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はじまりの歌3
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「エンマ嬢は毎年綺麗になっていくね。(はなたれ小僧だったのに)」
なぜだろう。副声音が聞こえる。
「……ありがとうございます。ステファノ様」
この野郎とひきつり笑いで礼をすると、やつの瞳が細くなった。
「曲が変わったね。そろそろダンスフロアに行こうか。」
ゆったりした曲が終わり、次の演奏までの間奏曲が始まった。
次?次はもちろん少し早いテンポの上級者向けのダンス曲になる。
「…ステファノ様?え?あの(嫌だ!行きたくない!)」
「…(聞こえないな)」
NO!嫌だ!とじたばたしていたがステファノは騎士であった。しかも国一番の。
対する私エンマは普通の令嬢であり大変非力な部類に入る。
「…ステファノ様、私早いテンポは苦手です!この後歩けないかも知れません!(クラスメイトの令息とダンスの約束がぁ)」
半泣きである。
周りは運動神経の良さそうなご令嬢達が戦いに挑む様な顔でダンスの開始を待っている。
この間奏曲がある場合は審査でもあるのかと言う勢いで真剣にダンスを踊る場合が多い。もちろんダンスが得意な方達が踊る為魅せる舞踏のはじまりで観客がフロアを囲む。
二階席からも見ることが出来るダンスフロアの中央のど真ん中で、エンマはステファノと踊っていた。
バクバク、バクバクと荒れ狂う心臓よ、どうか止まらないでと願いながら必死にダンスを踊るエンマと余裕綽々なステファノのダンスは注目の的だった。
ざわつく会場では『白い花の妖精の様だ…』『ついに氷帝が』と会話が飛び交っていた。
エンマはドキドキがバクバクに変わったあたりから緊張などは飛んでいた。ドキドキしすぎたせいか心臓が止まるのでは、との心配が緊張を上回ったのかもしれない。
隅の方に黒髪の美少年が見えてそちらに視線を一瞬向けた。一緒に初心者ワルツを踊らないかとエンマに言ってきてくれたクラスメイトの令息、マッシモが苦笑いで手を振ってきた。無論返す余裕は無い。
そんな涙目のエンマを見てステファノはうっすら笑っている。
ステファノにクルクルと回されふわりと持ち上げられて、綺麗にリフトが決まれば周囲から歓声が上がる。素早いステップ、またクルクルとステファノの腕の中に、そんな繰り返しの中であの、氷帝が、あの、邪魔する者、全てを絶対零度で無に帰すと密かに恐れられている男が、笑った!?と周囲ではどよめきがおきていた。
ステファノに初めて出会ったのは今通っている学園でだった。
入学したばかりの頃エンマは友人達と移動教室に向かっていたが忘れ物をした事に気づいて教室へ1人戻った。
確かに移動教室に行く為にとバックに入れたはずだったのにおかしいな?と首を傾げながら忘れ物を手にし友人達の元に向かった。
しかし曲がる場所を間違えたのか迷子になって別棟にたどり着いてしまった。
何度か引き返して、来た道を戻っているつもりが全く知らない場所に来てしまったことに気づく。
心細くキョロキョロしながらさ迷うエンマはもはや半泣きだった。そんな時、校舎の角から兄ロベルトが歩いて来るのが見えてエンマはオンオンと泣いてロベルトに飛びついた。
しばらく何事かと固まっていたロベルトだが、抱きしめてくれた。
12歳の女の子はそんな泣き方しないんだぞ。と呆れた声でロベルトが言っていた。
そのわりに兄はエンマを大事そうに撫でてずっと抱きしめてくれていた。
その横に、ステファノは立っていた…らしい。
泣き疲れてそのまま寝てしまったエンマは保健室でその後も、ぐうぐう寝ていた為ステファノに出くわした記憶など微塵も無かった。
あれから3年、エンマは大変厳しい淑女教育を受けなんとか合格することができた。おやつの時間が消えてしまう恐怖を味わいながら必死に頑張った。
すぐに気絶するのは良いが人前でオンオンと泣いたりしてはいけないと今はちゃんと理解している。
おかしな夢を見て前世の記憶があるからと言ってエンマに大人の対応が出来るなんてことは無く。やはり物語の様に上手くは行かない、エンマは精神的に打たれ弱いままの、泣き虫エンマのまま成長した。
不思議なことに鳥さんには良いようにすると言われたはずだが、魔力も普通。
特別な加護も無い。
特に頭が良いわけでもないしそもそも元が元なので使い道は無かった。
どうやら転生チートとやらは無いらしい。
この世界の地理や情勢は本を読んだり父と兄の会話や男子生徒の会話である程度は知っている。友人の貴族令嬢達は知らないかもしれないが知っているからと言って別にどうと言うことも無いので普通だろう。
異世界転生で前世の記憶があると言ってもこの世界は魔王が復活や、世界の危機に、など瀕してはいないのだ。たぶん、良い様にとは、良い家族に恵まれると言う事なのかもしれない。顔は母に似てる為にたぶん可愛い部類に入る予定だし、胸はまだまだきっと未来がある、はずだ!うんうん。
チートは無いけど私は満足じゃ。
そんなエンマだが、1つだけ、忘れていた特技があった。ピアノだ。
残念なことに曲は1曲しか覚えていない。なぜこの曲だけなのかは覚えていない。もしかしたら死んでしまう頃練習していた曲かもしれない。
その曲だけ、魂に刻まれたみたいに覚えている。
今はこの世界のピアノに慣れてきたし、そろそろ好きに弾いても良いだろうと母の開くパーティーの時にいつか弾いてみる予定だ。
なぜだろう。副声音が聞こえる。
「……ありがとうございます。ステファノ様」
この野郎とひきつり笑いで礼をすると、やつの瞳が細くなった。
「曲が変わったね。そろそろダンスフロアに行こうか。」
ゆったりした曲が終わり、次の演奏までの間奏曲が始まった。
次?次はもちろん少し早いテンポの上級者向けのダンス曲になる。
「…ステファノ様?え?あの(嫌だ!行きたくない!)」
「…(聞こえないな)」
NO!嫌だ!とじたばたしていたがステファノは騎士であった。しかも国一番の。
対する私エンマは普通の令嬢であり大変非力な部類に入る。
「…ステファノ様、私早いテンポは苦手です!この後歩けないかも知れません!(クラスメイトの令息とダンスの約束がぁ)」
半泣きである。
周りは運動神経の良さそうなご令嬢達が戦いに挑む様な顔でダンスの開始を待っている。
この間奏曲がある場合は審査でもあるのかと言う勢いで真剣にダンスを踊る場合が多い。もちろんダンスが得意な方達が踊る為魅せる舞踏のはじまりで観客がフロアを囲む。
二階席からも見ることが出来るダンスフロアの中央のど真ん中で、エンマはステファノと踊っていた。
バクバク、バクバクと荒れ狂う心臓よ、どうか止まらないでと願いながら必死にダンスを踊るエンマと余裕綽々なステファノのダンスは注目の的だった。
ざわつく会場では『白い花の妖精の様だ…』『ついに氷帝が』と会話が飛び交っていた。
エンマはドキドキがバクバクに変わったあたりから緊張などは飛んでいた。ドキドキしすぎたせいか心臓が止まるのでは、との心配が緊張を上回ったのかもしれない。
隅の方に黒髪の美少年が見えてそちらに視線を一瞬向けた。一緒に初心者ワルツを踊らないかとエンマに言ってきてくれたクラスメイトの令息、マッシモが苦笑いで手を振ってきた。無論返す余裕は無い。
そんな涙目のエンマを見てステファノはうっすら笑っている。
ステファノにクルクルと回されふわりと持ち上げられて、綺麗にリフトが決まれば周囲から歓声が上がる。素早いステップ、またクルクルとステファノの腕の中に、そんな繰り返しの中であの、氷帝が、あの、邪魔する者、全てを絶対零度で無に帰すと密かに恐れられている男が、笑った!?と周囲ではどよめきがおきていた。
ステファノに初めて出会ったのは今通っている学園でだった。
入学したばかりの頃エンマは友人達と移動教室に向かっていたが忘れ物をした事に気づいて教室へ1人戻った。
確かに移動教室に行く為にとバックに入れたはずだったのにおかしいな?と首を傾げながら忘れ物を手にし友人達の元に向かった。
しかし曲がる場所を間違えたのか迷子になって別棟にたどり着いてしまった。
何度か引き返して、来た道を戻っているつもりが全く知らない場所に来てしまったことに気づく。
心細くキョロキョロしながらさ迷うエンマはもはや半泣きだった。そんな時、校舎の角から兄ロベルトが歩いて来るのが見えてエンマはオンオンと泣いてロベルトに飛びついた。
しばらく何事かと固まっていたロベルトだが、抱きしめてくれた。
12歳の女の子はそんな泣き方しないんだぞ。と呆れた声でロベルトが言っていた。
そのわりに兄はエンマを大事そうに撫でてずっと抱きしめてくれていた。
その横に、ステファノは立っていた…らしい。
泣き疲れてそのまま寝てしまったエンマは保健室でその後も、ぐうぐう寝ていた為ステファノに出くわした記憶など微塵も無かった。
あれから3年、エンマは大変厳しい淑女教育を受けなんとか合格することができた。おやつの時間が消えてしまう恐怖を味わいながら必死に頑張った。
すぐに気絶するのは良いが人前でオンオンと泣いたりしてはいけないと今はちゃんと理解している。
おかしな夢を見て前世の記憶があるからと言ってエンマに大人の対応が出来るなんてことは無く。やはり物語の様に上手くは行かない、エンマは精神的に打たれ弱いままの、泣き虫エンマのまま成長した。
不思議なことに鳥さんには良いようにすると言われたはずだが、魔力も普通。
特別な加護も無い。
特に頭が良いわけでもないしそもそも元が元なので使い道は無かった。
どうやら転生チートとやらは無いらしい。
この世界の地理や情勢は本を読んだり父と兄の会話や男子生徒の会話である程度は知っている。友人の貴族令嬢達は知らないかもしれないが知っているからと言って別にどうと言うことも無いので普通だろう。
異世界転生で前世の記憶があると言ってもこの世界は魔王が復活や、世界の危機に、など瀕してはいないのだ。たぶん、良い様にとは、良い家族に恵まれると言う事なのかもしれない。顔は母に似てる為にたぶん可愛い部類に入る予定だし、胸はまだまだきっと未来がある、はずだ!うんうん。
チートは無いけど私は満足じゃ。
そんなエンマだが、1つだけ、忘れていた特技があった。ピアノだ。
残念なことに曲は1曲しか覚えていない。なぜこの曲だけなのかは覚えていない。もしかしたら死んでしまう頃練習していた曲かもしれない。
その曲だけ、魂に刻まれたみたいに覚えている。
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