僕とコウ

三原みぱぱ

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化粧と女の秘密

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 晴れ男もしくは晴れ女がいる。
 前の日までは雨予報だったのに、当日は晴れて暑くなりそうな天気だった。
 こんな日はビールが美味そうだ。
 今日は十五分前に待ち合わせ場所に到着した。さすがの田所もまだ来ていなかった。
 なんか今日は勝利の美酒が飲めそうだ。
 しかし待っている時間というのは異様に長く感じる上に待ち合わせ場所や時間を間違えたのではないかと不安にかられる。
 その不安を押し殺しているとコウがやってきた。
 ダメージジーンズにTシャツ、ネックレスがちらりと見えている。金髪はいつに何か赤く染め直されていた。

「おはよう、たっくんひとり?」
「ああ、まだ誰も来てない。珍しく田所もまだなんだ」

 スリムジーンズにTシャツと半袖シャツといういつものスタイルの僕が答えた。

「電話してみるか?」
「まあ、慌てる必要もないからもう少し待って見ようか」

 まあそうだなとコウは携帯をしまう。

「あの後、どうだった?」
「あの後ってなんだよ」
「花火大会の後、唯ちゃんと二人っきりにしてやっただろう」

 コウは僕の回答を期待している。

「二人っきりにしてやったって、お前が袴田さんと二人っきりになりたかっただけだろう。こっちは何にもないよ。そっちはうまくやったんだろう?」
「明日、仕事が早いからってそのまま帰っちゃったよ。なんだ、つまんねえな」
「だから俺たちに変な期待をするなよ。手っ取り早いところで恋愛話を作ろうとするな」

「おまたせしました」
「珍しく遅かったな。どうした?」

 田所の声に僕たちは振り向くと袴田さんと……。

「た、田所……か?」
「変ですか?」

 いつものストレートショートでは無くゆるやかパーマをかけ、黒髪からライトブラウンに変わっていた。
 目元もいつもよりぱっちりして全体におしゃれな明るい感じだ。

「プロが化粧するってこう言うことなんですね」
「あら、そんなにいじってないわよ。唯ちゃんは元が良いから」
「それで、どうですか?」

 顔が近いよ。

「綺麗になったよ。大人っぽくなった」
「本当ですか? よかった~」

 僕の感想に緊張が解けたようだ。

「袴田さんに感謝だな」
「はい!」

 上機嫌な田所を先頭に僕たちはバーベキュー場へ向かう。

「なあ、女ってあんなに印象が変わるもんだな」
「何百年前から女は綺麗になるための知識を受け継いでいってるんだ。それりゃあ俺たち男が太刀打ちできないよ」
「そりゃあそうか。怖いね~」

 バーベキューでは僕に役目は買い出しと後かたづけとなった。つまり料理には手を出すなと。
 みんな大いに食べて、飲んだ。
 袴田さんが化粧直しに行ったあと、僕も二人を残してトイレに行くと結構並んでいる。
 ほかにトイレがないかと案内板を探していると喫煙所にいる袴田さんを見つけた。
 煙草を吸うんだな、と思った瞬間、目が合った。
 袴田さんは慌てて煙草を消すと僕に近づいて来た。

「見つかっちゃわね」
「タバコ吸われるんですね」
「たまにね。お酒を飲んだ後とかにちょっとだけ。コウには黙ってくれない。あの子の前で吸った所見せたことがないのよ」
「それは別に構いません。と言うか僕が話すことでもないですしね」
「女の秘密を黙っていてくれるっていい男の条件よ」

 そう言って袴田さんは戻っていった。
 僕は別のトイレを探すのをあきらめて素直に行列に並んだ。
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