名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第一章 転移、そして自立

第二十九話 報告

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 どんよりとした空模様の中を、俺らは願証寺に向かって歩いていた。
 今日は、まだ雨は降ってはいないが、連日のように降る雨のために、商いの炭焼きと塩作りは暫くの間お休みをしていた。
 それでも、商い用に作り置いていた炭と塩を持って、ふた組のリア充どもを引き連れての移動だ。

 目の前でイチャイチャされたのでは堪らない。
 俺は、列の先頭を歩いていた。
 何故だか、今日はやけに葵と幸が俺にくっついてくる。
 正直暑いのと歩きにくいのだが……どうしたものか、うん~~~~ん。

 それに、時折見せる張さんの目つきが鋭く怖い。
 後ろでは、リア充爆発しろ、といった雰囲気の中で、ここはなぜだか異様に寒々しい。
 怖い、俺が何をしたというのだ。
 とにかく気にせずに願証寺に急ごう。

 雨が降り出しても、荷物は大丈夫なように大八車に積んだ荷物の上に屋根材で使った余りの木の表皮を幾重にも重ね、縛ってあるので、少々の雨ならば濡らさずに済みそうだ。
 でも、降る前に願証寺に着ければそれに越したことはない。

「いつ雨が降るかわからないので、できる限り急いで行きますよ」 と後ろのリア充たちに声をかけた。

 「「♥はい~~♥♥♥」」 と本当に腹の立つ。

 張さんは笑顔で頷いてくれたが、目が、目が笑っていませんよ。
 かえってその方が怖いです。

 いつもならば2時間くらいかけて到着する距離のところ、俺が急がせたので1時間半くらいで到着することができた。
 急いだだけじゃないが、異様に疲れた。

 俺らは、どうにか雨の降る前に着くことはできたが、到着と同時にしとしとと雨が降り始めた。

 「梅雨時は本当にうっとうしいな。
 失敗したかな、この時期に結婚させるのは。
 次からは時期を考えよう」 と独り言を言いながら、俺らは寺の中に入っていった。
 いつのもように寺男を見つけて、上人様に取次をお願いした。

 直ぐに、許可が下りて、いつもの上人様の部屋に今日は全員でお邪魔した。
 全員でお邪魔したものだから、俺らが部屋に入ると上人様は驚いていた。
 部屋が狭いので、直ぐに上人様は広めの客間に俺ら全員を案内してくれた。

「空よ、今日はどうした。
 随分大勢できたものだな」

「はい、まずは、順調に行っております商いのおすそ分けじゃないですが、塩と墨をお持ちしました。
 ご笑納ください。
 で、直ぐに本題に入らせていただきます」

「うむ。で、その本題とはなんだ。
 そちらの表情からは厄介事じゃないだろうことはわかるが、なんなりと申すが良い」

「はい、本日は上人様に報告とお願いに上がりました。
 後ろに控えておりますふた組の男女を結婚させて夫婦にしたいので、上人様に祝福とできましたら上人様、無理でしたら玄奘様に我らの寺までお越しいただいて、そこで式を上げさせたいのです。
 我らの村の最初の祝い事になります。
 お願いできませんでしょうか」

「うむ、結婚とな。
 それはめでたいな。
 そうか、結婚させる位までにはそちらの所は落ち着いてきたか。
 そうならば、是非にでもワシから祝わせてくれ。
 今日明日にそちらのところに向かうのは難しいが、近日中にワシが行ってお祝いをしよう。
 そうかそうか、本当にめでたいものよな。
 わしの目に狂いはなかったということか。
 幸せの中にあっては、人は馬鹿な真似はすまい。
 空もそう考えているのだろう。
 人の営みとしては、夫婦となり子を成すことは当たり前の事じゃ。
 その当たり前の中に人としての幸せがあるのじゃとワシは思っておる。
 しかし、今の世の中では、その当たり前がひどく贅沢となっている。
 早く、本当に当たり前の人の世になるといいのじゃが。
 一人でも多くの者が当たり前の幸せを感じるように、空よ、頑張るのだぞ。
 前にも言ったことじゃが、それなればワシにできる協力は惜しまんでな」

「ありがとうございます、上人様」

「私らは、寺で祝いの宴ができるように市で買い物などして、本日は帰ります。
 後日、上人様のお越しをお待ちしております。
 梅雨時の外出となりますので申し訳ありません」

「なに、構わんよ。
 この時期はそちらも商いがやりづらいだろうて、暇なのだろう。
 良い判断だと思うぞ。
 ワシのことは気にするな」

「では、これにて私らは失礼させて頂きます」 と言って、上人様の前から退いた。

 その後は、鬱陶しいリア充どもを先に帰して、門前の市や桑名の市を見ながら買い物をしていった。
 少ないながら大人もいるので酒を買い込んで、伊勢海老も売っていたので、欲しかったが、いつ上人様がいらっしゃるのか分からないので、今日は諦めた。

 売っている場所と相場のみを確認して、上人様がいらっしゃったら急いで買いに走ろうと考えていた。

 帰りはリア充を先に返したので、変な空気は無くなったが、今度は張さんまでもが俺に近づいてきた。
 張さんと葵、それに幸までもが加わって場所取り合戦の様相を見せ始めていた。
 珊さんは危険に近寄るなといった雰囲気を全身で漂わせて俺からかなりの距離をとって、一人で大八車を引いていた。

 裏切り者~~~、って俺は思ったが、ここでそれを口にしたらどんなことになるのか想像もつかなかったので、賢者のごとく俺はだんまりを決めた。

 だいたい今まで生きてきたか?20数年の間、彼女の「か」の字もない童貞だったので、というより、俺の外観はまだ10歳くらいだろう。
 これ、何かおかしいだろう。
 絶対に変だよ。
 それとも張さんはショタコンなのだろうか、違うだろう。

 行きも帰りも異様に疲れて、俺らは寺に戻ってきた。
 寺に戻った俺らを茂助さんが迎えてくれたので、協力して買い込んできた酒やその他食材を庫裡の倉庫に仕舞って貰った。
 なんでも、先に帰ってきたふた組のリア充どもが本堂で自習しているみんなの所で一緒に自習を始めたのだが、ふた組共に自分たちの空間を作り上げ、辺りかまわず甘ったるい空気を撒き散らしたものだから、全員が勘弁してくれって気持ちになっているそうだ。

 茂助さんはたまらず逃げてきたので、ここにいるのだとか。
 我慢してください。
 上人様が近日中にここに来てくださる。
 そうしたら式を挙げてそれぞれの家に追い出すので、しばらくは我慢してください。

 俺なんか、その上、葵たちが変になっているのでたまらないのだが、我慢しているのですから。

 俺は、ここの片付けが済んだら、本堂にみんなで向かい、集まった全員に異様な雰囲気の元凶であるふた組の結婚を伝えた。
 近日中に願証寺から、日頃からお世話になっておられる上人様に式を挙げて貰えることになったことを伝え、当日は祝いの宴を開くことも伝えた。

 だから、この雰囲気でももう少し我慢してください。
 みんなで耐えようではないか。
 でも、いい加減もう少し場所を考えてくれませんかねリア充ども。

「リア充、爆発しろ、もげてしまえ~~~~~」

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