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第二章
第89話 駆け出し冒険者は山の主の背に乗る
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「分かったわ。じゃあ、トリ君とオルちゃん、それに……」
エルシーはマリアーヌを見た。マリアーヌも黙って頷いた。
「マリーちゃん。お願い」
「お嬢様が行くなら、私も行きます」
スティーブンが立候補した。怪我はないとは言え、疲れが出ている。それに……
「スティーブンさんまで乗ると、いくら山の主でも動きが遅くなるの。だから開錠の魔具を持っているオルちゃんは必須。後は体重の軽い二人にお願いします」
山の主から、子供が檻に入れられていると聞いていた。ならば、鍵を開けられる人間が必要になる。そして、今回はスピード勝負。
そのエルシーの考えにスティーブンは賛同していた。賛同しているのだが、スティーブンは嫌な予感がした。
今回の作戦でマリアーヌと分かれたときに感じなかった嫌な予感。
しかし、選択の余地はなかった。
こうして、トリステン兄妹とマリアーヌの三人は巨大な銀狼の背中にしがみついた瞬間、一陣の風とともに、狼の姿は消えてしまった。
「お嬢様、どうかご無事で」
~*~*~
「あんた、なにあっさり捕まってるのよ」
「申し訳ないでゲス。てっきりあの二人が見当たらなかったので、死んだと思っていたでゲス。油断したでゲス」
ボヤクーはうつ伏せのまま、ドロンジョに言い訳をしていた。でかい腹が邪魔をしてなかなかロープが外れなかった。
ドロンジョもナイフを使ってロープを切ろうとするのだが、そもそもドロンジョは非力な上、ロープが締まって苦しいためボヤクーが動いてしまって、なかなかうまくいかない。
「トンズも手伝ってよ」
「……」
「そうだったわね。ネクロマンサーは私以上に非力だもんね。あ~しかし、あのクソガキ。きつく締めやがってクソむかつく」
「姐御、あいつを知ってるでゲスか?」
「知ってるも何も、この間の仕事が失敗したのはあいつらが邪魔したからよ。特にあのガキの妹。あのガキがいなければ、バードナなんかにやられなかったわよ」
「……」
「そうよね。トンズもせっかくの手駒を、あのガキに倒されたんですものね。あいつらが関わっていたのを知っていたら、私たちもはじめから手助けをしたのに」
「そうだったんでゲスね」
「そうよ。ああ、腹いせにあの村を焼き払ってやろかしら。一マルにもならないけれど」
そう言ってドロンジョは苦々しい表情をしていた。ドロンジョは金のためなら何でもする。しかし、逆に言えば金にならないことには、興味が無い。唯一、金に関係なく活動するのは、この二人の仲間達のためだけだった。
「ふー、やっと切れた。さあ、あの狼の巣に戻りましょう。テイマーに失敗したのなら、あの子狼をどこかに売り飛ばして、こんな田舎から離れましょう」
エルシーはマリアーヌを見た。マリアーヌも黙って頷いた。
「マリーちゃん。お願い」
「お嬢様が行くなら、私も行きます」
スティーブンが立候補した。怪我はないとは言え、疲れが出ている。それに……
「スティーブンさんまで乗ると、いくら山の主でも動きが遅くなるの。だから開錠の魔具を持っているオルちゃんは必須。後は体重の軽い二人にお願いします」
山の主から、子供が檻に入れられていると聞いていた。ならば、鍵を開けられる人間が必要になる。そして、今回はスピード勝負。
そのエルシーの考えにスティーブンは賛同していた。賛同しているのだが、スティーブンは嫌な予感がした。
今回の作戦でマリアーヌと分かれたときに感じなかった嫌な予感。
しかし、選択の余地はなかった。
こうして、トリステン兄妹とマリアーヌの三人は巨大な銀狼の背中にしがみついた瞬間、一陣の風とともに、狼の姿は消えてしまった。
「お嬢様、どうかご無事で」
~*~*~
「あんた、なにあっさり捕まってるのよ」
「申し訳ないでゲス。てっきりあの二人が見当たらなかったので、死んだと思っていたでゲス。油断したでゲス」
ボヤクーはうつ伏せのまま、ドロンジョに言い訳をしていた。でかい腹が邪魔をしてなかなかロープが外れなかった。
ドロンジョもナイフを使ってロープを切ろうとするのだが、そもそもドロンジョは非力な上、ロープが締まって苦しいためボヤクーが動いてしまって、なかなかうまくいかない。
「トンズも手伝ってよ」
「……」
「そうだったわね。ネクロマンサーは私以上に非力だもんね。あ~しかし、あのクソガキ。きつく締めやがってクソむかつく」
「姐御、あいつを知ってるでゲスか?」
「知ってるも何も、この間の仕事が失敗したのはあいつらが邪魔したからよ。特にあのガキの妹。あのガキがいなければ、バードナなんかにやられなかったわよ」
「……」
「そうよね。トンズもせっかくの手駒を、あのガキに倒されたんですものね。あいつらが関わっていたのを知っていたら、私たちもはじめから手助けをしたのに」
「そうだったんでゲスね」
「そうよ。ああ、腹いせにあの村を焼き払ってやろかしら。一マルにもならないけれど」
そう言ってドロンジョは苦々しい表情をしていた。ドロンジョは金のためなら何でもする。しかし、逆に言えば金にならないことには、興味が無い。唯一、金に関係なく活動するのは、この二人の仲間達のためだけだった。
「ふー、やっと切れた。さあ、あの狼の巣に戻りましょう。テイマーに失敗したのなら、あの子狼をどこかに売り飛ばして、こんな田舎から離れましょう」
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