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第106話 ロンドン訪問
しおりを挟む俺のコロンビアに対しての借りの清算から始まった、ミュージカル劇場の件はすぐさまコロンビアの意向で計画が始まった。
用地の確保は既に俺らの方で済んでおり、問題は無いが劇場の建設は最初の検討から入る。
そのための準備なども含めて羽根木のコロンビアが既に事務所を構えているフロアに、新たにこの件のための準備室を立ち上げていた。
俺らの方からは資本参加のボルネオ皇太子府の職員が数名ここに詰めることになる。
流石にエニス王子の方からは人が出せなかったようだ。
近いうちに新たに仲間になった女性たち数人が寄越されるという話は聞いた。
これは主に劇場建設の業務に当たることになるが、劇場運営についても徐々にではあるが始まる。
俺の方からも人を出せとコロンビアもボルネオからもうるさく言われるようになったので、女優を世話する関係もあり、吉井会長に丸投げをした。
吉井会長の方も既に試験的に始まるアイドル劇場の方で大忙しなのだが、それでも談合坂を卒業したメンバーの受け入れ先でもあるということで、黒岩さんの部下の木村美咲さんという40代の女性を寄越してきた。
彼女は以前アイドルを目指していたそうだが、諸々の事情により裏方に回り、十年以上黒岩さんに鍛えられた猛者の一人だ。
黒岩さんとは感じが違うが、とてもアラフォーには見えない大人の感じを漂わす美人だ。
本当にあの事務所にはアイドル以外に事務員でも美人以外雇用しないのかと云いたい位に美人が多く、そういえば男性社員をほとんど見たことが無い。
経営者の一部に見たが、現場で働く人たちにはみなかったかな。
今回の件では黒岩さんから散々に文句を言われたが、それでも彼女が一番に信頼を置く木村さんを出してくれたので、バニーガールズとしてもこのプロジェクトにはかなり期待しているようだ。
今回はバニーガールズ全面協力の元、俺の負担はかなり少なくなったので、正直助かった。
確かに俺の発案だが、ここまで大事になるとは思ってもみなかった。
お金と土地を用意すればあとはすべてコロンビアへと思っていたが、ふたを開けたらどっぷりと関わることになったのだ。
ある程度このプロジェクトが落ち着いた時に、経産省の仁美さんから聞かされた話だが、コロンビア合衆国の急な資本参加に政府としても驚いていたが、俺の参加と聞いて落ち着いていたようだ。
政府としても以前の騒動があったので、外国資本の動きにはかなり神経質になっている。
こんなことくらいなら日常でもたくさんあるのだが、城南島は政府の肝いりの場所ということもあり、かなり気にかけているのだとか。
俺はベッドの中で仁美さんから、これからは何かする前に相談してほしいとクレームを付けられた。
隣で俺に抱き着いている明日香さんも笑って同意をしていた。
せめて行為の最中に仕事を持ってこないでほしい。
俺は切に思うのだが、俺とゆっくり話せる機会が行為の最中くらいだと、今度は明日香さんからクレームが付いた。
まあ、城南島関連の事業はどんどん進んでいく。
ERJと合弁のモノレールも工事に入ったと連絡も受けているし、水上バスについても、今では共同運航の話まで出ている。
俺の方は毎日のルーチン以外ではそれほど忙しくも無くなり、今では大学生活にもゆとりが出て来た。
尤も2年生にもなれば授業の方も難しくはなってきて、レポート作成に時間が取られるようになってきているので、トータル的に忙しさは変わりがない感じだ。
俺の生活に日常が戻ってきた感じになった。
そうなると次の仕事に取り掛かる。
次の仕事というのは、とにかく俺たちの存在感を上げて総合力を付けていくことだ。
俺たちの方針としては、経済からなので、城南島の投資案件が軌道に乗れば、次の投資案件を探していく。
ここのおかげで、日本における俺たちの存在感は一部の間ではかなり上がったと判断できる。
そうなると今度は別の国に対してだ。
流石にここまで手の掛かる投資案件には手を出す訳にはいかないだろうが、普通に株式などの資本参加ならどこでもできる。
必要なのは優良な投資先を探すことだ。
俺は週末を使って、ヨーロッパ各国を回ることになった。
回ることにしたではない、なったのだ。
当然、俺らの中心企業の投資会社からの依頼だ。
今回は城南島の先が見えたからといっても、まだまだ手が離れた訳では無いので、ここから人を連れて行く訳にはいかず、かおりさんやイレーヌさんを始め、日本から随行員は出せない。
となると、残りはボルネオからだが、幸いボルネオには余裕があるということで、俺は一旦ボルネオに寄ってから最初の訪問地のロンドンに向かった。
今回の同行者はアリアさんが付いてくれる。
組織の代表が短い時間だが、俺との同行でボルネオを離れても大丈夫なくらいにはボルネオは落ち着いている。
そういえばアリアさんと二人きりでどこかに行くどころか、二人きりになったのは思い出せない。
聡子さんの時にそんなこともあったかもしれないが、それでも色々とあって、ゆっくりとはできなかったはずなので、今回のヨーロッパ視察には本当に喜んでいた。
俺は日本から小型ジェットで、ボルネオに向かい、そこで機体を入れ替えてロンドンに向かった。
このジェットは最初から使っている機体で、そういう設備は充実している。
俺は後部の個室に入り、アリアさんと……
本当にアリアさんは喜んでいて、最初から俺に甘えっぱなしだった。
ボルネオからロンドンまではかなりの時間を要する。
始めは二人きりでとにかくアリアさんになされるままにしておいたが、燃料補給でスレイマン王国に寄った後は、流石に機内サービスを担当してくれる女性やパイロットたちが我慢しきれ無くなったのか部屋に乗り込んでくる。
俺は順番に相手をしながら部屋から出ることが無かった。
ヒースロー空港に着陸する直前になって、アリアさんは色々と今回の視察案件の説明をしてくれた。
ロンドンのシティーにあるいくつかの投資会社を訪問して、いくつかの投資案件の説明を受ける手はずになっている。
この辺りは前にうちの女性たちを順番に研修に出している会社なので、一応信用はできる会社だ。
それでも、こういった会社にはつきものの情報系の組織のおまけが付く。
ここロンドンでは地元の情報組織のほかに、ファイブアイズ加盟のコロンビア合衆国の情報組織も入って来る。
案の定、最初に訪問した会社にあいつがキャサリンさんと一緒に俺らを待っていた。
「こんにちはマークさん、キャサリンさん」
「お待ちしておりましたよ、直人様」
「今回は、何も無いよね。
俺らは、只の投資先の検討に来ただけですが」
「ええ、ですから私どものそのお手伝いに」
どうも最近コロンビア合衆国の俺に対する扱いが変だ。
俺を篭絡するつもりなのか。
だいたいコロンビア合衆国は第一王子の派閥のはずで、俺とも敵対の関係にある。
コロンビア合衆国とは、城南島投資案件のことで、共同することにはなったのだが、元々はスレイマン王国の王位継承問題で敵対関係にある。
流石に大明共和国のように俺を暗殺対象にはしてこなかったが、それでもはっきりとスレイマン王国では敵対している。
そんな彼らと俺がこれ以上関わる理由は無い。
少なくとも日本以外では考えられない。
何より城南島開発ではこれ以上の投資案件には俺は関わるつもりも無いし、コロンビア合衆国の方でもそんな感じだ。
特にスレイマン王国がらみでは俺らと仲良くする理由が分からない。
既にコロンビア合衆国は第一王子を取り込んでかなり有利に活動しているので、ここで俺らを取り込んで一挙に継承問題に片を付けたい気持ちは分かるが、そんなことに協力できないことくらい向こうも分かり切っているはずだ。
俺らが、他の勢力と同盟を結ぶとすれば第二王子のいるペトロ共和国くらいしかありえない。
これは昔の故事に倣う訳では無いが、第一勢力に対して第二と第三が協力して当たる戦略は古くからある。
第二勢力は云わずと知れた第二王子を要するペトロ共和国だ。
今まで第三勢力の地位にあった大明共和国は第三王子の失脚で完全にその目が絶たれて俺らが第三勢力に上ってきている。
今のところその考えは我々には無いが、コロンビア合衆国はそのけん制をするつもりなのか、それとも第三勢力唯一の貴族である俺の取り込みを図っているのか、どちらにしても俺らにはそのつもりは全く無いのだが、彼らの意図がつかみきれない。
少なくとも、今のところ俺らとは敵対どころか協力し合う関係である以上、話だけでも聞かざるを得ない。
城南島限定の話だが、それでもここで宣戦布告する訳にもいかず俺は話を聞くことにした。
「お手伝いですか。
お話だけでもお聞きしましょう」
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