猫と横浜

のらしろ

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第11話 第二国立銀行の紹介

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 関内に入り最初に昨日口座を作った第一国立銀行横浜支店が見えた。
 流石に、この辺りではかなり立派なつくりの建物で目立つ。

 そのすぐ近くに、これまた立派なつくりの銀行が見えたので、これかなと思ったら、これは横浜正金銀行と言って、どうも為替などを専門とした銀行のようだ。
 近くに銀行が並ぶ姿はこの辺りが横浜でも金融街になっているのだろう。

 俺の目指す第二国立銀行は近くではあるが、第一国立銀行と横浜正金銀行と程ではなく、少し離れた場所にあったが、これもかなり立派なレンガつくりの建物だ。
 俺たちが中に入るとすぐに行員から名前を聞かれた。

「金田と申します。
 昨日、鈴屋様から紹介された者ですが」

 俺はそう言ってから鈴谷さんから頂いた紹介状を行員に手渡すと、その行員は俺たちを奥の応接室に連れて行った。
 応接室では本店支配人という人が俺たちの相手をしてくれた。

「金田様ですね。
 昨日、鈴屋様からお話は伺っております」

 そう俺に挨拶してきたのは柳澤鑛一という方で、支配人だという。
 それも、昨日のうちに俺の話が第二国立銀行側に伝わっていたようで、俺が来ることは分かっていたのか、入り口で待っていたのだろう。
 そこから雑談が始まった。

「鈴屋さんからは、なんと言われたのでしょうか」

「ええ、日本男児が海外で成功されたとかで、日本に錦を飾りに戻ってこられたと申しておりました」

 何だかすごく大げさに伝わっていたのかな。

「それはちょっと……」

「ですが、金田様はここ横浜で事業をなされるとか。
 ならば我らの仲間に加わると同じようなものです。 
私でできることならば何でもご相談ください」

「そこまでお話が伝わっておりましたか。
 確かに鈴屋様にはそのような相談をしましたが」

「それで本日はいかようなご用件でしょうか」

「ええ、まずは口座を開きたくお金を持ってきております」

「いかほどでしょうか」

「一万円を預金しておきたくて持ってきましたが、ここでお出ししてもよろしいでしょうか」

「一万円ですか。
 ええ、机の上にでも」

 そう言われたので、俺は昨日同様にリュックから一円札を束にしたものを机の上に置いて行った。
 しかし、壱圓札ばかりなので、かさばること、積み上げられたお金の束を見て、明日香さんは固まっていた。

 支配人の柳澤さんも一周驚いたような表情を見せたが、すぐに行員を呼んで俺の前で確認をさえた。
 これも昨日見た風景と同じだ。

 これで2万円は銀行に預けることができた。
 最悪、この二万円を使って事業をしていけばどうにかこの明冶時代でも生きていけるだろう。

「確かに、確認しました。
 一万円をお預かりいたします」

 ここでも引かれたけど、とりあえず横浜の財界との接点は持てたので、この先の商売についての足掛かりは問題ないと……あ、拠点がまだだった。

「すみません。
 それでですね、商売をするにしてもまだ拠点を決めていないのですよ。
 まずは住むところだけでもと思い、どなたか紹介いただけないでしょうか」

「あ、住居ですね。
 それも鈴屋様より伺っております。
 日本家屋でしたら、鈴屋様がいくらでも紹介できるのにとも言っておられましたので、今回は関内のオランダ人商人をご紹介いたします」

 支配人の柳澤さんはすでに用意している紹介状を俺に渡しながら、一人の行員を呼んだ。

「彼に案内させますので、これから伺いますか」

「もし、先方が良ければお願いできますか」

 俺の行動を予測していたのか、すぐにオランダ人の経営する商店に連れて行ってくれるらしい。
 第二国立銀行からは窓口担当の営業課長である浜中さんという方が案内してくれるらしく、一緒に銀行を出た。

 問題の商店は関内にあるらしく、銀行からは歩いての移動だ。
 歩くこと10分、元々第二国立銀行が山手に近い関内のはずれにあったのだが、連れて行ってもらったオランダ人の店は反対側なるのか、少し距離もあった。

 関内南側、港に近い場所が金融街の様に銀行が固まっているが、オランダ人の店は港と反対側の野毛山の方にあった。

「少し歩きましたが、ここになります。
 入りましょうか」

 浜中さんがそう言いながら店の扉を開けて中に入っていく。

 なにやらオランダ語であいさつを交わした後にたどたどしい日本語で俺に話をしてきた。

「あなたが、家を探している人か」

「ええ、そうですが」

「私は、この店ヨトレリヒ商店の主人でヨハン・ヤーステンです。
 ヨハンとでも呼んでください」

「金田です。
 これ銀行から頂いた紹介状ですが」

「紹介状ですか。
 正直まだ日本語は苦手で読むのに苦労しておりますので、それに浜中さんから聞いておりますから」

 そう言いながらも俺の差し出す紹介状は受け取っていた。

 その後は店内奥にある商談スペースに連れていかれ、紅茶をごちそうになりながら俺の希望を伝えていった。

 日当たりのいい物件で、薬などを作りたいので、そのあたりのスペースの取れる家を探しているとだけ伝えると、件の商人は一瞬だが、嬉しそうにしたかと思うと、すぐに俺にある一軒を提案してきた。

 その家はごく最近祖国に帰っていったオランダ人医師の開いた診療所の跡だという。
 山手の丘の上にある一軒家で、庭もそこそこの広さを持っているだという。

 話を聞く限りでは、ものすごく魅力的に聞こえてきたが、相手が商人だ。
 しかも祖国から遠くにある日本まで来て商売をするような山っ気のある商人だけに額面通りに受け取るわけにもいかず、どうしようかと悩んでいると件の商人が提案してきた。

「金田様と言いましたか。
 これからご案内いたしますが、一度ご覧になられてはいかがでしょうか」

 家を見せて貰えるらしい。

「ええ、それならばそうしていただけますと助かります」

「では、これからその家にご案内いたしますが、浜中様はいかがしますか」

「私はこれで、銀行に戻ります。
 もし、何かあれば何でもご相談ください、金田様」

 そう言って、店で第二国立銀行の浜中さんと別れた。


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