地味に転生していた少女は冒険者になり旅に出た

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スルー

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「はい、そこまでです」
「ギルドマスター!?」

ふわりと舞い降りた長髪の男性。
ギルドマスターが私とエタンを庇う様に彼らとの間に立ち、彼女達を牽制する様に睨んだ。
「……すいませんが、エタンさん。怒りを収めて貰えませんか…」

そう言ってきたギルドマスターにエタンは渋々頷き、漏れていた魔力を収める。

すると今度はギルドマスターの目が明らかに魔力を纏いて開かれた。
爬虫類特有の瞬きが無く見開かれた目からは恐ろしい程の魔力を感じる。
私は魔力を目視出来ないタイプだ。そんな私が魔力をこんなに感じるなんて。けっこうな魔力が出てない?

「無理な勧誘はご法度のはずですが?」

蛇に睨まれた蛙の様に猫耳のお姉さんとうさぎのお姉さん達は目を見開き、ガクガクと震えだし、尋常ではない汗をかいていた。

どうやら特定の人物を対象にした魔力による威圧行動を行なっている模様。

私はギルマスの魔力をちょっとだけ解析して理解する。けっこう大変そうな事をやっている。
理解したけど私には到底無理な繊細な技だった。

器用な人だ。

「…わ、悪かったわ。」
「待って!な、なら!決闘なら良いでしょう!!私達のパーティは白縛りだから、彼に来てもらうにはこの子が邪魔なんだもの。この子には彼を解放して貰わなきゃ」

食い下がって来たのは、やっぱりと言うか。先程からやたらとエタンを熱い眼差しで見つめていたうさぎ耳のお姉さんだった。

汗をかいて真っ青な顔をして、どうしても諦めきれないと言う必死な表情に、ちょっぴり罪悪感を感じた。

エタンに一言。『私の事は気にせず『白き牙』に行っても良いよ』と言えば、済むのに。エタンはAランク冒険者のパーティに入れて、あのボインなうさぎさんにアハンウフンのあーんなことや、こーんなことをして、めくるめく日々を過ごせちゃうかもしれない訳だし。
なんて想像して。

なんか無性にムカついてきた。

気分が悪い。吐きそうだ。

朝食の食べ合わせでも悪かったのかな?

私はムカムカする胃や胸を撫でながら首を傾げた。

「クリス、気分が悪いのか?」
「えっ?」

てっきりうさぎ耳のお姉さんの言葉に関心が行っているものだと思っていた。
それは私だけじゃなくてこの場にいたうさぎ耳のお姉さんや、冒険者達、ギルドマスターもそうだったらしくてポカンとした顔でエタンを見ている。

「お前がそんな顔をするなんて……よっぽどだろ?今日は宿で休むか?」
とエタンはしきりに私の具合いを気にしてくる。

居た堪れない。みんなの眼差しが私とエタンをまじまじと見てくる。

「…いや、大丈夫だよ」
「そうか?無理はするなよ」

そう言ったエタンは手のかかる妹(傍目からは弟)を心配する様に眉を寄せて私のおでこにかかる前髪をスっと指で梳いて熱を測る仕草をすると、大丈夫そうだな。と独り言を言った。

「………お前さん達は兄弟なのか?」
「まぁ、そんなところだ。」
エタンが頷けば周囲が「兄ちゃん、甘すぎだろ」と言っている。

その言葉にエタンは不思議そうに首を傾げた。

「兄は妹に甘いものだろう?」

エタンの言葉にみんなの眼差しが驚愕に変わり「えっ、この子、女の子!?」
「うっそぉ、男の子だと思ってた!!」
と口々に驚かれた。

ちょっと顔が引き攣ったけど、仕方ない。
だって今の私の姿はちょっと伸びたけどショートカットの金髪、ちょっぴりヒヨコっぽい。それから骨と皮と筋しかないガリガリの身体。目ばっかり大きな欠食児童な外見だ。
服装は街の男の子の服装だし、ブーツは軍用。
うん、女の子らしさは皆無だ。でもなんでだか、ムカつくのだよ。

「……クリス」
私が唇を噛んでいるとエタンが唇に親指を当ててくる。

「噛むならこっちにしろ」
「…は?」

「なんだ、あいつら番じゃね?」
「い、嫌よ!私は諦めないわ!」
「あー、ダメだよミューさん、猛獣種ってのは番見つけちまうと番以外には絶対に触らねぇし、触らせねえ。ついでに、立たねぇからさ!」
ガハハ!と豪快に笑う声が聞こえたけど会話の内容までは分からなかった。

「……………」

「……エタン?ちょっと?なんか顔赤くない?えっ?熱?」

エタンの顔がなぜかちょっと赤い。
おや?とまじまじと見ていたら驚く程に真っ赤になってしまった。

慌てておでこに触れたら

「熱っ!?」

え?熱?風邪引いちゃったの?

オロオロする私にエタンが「気のせいだ」と言う。
いや、気のせいじゃないよ!?

「今日はエタン、宿で休んどく?私、おっちゃんのとこまでなら一人で行けるし」
「何を言っている。俺が(お兄ちゃん)、お前(妹)を一人で行かせるはずないだろ?」

なんだろう、解せぬ……

「さっさと支払いに行くか」
エタン、どうやら苛立っているらしく魔力が若干漏れている気がする。周囲の人達が後ずさりしていらっしゃる。


「あっ、でも」

私はここに来た目的を思い出しギルドマスターを見るが。
「ええっ!?いや、気にせず行ってきてください!気が立った状態で話をしたら私の心臓が持ちませんからね!」

なんだか必死にそう言われてしまった。

「そ、そうですか?じゃあ、ちょっと関所のとこの国境警備隊の詰所まで行ってきます。」

「行こう、クリス」

私の言葉にギルドマスターやそばに居た『白き牙』のメンバーが口を開く前にエタンはさっさと私を抱えたまま歩き出した。
「……この私に見向きもしないなんて有り得ない!」
「ミュー、諦めなよ」
「嫌よ!彼は私の番だわ!絶対に諦めないし、あの不細工な小娘になんか負けないから!」

え?ちょっとエタンさんや?聞こえてる?
チラリとエタンを見るがまるで気にした様子はない。
ええ?!まさかのスルー?

喚くうさぎさんを無視して結局エタンは最後まで振り向くこと無く進んだ。

「エタン、私歩けるよ!?なんで抱っこで歩くの!?」

「この方が早い」

「うぐっ……ど、どうせ、私の足は短いもん」

「ん?何か言ったか?クリス」

「別に!何でもないから!」
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