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第一章 転移、そして自立
第二十四話 上人様と手土産の塩
しおりを挟む浜で、竹と土で作った小屋がほぼ完成した。
やはり、人手をかければ早くに完成できる。
すぐに、もう一つの小屋の建築に取り掛かってもらった。
この建築は、すでに俺の手を離れ、珊さんに音頭を取ってもらい、男衆に12~3歳の男衆準構成員と呼べばいいのか……やくざみたいであまりいい表現ではないが、成人直前の子供たち……も加わってもらって、今俺の横で小屋を建ててもらっている。
大工仕事に精通している与作さんには、木材つくりに専念してもらっている。
木材で家を建てるようになったら、与作さんにお願いするとして、今風でいう木造モルタルもどきのこの建築で作る小屋は、珊さんにお願いして作ってもらうつもりだ。
今横で建てている小屋も、珊さん達が慣れたもので、かなり早くに完成しそうだ。
この建築法は、木材の加工がほとんどないために、材料の三和土もどきが十分にあれば、かなり早く完成できそうだ。
屋根の部分は、竹で骨組みをした上にスギなどの木の皮で葺く木皮葺きである。
瓦は作れないし、そもそもこの時代では瓦葺きなど一般家庭の家ではありえないので、これで充分である。
あまり目立つことはしたくない。
そもそもこの建築方法はこの時代にはありえない建築法なので、目立つこと甚だしいのだが。
林の陰に建ててできるだけ目立たないように工夫はしている。
本当に簡単に建つものだから、ここに、これで建てた小屋をあと数軒作り、以前みんなに説明したように簡単な部落をここに作ることにした。
数日あればあと数軒は作れそうなので珊さんにお願いをしておいた。
いったんここを完成させたのならば、今作っている塩を持って願証寺の上人様のところに一度挨拶に行こう。
本多様からの返事も気になるし、その後についてはその返事しだい考える。
俺は、珊さん達が作っている小屋の傍で、今ある塩作りの装置の横に、同じ装置を今あるものより大きめの物を作り始めた。
そこで、ふと周りを見渡すと、工具の不足が目立ち始めた。
作業する人数も増えてきており、工具を使う機会が増えている。
もともと葵の保護者の遺品である大工道具だけで、色々と作っているので、工具の空き待ちがそこかしこで発生してしまう。
寺の清掃などで、使える道具などもいくつか出てきてはいたが、人数のわりに工具が足りない。
木材に手を出している以上、切り倒すための斧がどうしても複数ほしい。
お金に少しばかりではあるが余裕が出てき始めたこともあるので、一度、桑名辺りの鍛冶を訪ねて作ってもらうことにしよう。
確かあそこには生活用品?のための鍛冶がいたはずだし、ちょうど俺の手も空いたこともあるので、張さんを連れて行ってみるか。
明日の勉強会の後で行くことにした。
結局、張さんに珊さんそれに葵と幸がついてきた。
浜から歩いてそれほど時間がかからなかったので、勉強会を終えても十分に時間があった。
桑名の町を鍛冶を探して歩き回った。
結局1軒しか見つからなかったので、みんなでその鍛冶に斧をお願いしに入った。
俺達が訪れた鍛冶屋で斧の金属部分だけを作ってもらう。
かなり高かったが、今後のことも考えて4つばかり作ってもらうようにお願いをして、前金を払った。
全額払えたが、そうすると今までの貯えがほとんどなくなるし、持ち逃げされてもあれなので、前金として向こうの言い値の半分を払った。
願証寺の上人様や玄奘様の名前を出しておいたので、いい加減な仕事はされないだろうけれど、少し不安だ。
なにせ、考えたら高額の買い物としては初めての経験なのだ。
おいおい慣れていかなければならないだろうけれど、少しづつでも信用をつけて、この世界で生きていくように経験値をためていく。
斧はひと月あれば完成するそうなので、そのころに取りに来ることを伝えた。
あとで、上人様に会ったらこのことも伝え、もし、あの鍛冶屋が上人様に斧を納品するようなことがあったら預かってもらうようにお願いをしておこう。
浜の小屋はとりあえず全部で4軒建てた。
塩も、かなりの量を作ることができたので、明日、張さんが門前に商いに行くときに俺も同行させてもらい、塩を持って上人様に挨拶に伺うことにした。
門前に着くと張さん達とは別れ、俺と玄奘様とで上人様に会いに行った。
「久しぶりだな、玄奘。
それに代わりがなさそうだな、空。
寺の方は片付いたかな」
「上人様、只今戻りました。
寺はすっかり奇麗になり、十分に寺として使えるところまで整理できております。
何分古い建物なので、おいおい手を入れていかなければならないとは思いますが、立派な寺となっております。
また、我が観音寺から連れてまいった人達も、既に寺の仲間に慣れてきており、我は、手を離しても問題はありません。
なので、また、通常の修行に戻ろうかと思っております」
「そうか、そこまでできておるか。
空も、だいぶ慣れてきたようだな。
ワシの睨んだ通り空は鳳じゃったということだな。
して、今日はなんとした」
「はい、上人様に我々の新たな商材となります塩を最初に献上したくご挨拶に伺いました」
「これはずいぶん殊勝なことを言っておる」
「何分、色々と上人様のお名前を我々の後ろ盾として使わせていただいておりますから、それに、本多様とのやり取りの中継地としてもここを利用させてもらっております。
で、その本多様からの便りが届いていないかの確認も兼ねております」
「お~~、そういえば数日前に手紙が来ておったな。
お~、これじゃこれじゃ。
ほれ、ワシ宛ての記述はほとんどなく、お前宛ての商いに関してばかりだったわ」
「ありがとうございます」と言って、上人様から手紙を受け取った。
手紙には、城下での商いは、やはり座の関係で許されなかった。
しかし、少量ならば、弾正様が城で買い上げてくれるとのことなので、もう一度こっちにこいと言ってきている。
直接城との商いは、弾正様との特別な繋がりを持つ事に成るため、警戒はする必要があった。
正直土地の権力者との関りをできるだけ避けておきたいのが本音だ。
この時代、土地の権力者なんぞいくらでも簡単に変わる。
前任者にかわいがってもらっていると、後任者の身内やその協力者からの攻撃の対象となる。
大商いにはなるのだが、ある程度、商いが大きくなると、権力者の庇護がどうしても必要になってくる。
松永弾正はそういう意味ではかなり後の時代まで生き残っているので、付き合うにはちょうど良かったのかもしれないとは思うが、どうしても考えてしまう。
ま~、小商いの我々なのだから、そこまで気を使う必要はないのだろう。
行っても、弾正本人に会う訳でもあるまい。
一度戻り、商品を整えてから、例の三角貿易をやってみよう。
俺は、上人様に向かい、お礼を述べた。
今回ここに来た目的はかなり多岐にわたっており、情報の収集がまだできてないことを思い出した。
「いろいろご面倒をおかけしております。
手紙にありました通り、もう一度大和に、今度は商いに行ってみるつもりです。
それとは、話が飛びますが、戦について少々お聞きしたいのですが、よろしいでしょうか」 と言って、滝川様のことについて話をし、隣の尾張の織田信長の近況を尋ねた。
わかったことは、織田信長は、義父斎藤道三亡き後の美濃攻めの最中だとか、それにかかりっきりだが、中々攻め切れていないようだと教えてもらった。
なので、しばらくは尾張勢が伊勢に攻め込むようなことは無いだろうと教えてもらった。
俺としては、それでも一度清州城を見てみたかったので、玄奘様の修行のついでに清州に向かってもらい、それについていくことにした。
最後に、今の自分たちの現状を正直に上人様に伝え、最大の課題である人手不足について相談した。
ある程度年齢の達した孤児ならば引き取れることを話し、できれば足りない男衆を回してもらえないかとお願いをしておいた。
戦災で流民となった家族でも、多少ならば受け入れることも話しておいた。
ほとんどここに来た目的を果たしたので、俺は玄奘様と一緒に上人様の元を離れ、一度門前の市で商いをしている張さんの所に戻り、玄奘様と一緒に清州に行くので、ここで一旦別れることを話した。
1週間もしないで戻るので、葵と幸には塩作りを継続してもらうようにお願いをしておいた。
二人はかなり不満そうにしていたが、塩がある程度の量を確保できたのならば、今度は一緒に大和の本多様のところに行くと話し、二人を納得させた。
横で聞いていた張さんも自分もいけそうなのでたいそう喜んでいたのが印象的だった。
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