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第一章 転移、そして自立
第三十二話 我ら三蔵の衆
しおりを挟む今後の展開の見通しなどを上人様たちと話していたが、それも終わったので、俺は近くで掃除をしていた子供たちに、寺にいるみんなを本堂に集めてもらった。
「お~い、掃除の途中で悪いが、一旦掃除をやめて、寺にいるみんなを本堂に呼んできてくれ。
お前らも、それが終わったら本堂で待っていてくれ」
「「「はい、わかりました」」」 と言って、みんな講堂から駆け出していった。
「では、上人様、本堂で結婚の式をやってもらえますか」
「判った、それにしても、めでたいことよな。
ワシの見立ては間違ってはおらなんだな」
「上人様、それを言うなら、私が保護を始めたのが今につながっております。
空を始め張さんや珊さんは私が保護をしました」
「玄奘も良う言いよるわ。
そうだな、全てがめぐり合わせということだな。
空よ、今後も期待しておるぞ。
では、玄奘よ、ワシらも本堂に移動するとしよう。
空、案内を頼む」
「「はい」」 と言って、俺は上人様と玄奘様を連れて隣の本堂に移動した。
そこにはここで休んでもらっていた3家族の他に寺にいた村のみんなが集まっていた。
すでに70人近くになっていた。
これらみんなが村の衆となる。
人数的にはちょっとした村の人数をそろそろ越える頃だろう。
他から来ている3家族は集まってきた村人の数の多さに驚いている様子だった。
俺は、オドオドしているそれら家族に対して、本堂の右端に集め、村の衆をご本尊に正対するように座らせた。
その上で、今日結婚する善吉、幸代と与作、お菊のふた組を前に座らせた。
正面に上人様を呼んで、俺は集まったみんなにゆっくりと大きな声で話し始めた。
「仕事中に集めて申し訳ない。
だが、今から我々にとって忘れられないような行事を始める。
既に皆も知っているように、前に座っているふた組みの男女の結婚式を上人様に執り行って頂く。
我々が戦乱などから逃げ惑いここに集ってから、今日まで、生き残ることだけでいっぱいだった。
だが、それもみんなの協力で、やっと一息を入れることができるようになってきた。
これからは、我が村のますますの発展を目指して、村に集う者たちが、人として幸せを掴み取るためにこの者達の結婚を私は認めた。
ここに来て下さった上人様と玄奘様もふた組の結婚を祝福して下さるので、村を挙げてみんなで祝おうと思う。
では、上人様、よろしくお願いします」 と言って、上人様が簡単なお経を上げた後、ふた組の夫婦にありがたい説法をして下さり結婚式は終了した。
「空よ、結婚式は終わったぞ。
後は、空の番じゃ。
皆に説明でもせんか」
「はい、では」 と言って、再度俺は皆の方に向き直り、今後のこと等について説明を始めた。
「皆の衆、もう少し俺の話を聞いて下さい。
今日の結婚式は、我が村でも家族が持てるような力を得てきた事の表れです。
ここに集まった人数だけでもちょっとした村などを超えた数の人が生活をしています。
しかし、我々は更なる力を求めています。
なぜならば、今まで我々は、戦乱から逃げ惑い、お武家様の理不尽な乱暴を恐れていたが、我々がより力をつけることで、それらを跳ね返せるようになりたい。
そのためにも、これからは、当分この寺と、林の部落、浜の部落の三ヶ所で、更に戦乱で逃げ惑う者たちの救いの場所として、多くの者をここに受け入れていきます。
なので、これからは更にここに集う人数も増えていくことになります。
それで、これから村のあり方を変えます。
林の部落の頭を与作さんに、浜の部落の頭を善吉さんにお願いをします。
なので、与作さん夫婦には林の家を与えそこに住んで貰い、善吉さんには浜の家を与えます。
また、本日から加わる三組の家族はそれぞれの家族ごとに林と浜の部落に分かれて暮らしてもらいます。
これからは、この寺と林の部落、浜の部落の3箇所を拠点に活動をしていくことにします。
それで、今後の村の大事に関しては、今名前を挙げた善吉さん与作さんにそれぞれを補佐して頂く奥さんの幸代さんお菊さん、それに茂助さんを加えて、俺と張さん、珊さんの8人で話し合って決めていく。
今上げた者たちを村方(むらかた)と称し、今後はその村方を中心に上人様や玄奘様に相談をしながら村の運営を進めていくことになります。
また、そろそろ我々の生活の拠点である村の名称が無いことで、色々と面倒になってきています。
上人様の勧めもあり、この村に名前を付けることにした。
『三蔵村』とする。
この寺と林の部落、それに浜の部落を合わせて三蔵村と称します。
また、ここの寺の名前も今までわからなかったので、名前が判明するまで、この三蔵を使い『三蔵寺』とすることにしました。
なので、我々は今後『三蔵の衆』と号することになります。
明日からの仕事については今の組み合わせと変わりませんが、今日新たに3組の家族が加わりましたので、彼らが参加します。
彼らは後ほど案内しますが、彼らにも林の部落と浜の部落に家を与え家族で住んでもらうし、我々の仕事にも協力してもらうことになります。
すみませんが、ここに来てくれますか」 と言って、端で集まって座っていた家族を中央に呼んだ。
その上で、上人様から彼らについて紹介してもらった。
全員に顔を見せた後に集まりを一旦解散させた。
「これで、結婚の式は終わりです。
ここで一旦解散します。
かねてから準備をしていた宴を準備が出来次第、ここ本堂前でみんなで祝いましょう。
なので、みんなして手分けをして準備を始めて下さい」
みんなが俺の宣言で一斉に動き出そうとしていた。
しかし、本堂の中ではふた組の新婚夫婦が、まだイチャイチャしていたので、俺は彼らを呼んで大事な仕事をお願いした。
「与作さん、善吉さん、奥さんと乳繰り合うのは夜まで我慢して下さい。
それよりもお仕事をお願いしたいのですが」 と声をかけたら4人とも顔を真っ赤にして、こっちにやってきた。
「村長、で、仕事とはなんだ」 と、恥ずかしさをごまかすようにいつもより声を低くして与作さんが聞いてきた。
「ここにいるご家族をそれぞれの部落の家に案内をして、家を与えて落ち着かせてください。
家は、既に建ててあるものから好きなのを選んでもらって構いません。
どうせ同じものですから。
で、落ち着いたら、また、ここにみんなで戻ってきて下さい。
宴をここで始めますからね」
「判った村長。
では、我々に付いてきて下さい。
持ち物は面倒でも持ってきてください。
みんなの家に案内するから」 と言って、ふた組の夫婦はそれぞれ担当の家族を連れて部落に戻っていった。
上人様と玄奘様には寺で休んで頂き、俺は張さんと珊さん、それにいつも付いてくる葵と幸を連れて近くの漁師村に酒の肴を探しに行った。
できれば鯛と伊勢海老は買いたいのだがあるといいな。
結論から言うと欲しかった魚は全て入手ができた。
今日が梅雨の中休みで晴れており、どの家の漁師も漁に出ていたので、魚が豊富に水揚げされていた。
鯛も伊勢海老も少々値が張ったが、ある程度の数を仕入れ寺に戻った。
夕方にはすっかり宴の準備も出来上がり、蔵から買い置いていた酒を出して大人に振舞った。
当然今日仲間入りした3家族の親たち大人にも分け隔てなく振る舞いその夜は村みんなで楽しめた。
上人様も玄奘様もその日はお泊まりになり、明朝になって願証寺に戻って行かれた。
流石に宴の片付けは夜にはできずに今日は朝から全員で片付けを行った。
片付けを終えた後、みんなに集まって貰い、仕事の割り振りを確認し、新たなご家族も仕事に加わってもらった。
当面は、晴れた日には仕事を行い、雨の日には勉強会を開くという事に成る。
どうせ、梅雨が明けるまでたいしたことはできないのだから俺は割り切っていた。
夕方からまた雲行きが怪しくなってきていたので明日は朝から雨が降りそうだ。
新たな仲間が慣れるまでは俺も勉強会に付き合うことにした。
徐々にではあるが村が形になってきているのを俺は肌で実感していたのだった。
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