ゴーレムマスターの愛した人型兵器

お化け屋敷

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第11話:空から来るもの

Bパート(4)

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「包囲を継続しろとはどういうことですか、司令? この戦場での勝敗は決しました。今は戦力を少しでも温存するために撤退すべきです」

 アレクセイ中佐は通信モニターに怒鳴り返していた。

『繰り返すが、そのまま革命軍を包囲して、その地点に釘付けにするんだ。たとえ部隊が壊滅・・しても、その場にて敵を食い止めるのだ』

 モニターの中で、アッテンボロー少佐命令を伝えてくるが、それはアレクセイ中佐にとって、とても受け入れ難い物であった。

「部隊が壊滅・・してもとは…。ここで連邦軍が全滅してしまえば、ヘリオス首都を護る者がいなくなります」

 アレクセイ中佐は、当然のようにアッテンボロー少佐に抗議する。

「オッタビオ司令の命令だ。とにかく今は徹底抗戦…包囲を続けてくれ」

 アッテンボロー少佐が苦々しい顔で命令を繰り返す。恐らくアッテンボロー少佐もその命令に従いたくないと思っているのだと、アレクセイ中佐には感じられた。

「…アッテンボロー少佐。命令の理由を…せめて、包囲する理由を教えてはいただけませんか? 全滅する覚悟の命令を部下にだしても、何も説明も無しでは部下が納得しません!」

「それは、…この場では言えない。だが、そこで時間を稼いでくれれば、ヘリオス首都が、いや連邦軍が助かることは確かなのだ。中佐、どうか司令部を信じてほしい」

 アッテンボロー少佐はモニターの中で頭を下げた。

「(どうする、命令通りに包囲を続けるか、それとも撤退するか…)」

 アレクセイ中佐は迷った。今ここの連邦軍が壊滅すると、ヘリオス首都には千にも満たない未編成の部隊しか残っていない。

「中佐…」

「…分かりました。命令通りこのまま包囲を続けます。ですが、何時まで包囲が維持できるか、私にも分かりません。司令部に何か策があるのであれば…、我々が全滅する前に実施してください」

「…済まない」

 アッテンボロー少佐は、敬礼をして通信を切った。

 通信が切れると、アレクセイ中佐はアルフォンス少佐とブルーノ少佐に司令部の命令を伝えた。

「全滅覚悟とは、馬鹿を言うな」

「大シルチス高原と違って、今度全滅すれば、連邦軍は再起不能になりますよ」

 当然二人は反対する。

「だが、オッタビオ司令・・・・・・・の命令なのだ。私は、だから私はこの命令を受理したのだ」

 前回のヘリオスの戦いで、オッタビオ少将は徹底抗戦を命じた。誰もが無謀と思い、アルテローゼというイレギュラーな存在がなければ勝てない戦いであったが、彼は勝ったのだ。
 だから、アレクセイ中佐はこの無謀な命令に従う決断をしたのだった。

「…なるほど。司令の運に賭けますか」

「分が悪すぎる気もしますが…。私は中佐を信じます」

「済まない」

 三人は司令部からの命令に従う決断を下した。




 その頃、アレクセイ中佐と通信を終えたアッテンボロー少佐は、司令室の3Dモニターを見上げていた。

「アレクセイ中佐、済まない。策は既に動き出しているのだ。あれが落ちるまで、持ってくれ」

 アッテンボロー少佐の視線の先には、炎の尾を引いて落下する物体が映し出されていた。


 ◇


 革命軍の追撃を振り払ったアルテローゼレイフは、ヘリオス首都に向けて飛行を続けていた。

『あと三十分でヘリオスが視界に入る。その前に連邦軍と革命軍が戦っている戦場を通り過ぎるのだが…』

 レイフは、モニターにアルテローゼの進路と連邦軍と革命軍が戦っている戦場を表示する。このままアルテローゼが最短コースで進めば、戦場のど真ん中を突っ切ることになる。

「レイフ、アルテローゼのいない連邦軍は勝てるのですか?」

『今のところ、連邦軍の敗色が濃厚だな。革命軍を包囲したところまでは良かったが、戦力が足りなかったな』

 アルテローゼレイフは、ようやく通信可能となったら司令部から戦況データを受信して、レイチェルに伝えた。

『(しかし、アルテローゼ抜きで巨人を二体も倒したのか。だが、その後の包囲戦は無謀だったな。しかし勝敗は決しているのにどうして撤退しないのだ?)』

 レイフは、無謀な戦いを行っている連邦軍に疑問を感じた。連邦軍は既に戦力の半数以上が撃破されており、このままでは文字通り全滅してしまうだろう。

「アルテローゼが戦いに参加すれば…」

『無理だな』

 レイチェルは、アルテローゼが戦いに参加することで戦況を変えたかったようだが、レイフにはアルテローゼ一機の戦力で戦いの趨勢が変わるとは思えなかった。

『今のアルテローゼには武器も燃料もないのだ。ヘリオス首都で補給をしなければ戦うことはできない』

「…分かりましたわ」

 レイチェルは、燃料切れEmptyにメータの針がかかっているのを見て、戦いに参加することを諦めた。

『あれは…何だ? もしかして、メテオなのか』

 その時レイフのカメラは、天空から落ちてくる火の玉を捕らえた。
 レイフは火の魔法の最高峰であるメテオの魔法により落とされる小隕石に見えたが、それ・・は魔法ではなく大気圏外から撃ち込まれた物だった。

「もしかして、流れ星ですか。ですがこのコースは…」

『このままでは、あれ・・は戦場に激突する』

 レイチェルとレイフが見守る中、火の玉は包囲された革命軍のど真ん中に激突した。
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