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第二話 ダンジョンの奥には美青年がいるの?
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注意深く、奥へ奥へと進んでいくとちょっとした広場に出た。
驚いたね。先客がいるとは……ガースは驚く。
ガースは冒険者としてパーティ-を追い出されたが、それは冒険者としての腕のせいではないと思っている。
冒険者としては長年過ごしてきた腕と勘を持ち合わせ、先駆者(パイオニア)としても上級の部類だと自負している。だからこそ、ほとんど情報の無い第十二階層まで降りて来られたのだ。
それなのに先にキャンプをしているものがいる。どうやら一人のようだ。
モンスターではなさそうだ。人だ。
ほかの先駆者(パイオニア)だろうか?
それにしても普通はガースのように荷物持ちや護衛などを連れ、最低でも二~三人で活動するはずだ。
ガースは獣人の娘クロフェを待たせ、暗闇に紛れながら気づかれないように注意して近づく。
「お客さんですか?」
涼しげな男の声が響く。
ほかに生き物の気配はない。明らかにガースに向けて放たれた言葉だ。
「招かれざれる客かね?」
ガースはあきらめて、男の見えるところまで出てきた。後ろ手に短剣を持ったまま。
「いえいえ、お待ちしていましたよ。一人では寂しかったですからね」
そう言って振り返った顔を見たガースは驚いた。
本当に男か? ガースがまず考えたことだ。
焚火に照らされたその姿は、長いサラサラの金色の髪をポニーテールにまとめ、二重のまぶたに涼しげな瞳は金色に輝き、スッと通った鼻、つややかな唇。女としか見えない。それもとびっきりの美女。
顔は小さく、座っていてもガースより一回り以上は長身ですらりとしているまるでモデルのような体形だ。
そんじょそこらの女に金を出すなら目の前の男に金を使った方がましだ。ガースはそう思ってしまった。
それと同時にこんな美女がいたら俺なんていくら金を積んでも相手にされないだろう。そうとも感じてしまう。
「座りませんか?」
声変わりする前の男の子のような甘い声でガースに話しかける。
ガースは注意深く男を観察する。
男は火の前に座り、マントの下には皮の軽装の胸当てをつけている。脇には黒い反りのついた鞘に収まった刀を置き、焚火で湯を沸かしていた。
かすかに湿り気の有る涼しい風の中、焚き木がパチンと跳ねる。
「あんた、一人か? ここで何をしている? そして男か?」
「男ですよ……よく言われますが。そして一人ですよ。だからここで人を待っているのです。あなたも一人ですか?」
仲間とはぐれたのか、死んだかで一人では戻れなくなって救援を待っているのか。冒険者にはよくあることだ。
曲りなりにも第十二階層まで来た冒険者だ、戦力にはなるだろう。最悪は囮にすればいい。
ガースは男を値踏みする。
「いや、荷物持ちがいる。あんた一人ならここから出るまで手を組むかい?」
「……そうですね。あなたが私の探している人ならずっとついていきますが……」
ガースは男の言葉に引っかかるものを感じたが、とりあえず猫の獣人を呼ぶことにした。
「あんた、名前は?」
ガースは娘が来る間に男に質問をする。
「ミズホと言います。そちらは?」
「ガースだ。よろしくな」
自己紹介をしている間に大きなリュックを背負った獣人は走って二人のもとに来た。
「あたしはクロフェと言います」
「てめえの名前なんて誰も聞いてないんだよ! バカヤロウ! そんな暇があったらさっさと飯の用意をしろ」
そう言ってガースはクロフェを殴りつけると、フードが外れるほどの勢いで倒れる。
「その耳は……」
「ああ、こいつは獣人だよ。力が強いだけでさっぱり役に立たねえ。もしかしてあんた獣人見るのは初めてかい?」
クロフェは左の頬を赤くしながら、大きなリュックの中から食材や鍋を出し、食事の準備をする。
「ええ、私はつい一年ほど前までずっと山にいたもので、あまり下界の事はわからないのですよ」
ミズホは首を少し傾げた拍子に前髪をさらりと落とし、天使のような笑顔でガースに応えた。
ガースはそのあまりの美しさにもしかしたら騙されてるのではないかと疑った。
「そうかい。ちなみにあんたはこの奥はどこまで行ったんだ?」
ガースは探るような眼でミズホを見る。
「私ですか? この下の階層で待ってたんですが、誰も来られなかったので、ここまで上がってきたのです」
「……つまりは第十三階層まで行ったのか!?」
ガースは驚いた。この第十二階層は挑んだものは少ない。そのため未知の部分が多く、地図などの情報が高値で売れる可能性がある。そしてガースの知る限り、第十三階層へ行ったという者を聞いたことがなかった。男の言葉が本当であれば、ガースにとって労せず、金になる情報が引き出せる。
「なあ、ミズホさんよ。この下の階層に行くまでの道は覚えているか? よければ俺にその道を教えてくれないか?」
ミズホはガースの言葉の意味が分からないのかきょとんとしている。
「お礼はする。俺は先駆者(パイオニア)なんだ。俺の地図一つで他の冒険者たちが安全にこのダンジョンを攻略できるんだ。みんなのために一つ助けちゃくれないか?」
ガースはヘルメットを脱ぎ、そのスキンヘッドを下げてお願いする。
「いいですよ。私が分かる範囲であれば……」
ガースのいかつい顔がほころぶ。
「ありがてえ、ちょっと待ってくれよ」
ガースは荷物入れから書きかけの地図を出し、今いる部屋までの地図を書き足した。
それから、ミズホの話を聞き、地図に書き加える。
「ご主人様、食事ができました」
クロエが声をかけるころには、ミズホの情報をほとんど書き写したところだった。
「これは助かる。兄ちゃん、結構この辺りを回ったんだな。よく無事だったな。さあ、兄ちゃんも食いな」
そう言って野菜と肉を煮込んだスープがなみなみと入った器を差しだす。
ミズホは黙ってそれを受け取ると、ガースに言った。
「ありがたいですが、私は小食なのでこの量はちょっと多いですね。この半分でけっこうです。もったいないので減らしていただけますか?」
「あ、そうかい。しっかり食わないからそんな細身なんだよ。冒険者ならしっかり食べなきゃ」
そう言いながらも、鍋にスープを戻す。
二人が食事を済ませた後、鍋に残った少量のスープをクロフェは必死に集めて食べていた。食べられただけましとは言え、いつもよりもかなり量が少なく、空腹を押さえられない様子だった。
「兄ちゃんのおかげで、俺の仕事もはかどったし、ここでひと眠りしたら地上に戻ろうかと思ってるんだが、兄ちゃんはどうする」
ガースは思いがけず仕事がはかどった上に、満腹になり上機嫌でミズホに話しかける。
「そうですね……」
美形だと一目見た時から思ったが、焚火の明りに光る横顔をじっと見ていると何とも言えない色気を感じる。男に興味のないガースだったが、ダンジョンに入ってもう、一週間近くになる。男として溜まるものもたまっている。
ガースの意志に関係なく、男の物が大きくなるのを感じていた。
「出発までに考えておきます」
ミズホは艶やかな色気のある笑顔で答えた。
ガースは広場にアクセスできそうな所に罠をはり、火を絶やさないように枯れ木を足して三人は眠りについた。
驚いたね。先客がいるとは……ガースは驚く。
ガースは冒険者としてパーティ-を追い出されたが、それは冒険者としての腕のせいではないと思っている。
冒険者としては長年過ごしてきた腕と勘を持ち合わせ、先駆者(パイオニア)としても上級の部類だと自負している。だからこそ、ほとんど情報の無い第十二階層まで降りて来られたのだ。
それなのに先にキャンプをしているものがいる。どうやら一人のようだ。
モンスターではなさそうだ。人だ。
ほかの先駆者(パイオニア)だろうか?
それにしても普通はガースのように荷物持ちや護衛などを連れ、最低でも二~三人で活動するはずだ。
ガースは獣人の娘クロフェを待たせ、暗闇に紛れながら気づかれないように注意して近づく。
「お客さんですか?」
涼しげな男の声が響く。
ほかに生き物の気配はない。明らかにガースに向けて放たれた言葉だ。
「招かれざれる客かね?」
ガースはあきらめて、男の見えるところまで出てきた。後ろ手に短剣を持ったまま。
「いえいえ、お待ちしていましたよ。一人では寂しかったですからね」
そう言って振り返った顔を見たガースは驚いた。
本当に男か? ガースがまず考えたことだ。
焚火に照らされたその姿は、長いサラサラの金色の髪をポニーテールにまとめ、二重のまぶたに涼しげな瞳は金色に輝き、スッと通った鼻、つややかな唇。女としか見えない。それもとびっきりの美女。
顔は小さく、座っていてもガースより一回り以上は長身ですらりとしているまるでモデルのような体形だ。
そんじょそこらの女に金を出すなら目の前の男に金を使った方がましだ。ガースはそう思ってしまった。
それと同時にこんな美女がいたら俺なんていくら金を積んでも相手にされないだろう。そうとも感じてしまう。
「座りませんか?」
声変わりする前の男の子のような甘い声でガースに話しかける。
ガースは注意深く男を観察する。
男は火の前に座り、マントの下には皮の軽装の胸当てをつけている。脇には黒い反りのついた鞘に収まった刀を置き、焚火で湯を沸かしていた。
かすかに湿り気の有る涼しい風の中、焚き木がパチンと跳ねる。
「あんた、一人か? ここで何をしている? そして男か?」
「男ですよ……よく言われますが。そして一人ですよ。だからここで人を待っているのです。あなたも一人ですか?」
仲間とはぐれたのか、死んだかで一人では戻れなくなって救援を待っているのか。冒険者にはよくあることだ。
曲りなりにも第十二階層まで来た冒険者だ、戦力にはなるだろう。最悪は囮にすればいい。
ガースは男を値踏みする。
「いや、荷物持ちがいる。あんた一人ならここから出るまで手を組むかい?」
「……そうですね。あなたが私の探している人ならずっとついていきますが……」
ガースは男の言葉に引っかかるものを感じたが、とりあえず猫の獣人を呼ぶことにした。
「あんた、名前は?」
ガースは娘が来る間に男に質問をする。
「ミズホと言います。そちらは?」
「ガースだ。よろしくな」
自己紹介をしている間に大きなリュックを背負った獣人は走って二人のもとに来た。
「あたしはクロフェと言います」
「てめえの名前なんて誰も聞いてないんだよ! バカヤロウ! そんな暇があったらさっさと飯の用意をしろ」
そう言ってガースはクロフェを殴りつけると、フードが外れるほどの勢いで倒れる。
「その耳は……」
「ああ、こいつは獣人だよ。力が強いだけでさっぱり役に立たねえ。もしかしてあんた獣人見るのは初めてかい?」
クロフェは左の頬を赤くしながら、大きなリュックの中から食材や鍋を出し、食事の準備をする。
「ええ、私はつい一年ほど前までずっと山にいたもので、あまり下界の事はわからないのですよ」
ミズホは首を少し傾げた拍子に前髪をさらりと落とし、天使のような笑顔でガースに応えた。
ガースはそのあまりの美しさにもしかしたら騙されてるのではないかと疑った。
「そうかい。ちなみにあんたはこの奥はどこまで行ったんだ?」
ガースは探るような眼でミズホを見る。
「私ですか? この下の階層で待ってたんですが、誰も来られなかったので、ここまで上がってきたのです」
「……つまりは第十三階層まで行ったのか!?」
ガースは驚いた。この第十二階層は挑んだものは少ない。そのため未知の部分が多く、地図などの情報が高値で売れる可能性がある。そしてガースの知る限り、第十三階層へ行ったという者を聞いたことがなかった。男の言葉が本当であれば、ガースにとって労せず、金になる情報が引き出せる。
「なあ、ミズホさんよ。この下の階層に行くまでの道は覚えているか? よければ俺にその道を教えてくれないか?」
ミズホはガースの言葉の意味が分からないのかきょとんとしている。
「お礼はする。俺は先駆者(パイオニア)なんだ。俺の地図一つで他の冒険者たちが安全にこのダンジョンを攻略できるんだ。みんなのために一つ助けちゃくれないか?」
ガースはヘルメットを脱ぎ、そのスキンヘッドを下げてお願いする。
「いいですよ。私が分かる範囲であれば……」
ガースのいかつい顔がほころぶ。
「ありがてえ、ちょっと待ってくれよ」
ガースは荷物入れから書きかけの地図を出し、今いる部屋までの地図を書き足した。
それから、ミズホの話を聞き、地図に書き加える。
「ご主人様、食事ができました」
クロエが声をかけるころには、ミズホの情報をほとんど書き写したところだった。
「これは助かる。兄ちゃん、結構この辺りを回ったんだな。よく無事だったな。さあ、兄ちゃんも食いな」
そう言って野菜と肉を煮込んだスープがなみなみと入った器を差しだす。
ミズホは黙ってそれを受け取ると、ガースに言った。
「ありがたいですが、私は小食なのでこの量はちょっと多いですね。この半分でけっこうです。もったいないので減らしていただけますか?」
「あ、そうかい。しっかり食わないからそんな細身なんだよ。冒険者ならしっかり食べなきゃ」
そう言いながらも、鍋にスープを戻す。
二人が食事を済ませた後、鍋に残った少量のスープをクロフェは必死に集めて食べていた。食べられただけましとは言え、いつもよりもかなり量が少なく、空腹を押さえられない様子だった。
「兄ちゃんのおかげで、俺の仕事もはかどったし、ここでひと眠りしたら地上に戻ろうかと思ってるんだが、兄ちゃんはどうする」
ガースは思いがけず仕事がはかどった上に、満腹になり上機嫌でミズホに話しかける。
「そうですね……」
美形だと一目見た時から思ったが、焚火の明りに光る横顔をじっと見ていると何とも言えない色気を感じる。男に興味のないガースだったが、ダンジョンに入ってもう、一週間近くになる。男として溜まるものもたまっている。
ガースの意志に関係なく、男の物が大きくなるのを感じていた。
「出発までに考えておきます」
ミズホは艶やかな色気のある笑顔で答えた。
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