動教室のため、そう遠くもないが早めに移動して損はないだろう。
「今日のお昼はなんじゃろなー」
「お弁当かパンでしょ?」
この時にはあの夢の内容はもうぼんやりとも思い出せず、何処か遠くへと消えてしまっていた。
応援ありがとうございます!
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