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戻ってきた元悪役令嬢
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しおりを挟む「そうだね、大体流れは分かってるし。リアは大丈夫なの?眠いんじゃないの」
「少し眠ったらスッキリしたわ!明日からはちゃんと寝るし、ディーの方が優先よ」
「そっか、ありがと。じゃあダート頼んだ」
「任せろ。ディアナは構えないでのんびり過ごして」
「ねぇそのディアナって名前は知られたくないから普段言わないのよね?特別な感じがするし、私も誰も居ないところで呼んで良いかしら?」
「いいわけねぇだろ、これはオレだけ」
ダートにも許可出した記憶ないけどな。
「あーあ、ほんと独占欲強い男って嫌だわ~。ドンと構えてなさいよ」
「うるせぇほっとけ」
「口論いーから。あんたら二人で本当に話できんの?」
「出来る超出来る、紙に書いてもらうだけだし。はい紙とペン」
「なるほど…んじゃお風呂行ってくる」
「「行ってらっしゃーい」」
お風呂にお湯を入れてる間に転移して、リアの分のご飯を買ってきた。あとで寮に送り届けるにしても遅くなりそうだし。
ゆっくりお風呂に浸かってから、三人分のご飯を持ってリビングに向かった。
「どんな感じ?」
「んー、大体流れは分かった。もーいいぞ王女様、愛の巣から出て行ってくれ」
「こっちの都合に付き合わせといて駄目だよダート。リア、眠気大丈夫ならご飯食べない?そのあと寮まで送るよ」
二人に手渡して、そのまま自分の分を食べだす。
豪華でも何でもない普通のご飯だけど、夏休み前に散々下町で嬉しそうに食べてたからまぁいいだろう。
「ありがとうディー、いただきます。それにしても、こんなに急じゃなかったら外泊届けを出してから伺ったのに」
「誰が泊まらせるかよ、食ったら帰れ」
「まあ現実問題、この家客間とかないんだよね」
「ディーのお部屋にお泊まりするから問題ないわ♡」
「それはオレだけの特権だから無理だな」
リアとまたキャッキャしながらお泊り、楽しそう。あんな長い期間はきついけど、たまにならいいな。
「ディーは満更じゃないみたいだわ?」
「ディアナ、ベッドは駄目。オレだけ」
「え、でも」
「つかさ、散々エロいことやったベッドでコイツと寝るとかディアナ出来んの?」
想像してみた。鳥肌たった。
「……無理かな。リアごめんね」
「エロいことやってらっしゃるのね…うぅ、悔しい」
「ざまぁー」
「本当腹の立つ男!鬼みたいな見た目して女神を捕まえるだなんて、どうやって騙したのよ」
「騙してねぇよ泣き落としたんだよ」
「まぁ…あなた、プライドないのね…」
「てか泣き落とされてないし。私もう食べ終わったよ、ほら二人もサクサク口に入れなさい」
二人を急かしていると、玄関のチャイムが鳴った。
「お客様?」
「みたいだね、あんな音なんだ初めて聞いた。食べてていいよ見てくるから」
「待ってディアナ、食ったからオレも行く」
急いで口に食べ物を運ぶリアを置いてダートと玄関を開けると、現れたのはグランさんだった。
「あの、夜分遅くに申し訳ありません」
「うん別に…それはいいけど」
走ってきたのかな、汗いっぱいかいてる。
「リア?」
「っ、はい、倒れたと聞いて…ディー様が看病していると…ご無事ですか?!」
すごい焦った感じで前のめりに問い詰められた。
寝てただけだけど。抱えて転移したのを見た誰かから聞いたのかな?随分違う話がグランさんに届いてしまったみたい。
「すーげぇ元気。何お前そんだけ聞きに走ってきたの?」
「あ、は、はい…彼女に仕事をして貰いすぎたせいかと心配で」
「そうだね、ただの寝不足だけど理由はそれかな。だからこれから私ら放課後手伝うことにするよ。そんでグランさん、ちょーどいいしリア送ってあげてくれる?呼んでくるから」
私が送るつもりだったけど、リアもグランさんと一緒に帰れた方が嬉しいだろう。
リビングに戻ったらもうご馳走様をしていたので、グランさんがきたよって伝えて嬉しそうなリアを玄関に連れていく。
いつも通り元気で可愛いリアを見たグランさんは安堵の表情を浮かべて、とても優しい顔をしながらリアと一緒に帰っていった。
「……倒れたって聞いたらわざわざ夜お見舞いにくるの?役員って」
「知らん。あいつ会計だろ?誰にでも来るにしても普通委員長とかじゃねぇの」
だよねぇ。やっぱり脈アリアリにしか見えないんだけどな。
「どーせあれだろ、身分差がどーのとか出世がとか考えてんだろグラン」
「やっぱそこかな?グランさんリアに捕まると思う?」
「さあ…泣き落としでもしてみりゃいいのに」
「何回も言うけど私、泣き落としされたわけじゃないからね?」
泣けば何とかなるとでも思ってんのかな。
「あれで好転したのは事実だしな。もう遅いしオレらも寝よーか」
「うん、おやすみ」
軽くキスを交わして、ダートは入浴しにリビングを出て行ったので私も寝室に入った。
いつになったら同じベッドで寝る気になるんだろ?もう結構色々してるから問題ないと思うんだけどな。
隣の部屋にダートが戻ってきたのが分かったので、ノックをして部屋に侵入する。
「ディアナ?」
上半身裸のまま、タオルを肩にかけたダートがベッドの上に座って私を見上げた。
「一緒に寝たい」
「……ここで?クソ狭いけど」
どこでもいい。
近寄った私の手首を掴んだダートの足を跨いで、そのまま腰を下ろす。
「何、いまデレ気分なの?」
くっついた私の背中をポンポンと宥めるように叩きながら、ダートは優しい声を出した。
「やべぇなー、えろ気分になりそう。夜這いに来たわけじゃねんだろ?」
「違うけど、お勉強する?」
「しねぇわ、気合で抑えるわ。ちゅーはするけど」
そう言ってダートは上を向かせた私に、触れるだけのキスをする。いっぱい抱きしめられて、嬉しい。
「……はー、かわい。令嬢時代思い出して怖くなった?」
「そんな繊細な神経してないし。でもここで寝ていい?」
怖くなんかなってない。けどそれは全部、ダートが居るからそう思えるようになったわけで。離れたら駄目になるのは私の方だなって改めて思った。
「部屋はどこでもいいけど、これから毎日一緒に寝よう?」
「や、それは」
「駄目?」
「眠れる気がしねぇ…オレその内ちんこ擦り付けだすぞ」
またそんなこと言う。最近はたまに押し付けられるそれがあんまり気にならなくなってきてしまった。
「……私が寝てからならいい」
「マジかよお墨付き出しちゃうの。断れねぇじゃん」
ダートはため息を吐いて、上に居た私も一緒に引っ張ってドサっとベッドに寝転んだ。
「んー…まぁどーにかなるか、愛しいディアナのお願いですし。おやすみ」
ぎゅって顔を胸に押し付けられて、嗅ぎ慣れたダートの匂いに安心して、そのままゆっくりと意識を落とした。
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