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第3話:巨人の慟哭
Aパート(3)
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右手にドリル、左手に魔法陣を描かれた盾を装備したアルテローゼは、レーザー砲を照射し続ける重機向かって駆けだした。
「馬鹿な、あの人型は何をしたんだ?」
重機でレーザー砲を操作していた指揮官は、その光景に自分の目を疑った。
そう、ついさっきまで右手が壊れ、左手には何も持っていなかった人型機動兵器が、原始的とはいえ武装を装備したのだ。そんな事は常識的に考えで不可能である。自分たちが射撃武器に対して無敵の盾を…しかも魔法という非常識が技術で作られた物を持っていたはずなのに、指揮官は魔法という非常識な物を信じてはいなかったのだ。
「ええい、この化け物目~」
盾を構えて、まるで人間が走るような華麗なフォームでアルテローゼは駆けだした。
指揮官が乗る重機との距離がどんどん縮まる中、彼は重機を後退させながらレーザー砲を撃ちまくる。しかしレーザーはことごとく盾に阻まれ、命中しない。
『これで終わりじゃ~』
そして拳が届くほどに近寄ったアルテローゼは、右手のドリルを突き出し、レーザー砲ごと重機を串刺しにして破壊するのだった。
ズガーン
レーザー砲にエネルギーを供給していたバッテリーがショートしたのか、エネルギーキャパシタが爆発して重機は爆発し燃え上がった。
ちなみに、この時代の重機やロボット兵器は内燃機関を搭載しておらず、常温超伝導物質を用いたバッテリーをエネルギー源としている。そのため燃料の引火による爆発は発生しない。バッテリーも何重もの安全装置が施され、漏れ出した電力や磁力による災害が起きないように設計されているのだが、回路の閉鎖が間に合わず電流のショートでエネルギーキャパシタが燃え上がり爆発する場合があるのだ。
燃えさかる重機から、重傷を負った指揮官が何とか逃げ出すが、それを見たアルテローゼは、逃がすものかと脚を振り上げた。
「何をしてるの、アルテローゼ! やめなさい」
アルテローゼが指揮官を踏み潰そうとした脚を止めたのは、コクピットで意識を取り戻していたレイチェルだった。
『なぜ止める。敵は徹底的に叩きつぶすのじゃ』
レイフが帝国の筆頭魔道士であった頃、帝国は敵の殲滅は徹底的に行うという方針であった。もちろん彼もその方針にのっとり、敵を確実に殲滅し、それにより帝国は版図を広げたのだ。
「例え戦争であっても、無力な人を殺すのは駄目ですわ。そう、人を殺しては駄目なのです…」
アルテローゼはレイフが機体を制御していいる。しかし、その行動の優先順位はコクピットで操縦桿を握るパイロットの方が高く設定されている。それはAIを搭載したロボット兵器を運用する上で、AIの暴走による事故を引き起こさないための絶対のルールであった。
つまりレイチェルが操縦桿を握っている以上、アルテローゼの行動は彼女によって制御されてしまう。アルテローゼのシステムを全て把握したレイフであっても、その原則を変更することは、現状不可能だったのだ。
『人を殺すなと? レイチェル、何を言っておるのじゃ。今は戦いの最中なのじゃ。それにアルテローゼは兵器じゃ』
レイフにはレイチェルの言っていることが理解できなかった。レイフにとって、敵の殲滅は正しいことであり、アルテローゼの戦術支援プログラムもそれを推奨していた。まさか意識を取り戻したレイチェルが自分の行動を止めるとは思ってもいなかったのだ。
「それでもです。武器さえ壊せば戦えなくなるのですから、人は殺してはいけませんわ」
平和な世界で暮らしていたレイチェルにとって、人を殺す事は最も忌むべき行為だった。これは大戦において多数の人が殺された事から起こった人命尊重という思想が蔓延したことが原因であった。
『武器だけ壊して敵を殺さぬとか、儂には気が狂ってるとしか思えないのじゃ。まあ、どうせこのまま放置すれば彼奴は死ぬだろうがな』
レイフは理解できないと、仕方なくアルテローゼの脚を普通に下ろすのだった。革命軍の指揮官はその光景をみて助かったと思ったのか、気絶してしまった。
「アルテローゼ、それよりシャトルを助けに向かいなさい」
レイチェルはアルテローゼの視線をシャトルの方向に向けると、そう叫んだ。
『うぉ、急に向きを変えるでない。それにシャトルとは…あれは星の世界に向かう船じゃと? 本当にそんなことが可能なのか』
レイフは、視線の先にとらえられたシャトルをみて、宇宙という自分が知らない世界にこの世界の人達がたどり着いていることに驚くのだった。
「はやく、早くしないと、シャトルが危険ですわ」
レイチェルが叫ぶとおり、中型から小型の重機がシャトルが離陸する滑走路に入り込み、離陸させまいとしていた。また革命軍の指揮官が倒された為に、興奮したのかシャトルに向かって発砲している者達も少なからず存在していた。シャトルは連邦軍所属の軍事用のもので、ある程度の装甲が成されているため、対人向けのレーザー銃程度では傷つかないが、さすがに重機によって直接攻撃されれば破壊されてしまう。
「アルテローゼ、急ぎなさい」
『分かったのじゃ。レイチェルは人使いが荒いのじゃ』
「誰が嫁ですか!」
アルテローゼはやれやれといったポーズを取ると、シャトルの方に向けて駆け出すのであった。
「馬鹿な、あの人型は何をしたんだ?」
重機でレーザー砲を操作していた指揮官は、その光景に自分の目を疑った。
そう、ついさっきまで右手が壊れ、左手には何も持っていなかった人型機動兵器が、原始的とはいえ武装を装備したのだ。そんな事は常識的に考えで不可能である。自分たちが射撃武器に対して無敵の盾を…しかも魔法という非常識が技術で作られた物を持っていたはずなのに、指揮官は魔法という非常識な物を信じてはいなかったのだ。
「ええい、この化け物目~」
盾を構えて、まるで人間が走るような華麗なフォームでアルテローゼは駆けだした。
指揮官が乗る重機との距離がどんどん縮まる中、彼は重機を後退させながらレーザー砲を撃ちまくる。しかしレーザーはことごとく盾に阻まれ、命中しない。
『これで終わりじゃ~』
そして拳が届くほどに近寄ったアルテローゼは、右手のドリルを突き出し、レーザー砲ごと重機を串刺しにして破壊するのだった。
ズガーン
レーザー砲にエネルギーを供給していたバッテリーがショートしたのか、エネルギーキャパシタが爆発して重機は爆発し燃え上がった。
ちなみに、この時代の重機やロボット兵器は内燃機関を搭載しておらず、常温超伝導物質を用いたバッテリーをエネルギー源としている。そのため燃料の引火による爆発は発生しない。バッテリーも何重もの安全装置が施され、漏れ出した電力や磁力による災害が起きないように設計されているのだが、回路の閉鎖が間に合わず電流のショートでエネルギーキャパシタが燃え上がり爆発する場合があるのだ。
燃えさかる重機から、重傷を負った指揮官が何とか逃げ出すが、それを見たアルテローゼは、逃がすものかと脚を振り上げた。
「何をしてるの、アルテローゼ! やめなさい」
アルテローゼが指揮官を踏み潰そうとした脚を止めたのは、コクピットで意識を取り戻していたレイチェルだった。
『なぜ止める。敵は徹底的に叩きつぶすのじゃ』
レイフが帝国の筆頭魔道士であった頃、帝国は敵の殲滅は徹底的に行うという方針であった。もちろん彼もその方針にのっとり、敵を確実に殲滅し、それにより帝国は版図を広げたのだ。
「例え戦争であっても、無力な人を殺すのは駄目ですわ。そう、人を殺しては駄目なのです…」
アルテローゼはレイフが機体を制御していいる。しかし、その行動の優先順位はコクピットで操縦桿を握るパイロットの方が高く設定されている。それはAIを搭載したロボット兵器を運用する上で、AIの暴走による事故を引き起こさないための絶対のルールであった。
つまりレイチェルが操縦桿を握っている以上、アルテローゼの行動は彼女によって制御されてしまう。アルテローゼのシステムを全て把握したレイフであっても、その原則を変更することは、現状不可能だったのだ。
『人を殺すなと? レイチェル、何を言っておるのじゃ。今は戦いの最中なのじゃ。それにアルテローゼは兵器じゃ』
レイフにはレイチェルの言っていることが理解できなかった。レイフにとって、敵の殲滅は正しいことであり、アルテローゼの戦術支援プログラムもそれを推奨していた。まさか意識を取り戻したレイチェルが自分の行動を止めるとは思ってもいなかったのだ。
「それでもです。武器さえ壊せば戦えなくなるのですから、人は殺してはいけませんわ」
平和な世界で暮らしていたレイチェルにとって、人を殺す事は最も忌むべき行為だった。これは大戦において多数の人が殺された事から起こった人命尊重という思想が蔓延したことが原因であった。
『武器だけ壊して敵を殺さぬとか、儂には気が狂ってるとしか思えないのじゃ。まあ、どうせこのまま放置すれば彼奴は死ぬだろうがな』
レイフは理解できないと、仕方なくアルテローゼの脚を普通に下ろすのだった。革命軍の指揮官はその光景をみて助かったと思ったのか、気絶してしまった。
「アルテローゼ、それよりシャトルを助けに向かいなさい」
レイチェルはアルテローゼの視線をシャトルの方向に向けると、そう叫んだ。
『うぉ、急に向きを変えるでない。それにシャトルとは…あれは星の世界に向かう船じゃと? 本当にそんなことが可能なのか』
レイフは、視線の先にとらえられたシャトルをみて、宇宙という自分が知らない世界にこの世界の人達がたどり着いていることに驚くのだった。
「はやく、早くしないと、シャトルが危険ですわ」
レイチェルが叫ぶとおり、中型から小型の重機がシャトルが離陸する滑走路に入り込み、離陸させまいとしていた。また革命軍の指揮官が倒された為に、興奮したのかシャトルに向かって発砲している者達も少なからず存在していた。シャトルは連邦軍所属の軍事用のもので、ある程度の装甲が成されているため、対人向けのレーザー銃程度では傷つかないが、さすがに重機によって直接攻撃されれば破壊されてしまう。
「アルテローゼ、急ぎなさい」
『分かったのじゃ。レイチェルは人使いが荒いのじゃ』
「誰が嫁ですか!」
アルテローゼはやれやれといったポーズを取ると、シャトルの方に向けて駆け出すのであった。
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