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第二章
第50話 駆け出し冒険者は報奨金を渡される
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「うん、この少し垂れ気味の尻はエルシーで間違いないな」
「サクヤ!! お尻で人を判別するのは止めなさい!」
エルシーはマリアーヌのお尻を守りながら、短い黒い髪の下には切れ長の色気のある垂れ目の超絶イケメンに向かって叫んだ。
「よう、元気そうだな」
「ええ、おかげさまで。サクヤも元気そうね……って、そうじゃなくて勝手にお尻を触るんじゃないって言ってるのよ」
「そうですわ。いくら王子様でも、お姉様は渡しませんわ!」
エルシーとマリアーヌの抗議の声に、勇者パーティの盗賊職であるサクヤは髪をかき上げてキメ顔で言った。
「ノーヒップ、ノーライフ!」
「だから! あんた、それを言ったら許されると思わないで!」
そう言ってエルシーはサクヤの頭を叩こうとするが、エルシーの手が頭に触れる瞬間に、サクヤの姿は消えた。
サクヤの二つ名は「蜃気楼の暗殺者」。目の前にいたと見えて、すでにそこにいない。神出鬼没の盗賊職。
「スティーブン!」
「はい、お嬢様」
消えたサクヤをスティーブンが追う。
さすがは元近衛騎士団長であるスティーブンはエルシーもマリアーヌも追い切らないサクヤを完全ではないにしても追う。
「ちょっと、マリーちゃん。待って、サクヤは追うと延々と逃げるちゃうから、話が出来ないわ」
「スティーブン、待って」
「はい、お嬢様」
マリアーヌの言葉にスティーブンはサクヤを追うのを止めて、マリアーヌの元に戻ってきた。
「スティーブンさん、よくサクヤを追いかけられますね」
「ええ、彼の消える原理はその体術にありますから」
サクヤの消える原理。それはその特殊な体術にある。通常、右に動く予備動作をしながら左へ行ったり。前に動く予備動作を見せながら右に動いたりする。その動きがなめらかで、なおかつ素早いため。消えるように見えるのだった。それを元騎士団長のスティーブンは見抜いていたのだった。
「それで、何の用なのよ。サクヤ」
しかし、一度消えてしまったサクヤを見つけることはエルシーには難しい。
エルシーは当てずっぽうでサクヤに呼びかけると、三人の死角から声がした。
「おお、そうだった。忘れるところだった。これを旦那から預かってたんだ」
そう言って大きな革袋を一つ、エルシーに渡した。そのずっしりと重い革袋を受け取ったエルシーは驚いて尋ねた。
「何これ?」
「今回の件で、領主から報奨金が出たんだよ。その分け前だよ」
「え! 受け取れない!」
エルシーはサクヤの言葉に、慌てて革袋をサクヤに突き返そうとするが、すでにそこにはサクヤはいなかった。
「おいおい、受け取ってくれないとオレが旦那に怒られるんだよ。なんで受け取らないんだ?」
「そうですわ、お姉様。なぜ、受け取らないんですか? お父様は今回の件で皆さんの活躍に報いたいと言っておりました。それがこの報奨金ですわ」」
サクヤと同時にマリアーヌもエルシーの行動に驚きを隠せなかった。
それに対してエルシーは首を横に振った。
「だめよ、あれは街の冒険者みんなで解決した事だし。だいたい……」
「他の冒険者にも報奨金は分け与えてるよ。それに、だいたいって何だよ。お前は孤児院の為に金がいるんだろう」
サクヤは素直に受け取らないエルシーに、少しいらだちを感じていた。
「だって、あの事件でダンジョン入口の扉が壊れてたから、アンデッドの進行が早くなったって聞いたのよ」
「それがどうした?」
サクヤは不思議そうに頭をかしげていた。それに反してマリアーヌはなにかハッとした顔をしていた。
「アレを壊したのって、わたしたちなのよ」
「そうでしたわ! あのポチが体当たりをして壊してしまったのでしたわ」
「そうなのよ。だからあの事件の被害を大きくした一因は、私達にもあるのよ」
エルシーとマリアーヌの言葉を聞いた、サクヤはうんうんと頷くと、口を開いた。
「サクヤ!! お尻で人を判別するのは止めなさい!」
エルシーはマリアーヌのお尻を守りながら、短い黒い髪の下には切れ長の色気のある垂れ目の超絶イケメンに向かって叫んだ。
「よう、元気そうだな」
「ええ、おかげさまで。サクヤも元気そうね……って、そうじゃなくて勝手にお尻を触るんじゃないって言ってるのよ」
「そうですわ。いくら王子様でも、お姉様は渡しませんわ!」
エルシーとマリアーヌの抗議の声に、勇者パーティの盗賊職であるサクヤは髪をかき上げてキメ顔で言った。
「ノーヒップ、ノーライフ!」
「だから! あんた、それを言ったら許されると思わないで!」
そう言ってエルシーはサクヤの頭を叩こうとするが、エルシーの手が頭に触れる瞬間に、サクヤの姿は消えた。
サクヤの二つ名は「蜃気楼の暗殺者」。目の前にいたと見えて、すでにそこにいない。神出鬼没の盗賊職。
「スティーブン!」
「はい、お嬢様」
消えたサクヤをスティーブンが追う。
さすがは元近衛騎士団長であるスティーブンはエルシーもマリアーヌも追い切らないサクヤを完全ではないにしても追う。
「ちょっと、マリーちゃん。待って、サクヤは追うと延々と逃げるちゃうから、話が出来ないわ」
「スティーブン、待って」
「はい、お嬢様」
マリアーヌの言葉にスティーブンはサクヤを追うのを止めて、マリアーヌの元に戻ってきた。
「スティーブンさん、よくサクヤを追いかけられますね」
「ええ、彼の消える原理はその体術にありますから」
サクヤの消える原理。それはその特殊な体術にある。通常、右に動く予備動作をしながら左へ行ったり。前に動く予備動作を見せながら右に動いたりする。その動きがなめらかで、なおかつ素早いため。消えるように見えるのだった。それを元騎士団長のスティーブンは見抜いていたのだった。
「それで、何の用なのよ。サクヤ」
しかし、一度消えてしまったサクヤを見つけることはエルシーには難しい。
エルシーは当てずっぽうでサクヤに呼びかけると、三人の死角から声がした。
「おお、そうだった。忘れるところだった。これを旦那から預かってたんだ」
そう言って大きな革袋を一つ、エルシーに渡した。そのずっしりと重い革袋を受け取ったエルシーは驚いて尋ねた。
「何これ?」
「今回の件で、領主から報奨金が出たんだよ。その分け前だよ」
「え! 受け取れない!」
エルシーはサクヤの言葉に、慌てて革袋をサクヤに突き返そうとするが、すでにそこにはサクヤはいなかった。
「おいおい、受け取ってくれないとオレが旦那に怒られるんだよ。なんで受け取らないんだ?」
「そうですわ、お姉様。なぜ、受け取らないんですか? お父様は今回の件で皆さんの活躍に報いたいと言っておりました。それがこの報奨金ですわ」」
サクヤと同時にマリアーヌもエルシーの行動に驚きを隠せなかった。
それに対してエルシーは首を横に振った。
「だめよ、あれは街の冒険者みんなで解決した事だし。だいたい……」
「他の冒険者にも報奨金は分け与えてるよ。それに、だいたいって何だよ。お前は孤児院の為に金がいるんだろう」
サクヤは素直に受け取らないエルシーに、少しいらだちを感じていた。
「だって、あの事件でダンジョン入口の扉が壊れてたから、アンデッドの進行が早くなったって聞いたのよ」
「それがどうした?」
サクヤは不思議そうに頭をかしげていた。それに反してマリアーヌはなにかハッとした顔をしていた。
「アレを壊したのって、わたしたちなのよ」
「そうでしたわ! あのポチが体当たりをして壊してしまったのでしたわ」
「そうなのよ。だからあの事件の被害を大きくした一因は、私達にもあるのよ」
エルシーとマリアーヌの言葉を聞いた、サクヤはうんうんと頷くと、口を開いた。
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