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逃げ出した悪役令嬢
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「いやぁぁぁー!悪役令嬢になってるぅぅ~!!」
朝起きたら、何故か前世の記憶が頭の中に流れ込んできた。
自分の前の名前と、乙女ゲームの記憶だけ。どんな風に生きたかとか、全く記憶にない。
「えっ、なんでピンポイントにゲームだけ…可哀想な私に神様が同情でもしてくれたのかな。死ぬなよって感じで」
よくわかんないけど、死んじゃう可能性がある人生なんてお断りだ。貧乏でもなんでも生きてりゃいいんだよ、悪役令嬢とか居ない方がサラッとくっつけてヒロインも嬉しいよね、逃げちゃうことにしよ。
「そうと決めたら手っ取り早く没落だ!幸い親は悪徳貴族!!」
婚約者の王子様との初顔合わせで、子供だからわかりませ~んなフリして色々暴露したら一気に我が家は取り潰された。そのままなにもわかってない子供だからってことで修道院に入れられた。
「よっし、やった!」
なにもわからないフリしてた子供は、そのまま迷ったフリして修道院からも逃げ出した。
ディアナ・ノード伯爵令嬢は、こうして貴族社会から消えたのだった。
***
あれから、早8年––––––。
「ディー、そっち行った!」
「おっけぇいくぜっ!おりゃーー!!」
16歳になった私は、隣国で逞しく冒険者として生きている。悪役とはいえさすが主要人物、高スペックなおかげで訓練すればするほど強くなっちゃって、こないだ調子乗って魔王倒しちゃった。
「おー、いつもながらお見事。さすが勇者様」
数年前から組むようになったダートが魔物を解体しながら言ってくる。
「勇者様言うな、マジ最悪だよ魔王なんか放置しときゃ良かった」
「金と名誉がついてくるのに?なんで爵位断ってんの」
だって見聞とか人脈のために学園行けって言うんだもん。貴族に戻ってうっかり悪役おしつけられたらどうするんだ。
「貴族だいっっキライだからなりたくねぇ」
「それはオレに対する嫌味か」
「あんた貴族ぽくないから別にきらいじゃないよ、変わり者の冒険者くん」
お遊びでやってるやつならいっぱい居るけど、私についてこれるのは他にいない。
「嫌いな貴族みたくなんなきゃいーじゃん、爵位だけもらえば」
「あぁん?私みたいに美しくて魅力的な女が下っ端貴族になっちゃったら上位のヤツらに求婚されてめんどくさいことになるっしょ、今ならそんなんなっても国出りゃいいだけだし」
来週にはこの国も出てくつもりだし。組むの楽だからダートが貴族じゃなけりゃ連れて出ていくんだけど。
「すっげぇ自信…」
ヒロインの対抗馬として争う悪役令嬢様だ、清楚可憐に対して妖艶美麗な私はひっきりなしに声を掛けられる。
「あんた口説いてこないから組んでも楽でいいわ~」
「いや、オレお前好きだって何回も言ってるけど」
「言うだけで行動ないから」
「ヘタレってこと?でもお前押したらそんまま逃げるだろーしなぁ」
その通り。冒険者ってどの国行っても共通ランクで有難いよね。
「あんたのその押しの弱さと詮索しないとこは好きよ♡」
「うっわ、悪い女ぁ……詮索しないんじゃなくて大体わかってるから聞かないのよ?」
「えっ」
「口の悪さで隠せない所作とその美貌で孤児でーすつって鵜呑みにするかよ」
マジかぁ…うまく隠せてたつもりだったのに。
「お前が最近様子おかしいのも気付いてた。消える前にどうにかしたかった」
「ダート、お前との縁もここまでだな」
色々整理して来週には出てくつもりだったけど、明日にしよ。もっとガサツ強調するには…うーん、髪切るかな?
「切るのはえぇって!わかってて今まで言わなかったのお前にどっか行って欲しくないからだろー?!なんでそんなすぐ捨てんだよ!」
いやだって、なんかの強制力でいつ悪役令嬢化するかわかんないじゃん。勇者ディーへの召集だけどこわいもんはこわい。
「なぁー、何がそんなにいやなの?学園とか将来考えたら行く一択じゃん。知らねぇと協力もできねぇじゃん?オレにも教えてくれよ」
来るかわかんない将来のために悪役令嬢なんて本末転倒だ。
「詮索する男はキライ」
「うっ…おっ前それ言えば何とかなると思うなよ!嫌われるより会えなくなる方がもっと嫌だ!……嫌っていいから協力させてよ」
頭おかしいって思われるのがオチじゃん。
朝起きたら、何故か前世の記憶が頭の中に流れ込んできた。
自分の前の名前と、乙女ゲームの記憶だけ。どんな風に生きたかとか、全く記憶にない。
「えっ、なんでピンポイントにゲームだけ…可哀想な私に神様が同情でもしてくれたのかな。死ぬなよって感じで」
よくわかんないけど、死んじゃう可能性がある人生なんてお断りだ。貧乏でもなんでも生きてりゃいいんだよ、悪役令嬢とか居ない方がサラッとくっつけてヒロインも嬉しいよね、逃げちゃうことにしよ。
「そうと決めたら手っ取り早く没落だ!幸い親は悪徳貴族!!」
婚約者の王子様との初顔合わせで、子供だからわかりませ~んなフリして色々暴露したら一気に我が家は取り潰された。そのままなにもわかってない子供だからってことで修道院に入れられた。
「よっし、やった!」
なにもわからないフリしてた子供は、そのまま迷ったフリして修道院からも逃げ出した。
ディアナ・ノード伯爵令嬢は、こうして貴族社会から消えたのだった。
***
あれから、早8年––––––。
「ディー、そっち行った!」
「おっけぇいくぜっ!おりゃーー!!」
16歳になった私は、隣国で逞しく冒険者として生きている。悪役とはいえさすが主要人物、高スペックなおかげで訓練すればするほど強くなっちゃって、こないだ調子乗って魔王倒しちゃった。
「おー、いつもながらお見事。さすが勇者様」
数年前から組むようになったダートが魔物を解体しながら言ってくる。
「勇者様言うな、マジ最悪だよ魔王なんか放置しときゃ良かった」
「金と名誉がついてくるのに?なんで爵位断ってんの」
だって見聞とか人脈のために学園行けって言うんだもん。貴族に戻ってうっかり悪役おしつけられたらどうするんだ。
「貴族だいっっキライだからなりたくねぇ」
「それはオレに対する嫌味か」
「あんた貴族ぽくないから別にきらいじゃないよ、変わり者の冒険者くん」
お遊びでやってるやつならいっぱい居るけど、私についてこれるのは他にいない。
「嫌いな貴族みたくなんなきゃいーじゃん、爵位だけもらえば」
「あぁん?私みたいに美しくて魅力的な女が下っ端貴族になっちゃったら上位のヤツらに求婚されてめんどくさいことになるっしょ、今ならそんなんなっても国出りゃいいだけだし」
来週にはこの国も出てくつもりだし。組むの楽だからダートが貴族じゃなけりゃ連れて出ていくんだけど。
「すっげぇ自信…」
ヒロインの対抗馬として争う悪役令嬢様だ、清楚可憐に対して妖艶美麗な私はひっきりなしに声を掛けられる。
「あんた口説いてこないから組んでも楽でいいわ~」
「いや、オレお前好きだって何回も言ってるけど」
「言うだけで行動ないから」
「ヘタレってこと?でもお前押したらそんまま逃げるだろーしなぁ」
その通り。冒険者ってどの国行っても共通ランクで有難いよね。
「あんたのその押しの弱さと詮索しないとこは好きよ♡」
「うっわ、悪い女ぁ……詮索しないんじゃなくて大体わかってるから聞かないのよ?」
「えっ」
「口の悪さで隠せない所作とその美貌で孤児でーすつって鵜呑みにするかよ」
マジかぁ…うまく隠せてたつもりだったのに。
「お前が最近様子おかしいのも気付いてた。消える前にどうにかしたかった」
「ダート、お前との縁もここまでだな」
色々整理して来週には出てくつもりだったけど、明日にしよ。もっとガサツ強調するには…うーん、髪切るかな?
「切るのはえぇって!わかってて今まで言わなかったのお前にどっか行って欲しくないからだろー?!なんでそんなすぐ捨てんだよ!」
いやだって、なんかの強制力でいつ悪役令嬢化するかわかんないじゃん。勇者ディーへの召集だけどこわいもんはこわい。
「なぁー、何がそんなにいやなの?学園とか将来考えたら行く一択じゃん。知らねぇと協力もできねぇじゃん?オレにも教えてくれよ」
来るかわかんない将来のために悪役令嬢なんて本末転倒だ。
「詮索する男はキライ」
「うっ…おっ前それ言えば何とかなると思うなよ!嫌われるより会えなくなる方がもっと嫌だ!……嫌っていいから協力させてよ」
頭おかしいって思われるのがオチじゃん。
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