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カリンヌはあの魔道具をマーガレットに託して意気揚々と女子寮に帰宅した。
カリンヌの女子寮の部屋はベッドが部屋の半分くらいを占めている、ちょっと手狭な部屋だ。
しかし、便利な魔道具を作る趣味を持っている為部屋と同じ位の容量を持つマジックバックを所持している。
「明日、いよいよ婚約破棄かぁ」
感慨深いものがある。カリンヌは婚約者も婚約者の家族も大嫌いなので死ぬほど嬉しい。
「あっ、閣下に一応ことを起こす前に必ず、知らせろって言われてたんだ」
カリンヌはいそいそとマジックバックからおっきめの紙を取り出しメッセージを書き込んでいく。
「よし、出来た。【設定】」
設定、でカリンヌは閣下の元にマジックレターが届く様に設定すると起動させる。
紙だった物が次第にカクカクと折れ曲がって鳥の姿を象った。生きてるような、けれど機械の様なそれは次の瞬間には無色透明に変わり窓からすり抜けて飛び立っていく。
「閣下によろしくー」
カリンヌは明日に思いを馳せ。万が一に備えるべく机に向かった。
準備って大事だもんね。
翌朝
しまったわ。徹夜してしまった。
眩しい朝日が目に痛い。
魔道具や書類をバサバサとマジックバックに入れるとカリンヌは眠たい目を覚ます為に顔を洗い、ふと鏡に映った顔を見ていたら己の深いクマに気づいた。
不味いわ。絶対に今日、閣下の事だから面白がってやって来るに決まってる。
そこに、自分がクマをこさえた顔を見せれば徹夜がばれる。ついでに体調管理の大切さについてこんこんと説明される。
「仕方ない。」
お化粧は嫌いだけど。背に腹はかえられぬ。
そうなるといつも引っ詰めていた髪型が思いっきり浮く。
渋々カリンヌは赤みの強い金髪を緩く編んでハーフアップにした。
ピンクブロンドと言い換える母にそっくりな自分が鏡に映っていた。
紫色の瞳に合わせて今日は紫水晶を使った髪飾りにして。
うん、私も化けるのね。なんて思いにっこりと令嬢スマイルを浮かべ………
ダメね。何だか気色悪いわ。
鏡に映った自分からそっと視線を逸らした─
カリンヌは今日、学園長の執務室で婚約破棄をする予定だ。
学園長であるダルフォンソ公爵はマーガレットの祖父である。
マーガレット曰く。
お爺様が協力して下さるみたい。
ついでに……
成功報酬は腰もみっこ三号で手を打つと。
そんな訳でカリンヌはマジックバックに腰もみっこがあるのを確認して学園にやって来た。
「おはようございます。マーガレット様」
校舎に入ってすぐに、満面の笑みを浮かべるマーガレットを見つけた。
「カリンヌ様おはよう!……まぁ!まぁ!まぁ!あなたも今日は気合い十分ね!」
銀髪に赤い瞳のマーガレットはその長身も相まって迫力美人だ。彼女は日頃よりも念入りに身支度して気合い十分にやって来たようだ。凝った髪型でサイドに流れる様に宝石を散りばめたその姿はまるで女神の様。
私は「では行きましょう」と言うマーガレットに頷き彼女と揃って学園長室に向かった。
学園長室は学園の最上階にある。
あまり時間も掛からずに移動出来る為実感はないが、三十四 階建ての建物の最上階なので見晴らしは抜群だ。
この移動する階段や浮遊魔法が掛かった箱型の椅子はどんな仕組みの魔道具なんだろう。
カリンヌは最上階に着くまでずっとうんうん眉間に皺を寄せ魔法の仕組みを考えていたが、あっという間に着いてしまい思考はそこで中断された。
「全く、あなたったらふと見れば魔道具を睨み付けて解析魔法やら、分析魔法やらで魔道具の仕組みを探ってるんだもの。呆れちゃうわ」
「だって、この箱型の椅子の仕組み、凄く複雑で素晴らしい魔法が組み込まれてるんですよ!使用許可が無ければこれには乗れないんだから。出来る時にやらなくっちゃ!」
「でもねぇ…だからって普通、解析魔法やら分析魔法をホイホイ使う?私が使うとしたらせいぜい探知魔法くらいのものね。こんな感じでじっくり使えばこの階くらいなら………」
カリンヌは分析魔法を切り、クラクラする頭を振って箱型の椅子からおり、さぁ歩きだそうとするとマーガレットが急にカリンヌの口に手を当てて来た。
「マーガ─」「しぃ!静かに」
マーガレットが声を潜め低い体制で脇の掃除用具保管庫にカリンヌを連れ込んだ。
「どうしたの?」
「よく分からないけど、スィモーネ殿下が居るのよあの先の談話室に。あの女子生徒と。どうする?とる?撮っちゃう?あぁ!でも出歯亀くん二号はお爺様のところにあるわ……カリンヌぅ!」
珍しくマーガレットがワタワタと慌てている。
「ああ、なるほど。殿下ってマーガレット様の従姉妹のお姉様、フランチェスカ様の婚約者でしたっけ?もちろん撮りましょう」
カリンヌは手にしていたマジックバックから出歯亀くん三号をだすと起動させる。
あっ
カチッと、音がした瞬間、カリンヌは後悔した。
自分が起動させる必要は無かったよね。
寝不足プラス、魔道具の作成や、先程の解析魔法と分析魔法とで魔力が無くなっていたカリンヌは薄れ行く意識の中でマーガレットに告げた。
「30分したら、起こして下さい…」
「…えっ!?あっ!あなた、魔力切れ起こしてるじゃない!!どうしていつもそう、抜けてる───」
許してマーガレットさま、瞼がもう限界なの…です
カリンヌはマーガレットに内心詫びつつ無事起動して消えゆく出歯亀くん三号を見送り意識を失った。
カリンヌの女子寮の部屋はベッドが部屋の半分くらいを占めている、ちょっと手狭な部屋だ。
しかし、便利な魔道具を作る趣味を持っている為部屋と同じ位の容量を持つマジックバックを所持している。
「明日、いよいよ婚約破棄かぁ」
感慨深いものがある。カリンヌは婚約者も婚約者の家族も大嫌いなので死ぬほど嬉しい。
「あっ、閣下に一応ことを起こす前に必ず、知らせろって言われてたんだ」
カリンヌはいそいそとマジックバックからおっきめの紙を取り出しメッセージを書き込んでいく。
「よし、出来た。【設定】」
設定、でカリンヌは閣下の元にマジックレターが届く様に設定すると起動させる。
紙だった物が次第にカクカクと折れ曲がって鳥の姿を象った。生きてるような、けれど機械の様なそれは次の瞬間には無色透明に変わり窓からすり抜けて飛び立っていく。
「閣下によろしくー」
カリンヌは明日に思いを馳せ。万が一に備えるべく机に向かった。
準備って大事だもんね。
翌朝
しまったわ。徹夜してしまった。
眩しい朝日が目に痛い。
魔道具や書類をバサバサとマジックバックに入れるとカリンヌは眠たい目を覚ます為に顔を洗い、ふと鏡に映った顔を見ていたら己の深いクマに気づいた。
不味いわ。絶対に今日、閣下の事だから面白がってやって来るに決まってる。
そこに、自分がクマをこさえた顔を見せれば徹夜がばれる。ついでに体調管理の大切さについてこんこんと説明される。
「仕方ない。」
お化粧は嫌いだけど。背に腹はかえられぬ。
そうなるといつも引っ詰めていた髪型が思いっきり浮く。
渋々カリンヌは赤みの強い金髪を緩く編んでハーフアップにした。
ピンクブロンドと言い換える母にそっくりな自分が鏡に映っていた。
紫色の瞳に合わせて今日は紫水晶を使った髪飾りにして。
うん、私も化けるのね。なんて思いにっこりと令嬢スマイルを浮かべ………
ダメね。何だか気色悪いわ。
鏡に映った自分からそっと視線を逸らした─
カリンヌは今日、学園長の執務室で婚約破棄をする予定だ。
学園長であるダルフォンソ公爵はマーガレットの祖父である。
マーガレット曰く。
お爺様が協力して下さるみたい。
ついでに……
成功報酬は腰もみっこ三号で手を打つと。
そんな訳でカリンヌはマジックバックに腰もみっこがあるのを確認して学園にやって来た。
「おはようございます。マーガレット様」
校舎に入ってすぐに、満面の笑みを浮かべるマーガレットを見つけた。
「カリンヌ様おはよう!……まぁ!まぁ!まぁ!あなたも今日は気合い十分ね!」
銀髪に赤い瞳のマーガレットはその長身も相まって迫力美人だ。彼女は日頃よりも念入りに身支度して気合い十分にやって来たようだ。凝った髪型でサイドに流れる様に宝石を散りばめたその姿はまるで女神の様。
私は「では行きましょう」と言うマーガレットに頷き彼女と揃って学園長室に向かった。
学園長室は学園の最上階にある。
あまり時間も掛からずに移動出来る為実感はないが、三十四 階建ての建物の最上階なので見晴らしは抜群だ。
この移動する階段や浮遊魔法が掛かった箱型の椅子はどんな仕組みの魔道具なんだろう。
カリンヌは最上階に着くまでずっとうんうん眉間に皺を寄せ魔法の仕組みを考えていたが、あっという間に着いてしまい思考はそこで中断された。
「全く、あなたったらふと見れば魔道具を睨み付けて解析魔法やら、分析魔法やらで魔道具の仕組みを探ってるんだもの。呆れちゃうわ」
「だって、この箱型の椅子の仕組み、凄く複雑で素晴らしい魔法が組み込まれてるんですよ!使用許可が無ければこれには乗れないんだから。出来る時にやらなくっちゃ!」
「でもねぇ…だからって普通、解析魔法やら分析魔法をホイホイ使う?私が使うとしたらせいぜい探知魔法くらいのものね。こんな感じでじっくり使えばこの階くらいなら………」
カリンヌは分析魔法を切り、クラクラする頭を振って箱型の椅子からおり、さぁ歩きだそうとするとマーガレットが急にカリンヌの口に手を当てて来た。
「マーガ─」「しぃ!静かに」
マーガレットが声を潜め低い体制で脇の掃除用具保管庫にカリンヌを連れ込んだ。
「どうしたの?」
「よく分からないけど、スィモーネ殿下が居るのよあの先の談話室に。あの女子生徒と。どうする?とる?撮っちゃう?あぁ!でも出歯亀くん二号はお爺様のところにあるわ……カリンヌぅ!」
珍しくマーガレットがワタワタと慌てている。
「ああ、なるほど。殿下ってマーガレット様の従姉妹のお姉様、フランチェスカ様の婚約者でしたっけ?もちろん撮りましょう」
カリンヌは手にしていたマジックバックから出歯亀くん三号をだすと起動させる。
あっ
カチッと、音がした瞬間、カリンヌは後悔した。
自分が起動させる必要は無かったよね。
寝不足プラス、魔道具の作成や、先程の解析魔法と分析魔法とで魔力が無くなっていたカリンヌは薄れ行く意識の中でマーガレットに告げた。
「30分したら、起こして下さい…」
「…えっ!?あっ!あなた、魔力切れ起こしてるじゃない!!どうしていつもそう、抜けてる───」
許してマーガレットさま、瞼がもう限界なの…です
カリンヌはマーガレットに内心詫びつつ無事起動して消えゆく出歯亀くん三号を見送り意識を失った。
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