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8、元凶

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「それが聖女ヒナなんだよ。僕、彼女作った覚えがなくてね。というか僕は最初にこの世界を作った時に聖女に設定したのはアクアマリンっていう全く別のキャラなんだよ。いくらAIが物語を作っていたとしても登場人物の増減はできない仕組みになっている。つまりわだ、僕の作った世界に誰かが勝手に手を加えたということだよ。君たち世界は捨てたも同然だと思ってたけど、やっぱり作品を穢されるのはしゃくだな。」
私はいつき様が話す内容を理解することはできなかった。でも、一つだけわかったことがある。それはヒナは聖女ではなかったということだ。ああ、私は間違っていなかった。
この事実は私のヒナに対する恐怖をただの怨みへと変化させた。あの女が全ての元凶であったのだ。後にこの感情こそが私を窮地に立たせることになるなど知らずに私はただただヒナが聖女でないという事実に歓喜した。
「ねえ、そこで君にお願いがあるんだよ。」
そんな私に対していつき様は重々しい口調でおっしゃられた。
「なんでしょうか?」
次の瞬間いつき様から放たれた言葉は信じられないものだった。それは私が決して望んではいけないと今まで封印してきたことだったからである。それは…
「聖女ヒナ。いいや、ヒナを殺してよ。」
「え、それはどういう…」
「そのままの通り。ヒナを
「ですがそんな人道に反するようなもの。」
この時の私にはまだ理性が働いていた。
「人道も何もないよ。創造主である僕が許可したんだ。あの世界の者はたとえ君がヒナを殺そうともなんとも思わないよ。」
「どうしてそんなことがわかるでしょうか?」
「なんでって?それは簡単だよ。僕がそういうようにプログラムするからさ。」
「それなら貴方様が彼女を消せばよろしいだけではないでしょうか?」
「それができないから君に頼んでんの。」
「なぜですか?」
「あー、もう。君はさっきから質問ばっかりだな。こんな風に設定しなきゃよかったよ。あ、でもそうしたら物語としての面白みが欠けるし…。ともかくよろしく。以上。詳しくは君が向こうに戻り次第教えるから。」
戻るって一体どうやって…。
次の瞬間透明な空間に拳が現れ、私の顔を思いっきり殴った。
そして私は気を失ったにだった。



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