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戻ってきた元悪役令嬢
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しおりを挟む流石に他国の城に直接転移は問題になりそうなので、城下町に着いてから城まで歩く。
スルド国の城下町は前に行った港町くらいの大きさで、山に囲まれた長閑なところだった。城も小さめで、城壁も低い。
城門で気の良さそうなおっちゃんに紋章を見せて、国王様に取り次いでもらうことにした。急ぎだと念を押したら慌てて偉そうな人が現れて、中に案内される。勇者伯便利だな。
「––––初めまして、スルド国王ナルディン様。アルラ皇国勇者伯、ディーと申します。手順も何もかも省略して大変失礼ですが……コーデリア第三王女にお会いしたい」
国王は執務室らしきところで書類仕事をしてた。
いきなり現れた私たちにものすごく驚いた顔をしたけど、どっかで見たことでもあったのかな?私の顔を見てすぐに椅子から立ち上がって一礼した。
「いえ、こちらこそこのような格好で申し訳ありません。娘のコーデリアは学園に居るはずです、何か娘にご用事が?」
「四日前から学園にはおりません、彼女には公務があるので三日間留守にすると聞きましたが、その後も帰ってこない。確認すると無期限で国に帰るとの申請がされていました」
「なっ」
こりゃ白だな、国王は全く知らなかったみたい。てことはリアが危険?
「公務の話も、全てご存知なかったということでよろしいでしょうか。私学園ではコーデリア様に大変お世話になっていて…彼女を探す許可をいただけませんでしょうか」
「紅桾の勇者様に、コーデリアが…」
国王は目を丸くして言葉を失う。何も言ってなかったんだなリア。
「既に日が経っています。すぐにでも捜索したいのですが、お心当たりは?」
「……心当たり…」
「コーデリア王女が学園に来たのは?財政難を理由に上の王女は入学辞退をしていた、彼女だけ学園に送った理由は?」
グランさんがダートに耳打ちをして、それを受けてダートが口を挟んだ。
「……連邦の大統領が、コーデリアを妻にと望んで…年も離れているし、いくら我が国の立場が弱くてもそれは無理だとお断りしました。引いては貰えましたが、一度誘拐されかけて。大統領の差し金かどうかまでは分かりませんでしたが、危険だと思い他国に逃しました」
「連邦のトップなら申請も簡単か、すぐに行きましょう。大統領がいる国は?」
地図を出して教えてもらう。この距離ならリアの居場所が細かく捕捉出来るだろう。
「…本来勇者様のお手を煩わせるような事ではありませんが、私は娘が大切です。ご協力をお願いします」
「大した手間でもありません。あんな可愛い子が手籠にされるなんて納得いかない」
グランさんの方を見ると、顔を真っ青にして口元を手でおさえていた。
「グランさんはここで待ってて」
「いえ…行かせてください、彼女が危険な目に」
「邪魔。戦えない無関係の人間は連れていかない、証人として国王が居ればいいかな」
「でもっ」
「あんたとリアの間には今何もない。口を出す資格もない、選択の結果だよね?」
「、っ」
何の意地張ってたのか知らんけど、婚約者どころか恋人ですらないお荷物を連れてくわけないじゃないか。
「のんびり待っててよ。あの子には私の守りを渡してる、ちょっとやそっとじゃ身体に傷一つつかない」
「えー!ディー、あいつにそんな特別扱いしてたのかよ?!」
「ダートにもついてるよ、その指輪に色々付与してんだよ」
「え、マジ?なんだよはやく教えてくれよ、超喜ぶのに」
「わ、分かりましたから!納得したのでそんな会話後回しにしてはやく彼女を!」
「おー、行ってくるわ」
「ナルディン様の準備は?」
「すぐにお願いします、私も少しでもはやく娘に会いたいですから」
真剣な顔で見つめるグランさんと国王の視線を受けながらリアを探し、彼女が居るであろう場所に転移した。
「……リア?」
転移した先で見たのは、床に押し付けられたリアと、そのリアの上に馬乗りになって服を脱がそうとしていたおっさんの驚愕の顔。
「–––––––何してんだ」
明らかに同意じゃないのに、私の守りも発動していない。
「ディー……」
大きな目に涙をいっぱい溜めて、リアが私の方に目を向けた。
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