恋の魔女の初恋

三原みぱぱ

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第4話 恋の魔女との密談

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「なあ、僕と武田さんをくっつけたくて、カラオケに参加させようとしているみたいだけど、無駄じゃないか? いつも武田さんの周りには他の女子がいるだろう」

 僕は、その日の放課後もいつものように、屋上農園で水やりをしていた。土を触り、湿り具合を確認してから水の量を調整する。水が少しくらい少ない分にはそれほど問題にはならないが、多い分には根腐れを起こして取り返しが付かなくなる。植物によって水の量も調整する。キュウリやナスのように水分を好む野菜もあれば、トマトのように水を少なめにした方が甘くなる野菜もある。日の当たり具合や天候によっても変わる。育成具合を見ながら日々調整をしている。
 そんな、僕の側で黒柳はノートにメモを取る。僕はその日の天候や湿度、水の量、肥料の種類、発育状態を記録しているのだが、彼女はそれを手伝っているのだった。
 水色のシャーペンで僕の言葉をメモしながら、彼女は答えた。

「そうね。彼女と菊池君が話をするのは難しいかもね。でも、行かないとチャンスはゼロでしょう。参加すれば何があるかもしれないじゃない。だから、当日は逃げたりしないでちゃんと参加してよね。何だったら家まで迎えに行こうかしら」
「いやいや、勘弁してよ。ちゃんと参加するから、迎えになんて来ないでいいよ」
「じゃあ、約束よ。間違いなく参加してね」

 焦る僕に、黒柳はいたずらっ子のような笑顔を浮かべた。
 いつもは清楚なお嬢様のような立ち振る舞いをする彼女だが、二人っきりの時は、どこか子供っぽい言動をする事がある。
 普段は猫をかぶっているのだろうか? まあ、高校生にもなって、素のままの自分をさらけ出しているような奴などほとんどいないだろう。人に気を使い、嫌わせないようにいい人の仮面をかぶる。人の目や評価におびえ、押しつぶされる。あの時の彼女もそんな状態だったのだろう。ただ、あれから吹っ切れたようだったので僕はホッとしている。

「ところで、次の席替えっていつか知っている?」

 黒柳は突然、話題を変えた。
 あまりにも唐突過ぎる話題変更に僕は苦笑いをしながらも、素直に答えた。
 まあ、カラオケ大会の話をこれ以上しても無駄だろうから、僕にとっても話題を変えることに何の不都合もなかった。

「一年の時には、学期はじめと中間試験が終わってからだったから、まだ先じゃないかな」
「あら、そう、それは残念」
「何が残念なんだ?」

 全く残念そうでない表情の黒柳は、目を細めて笑って答えた。

「席替えがあったら、英里ちゃんを菊池君の隣の席にしてあげられたのに」

 英里ちゃんって誰だ? ああ、武田さんの下の名前は英里子か。いつの間にそんな仲が良くなったのだろうか? そんな疑問はとりあえず脇に置いておいて、一番の疑問を口にした。

「武田さんを僕の席の隣にするってどういうことだ?」
「言葉の通りよ。席替えって、くじ引きでしょう。だったら私の魔法で、英里ちゃんと武田君のくじを操作するのなんて簡単よ」

 自称恋の魔女は、当たり前のように言ってのけた。魔法を使えばくじの結果を操作することなど簡単だと。
 そもそも、僕は黒柳が魔女だなんて信じていなかった。なぜなら、彼女が魔法を使っているのを一度も見たことが無かったからだ。
 ただの恋バナ好きで世話好きな女子高生が、恋の魔女なんて厨二病のような発言をしているだけだと思っている。それは、転校生である黒柳のキャラづけと理解して、僕はあえて触れないようにしていた。オタクに見える僕ならば、そんなキャラの自分を発揮しても大丈夫だと、彼女の直感が僕を指名したのだろう。そうであれば、少しぐらい、彼女に合わせてあげても良いかと思っている。

「じゃあ、今度の席替えの時は、一番後ろの窓側にしてくれると嬉しいな」
「良いわよ。菊池君は外を見るのが好きだもんね」
「日当たりもいいし、空が見えるから、部活にいくまでに予定が立てやすいんだよ」
「じゃあ、次の席替えは楽しみにしててね」
「ああ、よろしくね。出来ればずっと、その席固定でお願いしたいな」

 僕はそんな事は無理なことを承知で、言ってみた。ずっとどころか、一回でも無理だろうと思っているため、簡単に了承するものだと思っていた。それなのに彼女は真剣に悩み始めた。

「冗談だよ。そんな事、難しいだろう」
「いや、出来なくはないんだけど……流石にずっとだと、他の人から疑われちゃうわよね」
「ああ、まあそうだよね。じゃあ、たまにでいいよ」

 僕がそう言うと、黒柳は悩みが晴れたように、明るく笑った。
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