なぜかモテない最強冒険者は訳あり美女を救う ～イケメン弟子たち、俺がモテないのはお前達のせいじゃないよな？～

第３４話 魔法の絨毯

「フリート殿、あの秘宝がなくて、火山はどれくらいもちますか？」

　アマンダが秘宝を持って行ってしまったあと、ガドランドはフリートに質問をする。
　フリートは秘宝が制御システムの核だと言っていた。つまり、その核がなくなってしまえば、フリート火山が噴火するかもしれない。すぐに噴火も起こらないだろうが、問題は時間だ。

「ちょうどマグマの動きが活発な時期じゃ。どれでも明日の朝くらいまでは、どうにか持たせる。しかし、その先は儂にもわからん」
「分かりました。それでは明日の朝までに取り戻してきます」
「ほう、アテはあるのか？　空を飛んでいった、あの小娘を追えるアテは」
「いえ、ダンジョンから戻ろうと思っています」
「それじゃあ、間に合わんじゃろうて。ほら、これを貸してやろう」

　赤毛の老人は、アマンダが外に出たドアの前に引いてある絨毯を指さした。
　大人が六人は乗れそうな大きさ。緑の下地に周りを金色の糸で何やら刺繍が施されていた。

「お前さん、魔法使いじゃろう。魔力を注ぎ込めば空を飛べる。魔法の絨毯じゃ」

　フリートはロレンツに絨毯の使い方を簡単に教え始めた。
　ロレンツは魔力を通して、絨毯が浮き上がると、ルカは怪しそうに上から手で押す。沈むことなくその手を支え、ルカが飛び乗ってもピクリともしなかった。

「これはスゴイや。ロッさん。うちにもこれひとつ欲しいな」
「アホか、ルカ。空飛ぶ絨毯なんて伝説級の魔具だ。俺も初めて見たわ」

　ロレンツもおとぎ話でしか聞いたことがない、珍しい魔具に興奮を隠せない。

「それじゃあ、じいさん、借りていくな」
「お前さんは今度来るときには、少し年長者に対する口の利き方を覚えてくるんじゃな。それじゃあ、頼んだぞ」

　フリートの言葉を背に、五人が乗った絨毯は、ロック鳥に乗ったアマンダを追いかけた。
　遠くに、赤い太陽が地平線の向こうに沈みつつある空を駆ける。太陽の光は消えかかり、空に大きな美しい満月が浮かんでいた。眼下には深緑の森はが広がり、その先にガドランド達が住んでいる街が見えた。

「コツは掴んだぜ。飛ばすから、落とされるなよ！」

　四人は振り落とされないように、絨毯の端を掴むと、魔法の絨毯は風を切って街へと飛んでいった。
　そして、空に消える五人を見送ったイ・フリートは呟いた。

「しかし、おかしい奴だったのう。人間のクセに、自分の体を壊しかねん魔力量を生成しとるとは。一度、分解してみたいのう。ふぁははは」