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戻ってきた元悪役令嬢
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しおりを挟む「スカート初めて見た、イイねかわいい」
朝食後、制服に着替えて降りてったらはしゃぐダートに褒め倒された。
「ダートは…うん、想像通りね」
「オレふつーだからな」
並んで手を繋いで、会話しながら歩く。登校時間の筈なのに、学園が近づいてきても誰も居ない。
「8割寮で、他は馬車じゃん?広い道通ってくんだろ。この道は休日以外あんま人通りないんじゃねーかな」
「思ってたより寮に住んでる人多いね」
「外は王族と高位貴族くらいじゃん」
「ふぅん、ダート前はどうだったの?」
「寮。一週間くらいで出たけど」
短い。ほんとにすぐ休学したんだ。
学園について、職員室で挨拶をしたらそのまま教室に連れてかれた。
生徒はもうみんな席に座っていて、入ってきた私達に視線が集中する。先生が軽く説明をしてから挨拶を促された。
「アルラ皇国、ナルサス公爵家のダートルドです」
「同じくアルラ皇国勇者伯ディーです、よろしくお願いします」
教室内の視線がほぼ私に向けられてる、勇者伯なんてわけわかんないヤツ凄い勢いで拡散されたみたいだから、みんな知ってるんだろうな。思ってたより好意的な視線が多い。
歩き出したらダートが手を繋いでこようとしたから、こんなとこで何してんだと思って避けて、案内された席につく。当然隣はダートで、横は壁。作為を感じる。
「二人にはいきなりで大変でしょうが、来月は学年合同で宿泊学習があります。どこかの班に入れてもらってください…えーと、人数が少ないのは」
「それって冒険者監督で一泊するやつですよね。オレとディーには不要です」
先生の言葉ぶっちぎったけど、おいコラダート。
「ご存知でしょうがオレ達は高位の冒険者です、参加する意義がありません。どうしてもと言うなら二人で組む」
「いえ、えーと、自然生活を通してクラスメイトと親睦を深めるためのものでして」
「大丈夫です、ちゃんと班に入って参加します」
「ディー」
「ダート、何好き勝手しよーとしてんの」
「オレ以外いらねーだろって言––––ってえぇ!痛いディー!」
イライラ喋るダートに苛立ってぶん殴った。まわりの目がいたい。
あーあ、ダートのせいで初日から恐れられるじゃん。
「先生、班は任せるのでどこかの班に混ぜてください。ちょっとコイツ大人しくさせてから戻るんで」
頭掴んだまま家に転移した。1時間で戻ってくるなんてなんてことだ。
「ダートぉ?初日から何やらかそうとしてんの」
「目ぇ光らせてるだけじゃん!」
「意味わかんない。楽しく過ごして友人作ろって話したじゃん、みんなでお泊まりとか目的ぴったり」
「ディアナには楽しい学園生活を送ってほしいけど、オレから離れてくのは嫌だ」
お腹に顔を埋めてグズグズ言ってるけど、なんでそんな発想になるんだ。
「ねぇ、ダートいなかったら私学園来てないんだけど」
「うん、オレがゴリ押したから」
「あんた居るから学園楽しそうだなって決めたんだけど」
「……」
「何がそんなぐだぐだ言うほど気に食わないの」
普段こんなわけわかんない事言うヤツじゃないのになんなんだ。
「……手ぇ繋いでくんなかった」
「え、そこ?」
「オレが恋人だってバレたくねぇ?そのうち他の男探す?」
えー、ちょっと手を繋がなかっただけでこんな面倒なことになったの?また鼻水の音聞こえるんだけど。
「学園って勉強とかするとこじゃないっけ」
「学生の醍醐味って恋愛だろ。みんな盛ってんだから」
偏見じゃないか?それ。
「恋人でーすって言えばそのわけわかんない駄々辞めるの?」
「言わなくてもいーけど、離れてかないで。捨てないで」
似たような台詞ついこの間聞いたな。またしてもキュンとなったけど、こんなのにそんなの思う私も大概変だな。
ため息をついて、お腹に巻きつくでっかい男の頭を撫でる。
撫でてたらだんだん鼻をすする音が聞こえなくなって、目を真っ赤にしたダートが顔を上げた。
「手を振り払ったのはごめん、普通に恥ずかしかった。教室じゃ嫌だけど休憩中に中庭とかなら問題ないよ」
ダートは無言で、また目に涙をためる。
「ねぇ、私そんなに薄情に見える?すぐダートを捨てそう?」
「見えねぇ……オレに自信がないだけ」
自信。
「わり、最近幸せ過ぎたからおかしくなってた」
ダートがへらっと力無く笑う。
これは…ダートが情緒不安定になったの私のせいなのか。
「ダートが好きよ」
深呼吸して、頑張って口にした。恥ずかしくて、意識してこういう台詞を言わなかった。ダートは疑う隙なんか全くない程口にしてたのに。
ダートは目を丸くして私を見る。
「は、恥ずかしくてあんまりしょっちゅうは言えないけど。でもちゃんとそういう目で見るのはダートだけだから」
「……夢みてぇ、なにこれ」
マジマジと見られるのが恥ずかしくて、巻きついてるダートの頭を隠すように抱いた。
胸元にダートの吐いた息が当たって、しまったこれもかなり恥ずかしい。恥ずかしいけど。
「あの、ディアナ。これやばい…離して」
恥ずかしい恥ずかしいばっかり言ってて何も伝わらないのって嫌だな。
「やばいって…おっぱいの感触がもろにくんだって。エロい気持ちになるからやめて」
「………ダートが信じらんないのは私の態度?」
これだけで夢とか言っちゃうほど駄目だった?
恥ずかしがってばっかりじゃそのうち愛想尽かされるのは私の方じゃないの?
「えと、お勉強、しようか?」
腕に力を入れて、顔見られないようにして言った。もうちょっとしたらちゃんと顔見て言うようにする、今はこれが精一杯。
「ディアナ」
巻きついたダートの腕にも力が入って、くぐもった声が聞こえる。
「嫌なこと言ったけど、オレ出来ればディアナの嫌なことなんもしたくねぇの」
「い、嫌じゃないんだって。恥ずかしいだけで」
「顔見たい」
覚悟を決めて腕を緩めて、ダートが同じ目線の位置まで顔を上げる。
頭の後ろを固定されて、いきなり噛み付くようなキスをされて、ごちゃごちゃ考えてたのがよくわからなくなってくる。
「ディアナ、好き。愛してる、ごめん」
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