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夢について仲間に聞いてみた
しおりを挟む不可解なあの少女が出てきた夢をみた後、サカハとカショウに話そうと二人を探した。
俺より物事を詳しく知っている彼等ならば、何か分かるかもしれない
二人を探して、天幕から少し走って着く廃城を使っているというレジスタンス地方局と呼ばれる場所まで来た。
カショウは、髪の長い男だった。
……というのも、今まで勘違いを俺がしていて、昨日カショウに会った時にたまたま水浴びをして戻ってきた直後の彼を見て分かったのだ。
なんというか、気まずい。とても。
そんな気分になったのは記憶に新しい。サカハはその場で大笑いをして、カショウも笑って許してくれた
ともかく
武闘が一番得意で魔法を使ってくる敵に負けないぐらい身軽という言葉にぴったりと当てはまる戦い方をしていた。
カショウは、いつもは自分の天幕には居らずにこっちの廃城…………じゃない。地方局の中にある二階の肖像画前によくいる。何故そんなところにいるのかは俺は知らないが
そして、今日もカショウはそこにいた。
「カショウ」
「……シグ?」
じっと睨みつけるような、懐かしむような表情は俺を見て少し驚いたような表情に変わった
「どうしたんだ?
……また、帝国の奴らが馬鹿やりに来たのか?」
「いや、今日は帝国と関係ない
でも、聞きたい事があるんだ」
おや、とカショウは右手を顎に当てて笑う
俺が帝国のこと以外に話すことがそんなに珍しいのだろうから、さっさと要件を述べよう。
「俺が昨日みた夢についてだ」
「………………夢?」
拍子抜けされた後で本当か?と問われたので肯定をしたら、するとカショウになんとも言い難い顔をされる。何故だ
「今日、真白な部屋で見たこともない女子と出会う夢をみたんだ」
「……それだけなのか?」
「いや、それ以外にもある。
女子にしては男みたいな言動をしてることや、帝国の奴かと脅しても魔法を使わないし、夢から醒めるまえに落とした脅しに使った剣が実際に無くなっていたとか……」
「魔法を使ってこないのはともかくとして、剣が実際に無くなってたというのは?
お前が前に出た戦場で落としたのでは?」
「天幕に戻ってから手入れをしたし、戦場で落としてはいない
ちゃんと剣入れに閉まっておいたが、あの夢をみた後には無くなっていた」
ここまでの一連のやりとりをして、カショウはまた右手を顎に当てて黙々と何かを考えている。これはきっとカショウの癖なのだろう
「カショウはあの夢が何か分からないか?」
「……んー
まだ、なんとも言えないね」
「なんとも言えない」ということはまるで……そう、何か一つあるのではという『含み』のある言い方だ。
「何か一つ知っているのか?」
「あはは、なに?サカハに教えられたこと覚えているんだね。えらいえらい!
……不確定的な出来事だからな、もしかして御伽噺あたりに出てくるお話の中に本当の話が紛れ込んでいたりして
なーんて、馬鹿なこと考えただけだよ」
なるほど。
そういえばだが、カショウはあまり曖昧なことは言いたくないって前に聞いたな
こうして曖昧なことを教えてくれたのは、もしかして珍しいのでは?
「そうか。教えてくれてありがとう」
「いや、いいよ
少しだけ……マシになったよ」
カショウは、ふっと息を吐いてあの肖像画に目を移した。
つられて、その肖像画をよくみると王冠を被った女と三人の少年と一人の少女が描かれていた。
「カショウは、この絵が好きなのか?」
「…………好き、とは違うかな
どちらかというと嫌いの部類に入るし」
「じゃあ、なんで見続けるんだ?
見たって意味がない。むしろ、嫌なんだろう?」
どうして、そんなものを見るんだ?
それではまるで『自虐』という、自身で自分を傷つける行為と同じではないか。
俺のその言葉を待っていたかのようにカショウは笑った。でも、雰囲気が違う。儚い、という言葉に当てはまる笑いだった。
「そうだね
見続けても、意味がないことは前から何となくわかってるよ
でもね、嫌いだけどこれを忘れてはいけない気もするんだよ
矛盾、というより葛藤に近いんだ
だから、この絵を見続けていたい
……『生きている間』なら構わないだろう?」
生きている間、とはいつ死ぬのかも分からないここでは大事な言い方だ。
「明日、もしかしたら戦場に出てそこで死んでしまうかもしれない
だから生きている間に何かしたがる。
それが、人間ってもんだ」
サカハが前に教えてくれたことだ。
俺にはまだ分からないことだが、それでも他の人達には大事なことらしい。
カショウは、この絵を見ることが大事なことなのか
あの夢についての話と共に知った、同じ歳ぐらいのカショウの大事なことを今日知ることになった。
みんなにも、果たしてあるのだろうか?
俺もいつか、持てるだろうか
俺に、まだ無いものを
まだ俺には分からない
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