地下室からの告白

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第1章 はじまり

第2話 情報屋

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私は地下鉄を乗り継いで、神谷町へ向かった。ここで、アポを取っておいた警察の情報屋と落ち合えるはずだった。

地下鉄の出口を出ると、裏通りへと入り、ほどなくしていつもの店にたどり着いた。1階は居酒屋、2階はよほどの常連客でないと、その存在も知らない隠れ家的なスペースとなっている。

情報屋Tは、既に椅子に座って一服していた。まるで私がここに呼び出すことを最初からわかっているようだった。

「久しぶりだな。元気にしてたか」

私はこの男の素性をほとんど何も知らない。歳は40代といったところか。

「で、誘拐事件という話はほんとうか?」

男の問いを無視して、私は尋ねた。

「まあそんなに急かすなよ。昨日三鷹市内で起きたらしい」

「なんでも部活が終わって家に帰る途中で誘拐されたんだそうだ」

彼の話をまとめるとこうだった。

誘拐されたのは、三鷹市内の市立中学校に通う中学1年生。12歳。名前は藤井じゅん。サッカー部所属。

機能は18時頃に練習が終わり、彼は1年生だから雑用をこなしていたが、それでも19時には全員下校したということだった。彼は家が近い同級生3人と途中までは一緒に下校した。しかし、最後のひとりと自宅近くのコンビニ前で別れて以来、行方がわからなくなった。

淳くんは部活仲間とつるんで遊びに行くことはあっても、きちんと門限は守る、比較的ちゃんとした性格だった。だから21時を過ぎるとさすがに親もおかしいと思い、学校や心当たりのあるところへ電話をかけたが、学校側は下校したといい、まわりも知らないという。

彼が事件に巻き込まれたのが決定的になったのは、真夜中にあった一本の電話。公衆電話からかかってきているようだったが、相手は誰だかわからない。

お宅の息子を誘拐した。別に我々は金銭を要求しているわけではない。ただ、我々の指示を守ってくれれば、息子はとりあえず生かしておいてやる。冗談だとか思うな。我々は子供ひとりくらい簡単にひねりつぶせるんだ。我々には何人も少年を殺してきた過去があるんだ。とりあえず、警察には知らせないでもらおう。また追って連絡する。

この電話を受けて、両親は警察に知らせるべきか悩みに悩んだ。通報時刻が朝の6時と遅くなったのはそのせいだ。それから今までは、犯人からの接触はTが知る限りまだない。

とこんな具合だった。当然ながら、通報したことが犯人にしれるとまずいので、まだ報道はできない。

犯人の言うことを信じるとするならば、彼らにはこれ以外にも相当な事件を起こしていると言うことになる。

「彼らがほかにも子供を殺してきた過去があるんだろうか」

私は心の中の疑問をそのまま彼にぶつけた。

「いや、これは俺の知るところじゃないがね。犯人がただありもしないことを並べているだけかもしれない。ただね、」

と彼は続けた。

「日本で行方が分かっていない19歳以下の子供は2万人いるんだ。義務教育期間の子供で1年以上わかっていないものだけをとっても700件以上!これだけいれば、誰かがいなくなって、仮に殺されていようが、誰にもわからないだろうよ」

彼は珍しく神妙な顔をしてこちらをみた。

「なるほどねえ」

私は少し考えてから返した。

「とりあえず経緯は理解したよ。また何かわかれば情報をもってきてくれ。いつでも来るからさ」

「なあ松本くん」

彼は少し間を置いてから言った。

「これはどうも大きい事件のような気がする。なんというか...、その...、1つの綻びからいろんなものが明らかになるというか...」

それから語気を強めて

「これはただの少年誘拐事件じゃないと思うんだ。何かもっと大きい...」

そこまで言うと黙り込んでしまった。何か様子がおかしい。

「とにかく何か掴んだらすぐに連絡するよ」

そう言って、部屋から出て行ってしまった。

私はしばらくどうすればいいか思案していた。ふとスマホを見ると、相原からメッセージだ。

「先輩、わりとおっきい情報つかめましたよ。今から同行します。今どこにいらっしゃいます?」

「すまないが急用ができた。悪いが今日は合流できない。途中まで編集しておいてくれ」

間違っても今の段階では彼に事件のことを伝えるわけにはいかない。

「先輩、女でもできたんですか?」

尊敬のかけらもないやつだ。とりあえず適当に返事をしてあしらった。

さて、どうしたもんか。

気がついたら六本木のカフェに向かっていた。いつも行き詰まったときに立ち寄るカフェだ。ここで休んでいると何かひらめいたり、ことがはこんだりすることがほとんどだ。
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