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爽やかな笑顔が怖いです
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会場内に再び静寂が訪れる。
明らかに異常事態だと分かる戦闘服姿のエドアルド殿下が庇う姿は会場内に、そしてマッシモ達にその人物が国の保護対象だと知らしめていた。
変わり者の王子、戦闘狂の狂王子の二つ名はエドアルドの性質を良く捉えている。
そんなエドアルドではあるが誰かを庇うことはあまりない。
曲がりなりにも彼は国の第三王子殿下である。
そんな王族が危険人物とわかる者から誰かを自らが庇う。それは王族よりも価値のある人物。
そう見られる可能性があった。
事実、エンマは上位聖獣と契約し、半神であるステファノの妻になる者なのだ。
けれどそんな事実を知らなかった人々は初めて、エンマの価値がとんでもないものである、と認識する。
獲物の価値が上がれば更に執着するだろう。けれどステファノはエドアルドを通してエンマの価値を示し守りを強化し、価値ある者にふさわしい距離と設備の場所にしか行かないと言う布石を欲したのだ。
それほど、このマッシモが気に食わない。
「エンマ!」
誰も居なかった真後ろに風が吹きぎゅっと抱きしめて来る暖かく力強く、そして頼もしい存在を感じてエンマはうるうるして目の前にある腕をギューギュー抱き締め返した。
氷帝とか言われてる、実際に敵になんか回したら恐ろしい報復しか想像できない人だけど、いや、だからこそ?なんだか安心感あるんだよね?
「エンマ泣いたのか?」
チュッと頭上でリップ音がする。
その様子を眺めるマッシモの周囲に黒い霧が渦巻きその霧をルビーとユキちゃんが光の魔法で抑えてくれていた。
空気読もーよステファノ様!なんで甘い雰囲気に…
「な、泣いてまぜん」
あ…
どう考えても泣きべそをかいていたエンマを覗き込んだステファノの纏う空気が変わった。
え?もしかしてステファノ様ってばラスボス?え?
禍々しい赤黒い瞳の獣が毛を逆立て警戒する。
わかる!わかるよ魔物っぽい獣くん!そーだょね?それが正しい反応だと思うわ!
などと1人理解した顔をして獣、悪魔を見るエンマだった。
「やめてくれないかな?私の婚約者殿に今後一切関わらないで頂きたい。」
ツンデレならぬツンドラのステファノの声は地を這う魔物が逃げ出すだろうと思える程の怒気を纏っていた。
ゴクリと唾を飲むと音を辿ればマッシモの顔色が悪い。
やっと目の前にあったエドアルドの背が消えたのでエンマは漸く開けた目の前の光景を見て真っ青になりステファノの腕を更に縋るように掴んだ。
真っ黒な髪に前髪の一部だけが灰色になり青かったはずの瞳はドロドロと赤黒い歪な眼球に見えた。
怖い。
見ないで、見たくないのに怖くて動けない。
カタカタ震えるエンマに気づいたステファノがエンマをタキシードの中に囲う様に抱きしめ直し漸くエンマは息をする。
やだ、寒気がする。あれはヤバいやつだ。なんでマッシモがあんなことに。
「マッシモもしかして乗っ取らちゃったの?」
エンマの小さな疑問の声はステファノに聞こえてしまったようだ。
「へぇ、呼び捨てなんだな、私すら…」
オゥフ!
爽やかな笑顔だった。前に聖獣の召喚で見たのが可愛いと思えるくらいステファノの笑顔が怖いです。
エンマは慌てて弁解しようと口を開いた。
「違……」
「それ以上触るな!」
弁解しようとしたエンマの声に被さる様にしてマッシモが吠えるように叫んだ。
ビクッと身を固まらせたエンマを後ろに居たらしいエドアルドへ預けたステファノが大理石の床を蹴り飛び出して行く。
やっ、ステファノ様!
怪我をしちゃう、ステファノ様もマッシモにも怪我をして欲しくない。でもわかってる。
そんなのは私のエゴだよね。
けれども目をそらさずエンマはステファノを目で追った。
攻撃魔法など子供なみの力しかない。
でも援護なら。
「(シールド)」
「(完全防御障壁)」
エンマは会場内にシールドを素早く張りステファノには完全防御障壁をはった。たぶんそんな魔法を使える者など居ないかもしれない。
でも、もうなりふり構ってられないと思った。
柔らかな優しい世界で生きてきた。転生だ、チートだと騒ぐ隅には今の平和なエンマの愛しい世界を手放す可能性なんてやっぱりいらないと思ってこっそり安心感を持っていた。
無くしたくなかった。今の生活を。
だから、例えば人と違うこのユキちゃんから貰った力を使えばエンマは人と違うことで目立ってしまう。
神殿に行きたくないからとずっと新たな力を兄以外には隠していた。
だけど、今はそんなのどうでも良かった。
ステファノが傷つけられたらどうしよう。ステファノが死んでしまったらどうしようと、ただひたすら怖かった。
だって変でしょ?
あの殿下であるエドアルドが、エンマを守り、ステファノが焦った声でやって来るなんて。
エンマの張った防御の魔法を見てエドアルドは一瞬驚いた顔を見せたがステファノの背にはそれは分からなかった。
ステファノは瞬く間に魔法で剣を出し切りかかる。
剣戟の響きにエンマは何度も息を止めて瞳を揺らした。
ドキドキしすぎて気が遠のきそうだった。本当に気を失う訳にはいかない。震える手の平をぎゅっと握りしめるとピリッと手の平が自分の爪で傷つけられ血が滲む。
少し意識がはっきりした頃には決着がつきそうな勢いだった。
ステファノの魔法を帯びた刃が蒼白い光を放ちマッシモに届く、そう思った瞬間ライラがマッシモの前に立ちステファノが剣を収納し左の手に出現させる。
「どけ」
低いステファノの声にも反応しない女をステファノの部下数名が取り押さえるとマッシモの姿は既にその場から消えていた。
明らかに異常事態だと分かる戦闘服姿のエドアルド殿下が庇う姿は会場内に、そしてマッシモ達にその人物が国の保護対象だと知らしめていた。
変わり者の王子、戦闘狂の狂王子の二つ名はエドアルドの性質を良く捉えている。
そんなエドアルドではあるが誰かを庇うことはあまりない。
曲がりなりにも彼は国の第三王子殿下である。
そんな王族が危険人物とわかる者から誰かを自らが庇う。それは王族よりも価値のある人物。
そう見られる可能性があった。
事実、エンマは上位聖獣と契約し、半神であるステファノの妻になる者なのだ。
けれどそんな事実を知らなかった人々は初めて、エンマの価値がとんでもないものである、と認識する。
獲物の価値が上がれば更に執着するだろう。けれどステファノはエドアルドを通してエンマの価値を示し守りを強化し、価値ある者にふさわしい距離と設備の場所にしか行かないと言う布石を欲したのだ。
それほど、このマッシモが気に食わない。
「エンマ!」
誰も居なかった真後ろに風が吹きぎゅっと抱きしめて来る暖かく力強く、そして頼もしい存在を感じてエンマはうるうるして目の前にある腕をギューギュー抱き締め返した。
氷帝とか言われてる、実際に敵になんか回したら恐ろしい報復しか想像できない人だけど、いや、だからこそ?なんだか安心感あるんだよね?
「エンマ泣いたのか?」
チュッと頭上でリップ音がする。
その様子を眺めるマッシモの周囲に黒い霧が渦巻きその霧をルビーとユキちゃんが光の魔法で抑えてくれていた。
空気読もーよステファノ様!なんで甘い雰囲気に…
「な、泣いてまぜん」
あ…
どう考えても泣きべそをかいていたエンマを覗き込んだステファノの纏う空気が変わった。
え?もしかしてステファノ様ってばラスボス?え?
禍々しい赤黒い瞳の獣が毛を逆立て警戒する。
わかる!わかるよ魔物っぽい獣くん!そーだょね?それが正しい反応だと思うわ!
などと1人理解した顔をして獣、悪魔を見るエンマだった。
「やめてくれないかな?私の婚約者殿に今後一切関わらないで頂きたい。」
ツンデレならぬツンドラのステファノの声は地を這う魔物が逃げ出すだろうと思える程の怒気を纏っていた。
ゴクリと唾を飲むと音を辿ればマッシモの顔色が悪い。
やっと目の前にあったエドアルドの背が消えたのでエンマは漸く開けた目の前の光景を見て真っ青になりステファノの腕を更に縋るように掴んだ。
真っ黒な髪に前髪の一部だけが灰色になり青かったはずの瞳はドロドロと赤黒い歪な眼球に見えた。
怖い。
見ないで、見たくないのに怖くて動けない。
カタカタ震えるエンマに気づいたステファノがエンマをタキシードの中に囲う様に抱きしめ直し漸くエンマは息をする。
やだ、寒気がする。あれはヤバいやつだ。なんでマッシモがあんなことに。
「マッシモもしかして乗っ取らちゃったの?」
エンマの小さな疑問の声はステファノに聞こえてしまったようだ。
「へぇ、呼び捨てなんだな、私すら…」
オゥフ!
爽やかな笑顔だった。前に聖獣の召喚で見たのが可愛いと思えるくらいステファノの笑顔が怖いです。
エンマは慌てて弁解しようと口を開いた。
「違……」
「それ以上触るな!」
弁解しようとしたエンマの声に被さる様にしてマッシモが吠えるように叫んだ。
ビクッと身を固まらせたエンマを後ろに居たらしいエドアルドへ預けたステファノが大理石の床を蹴り飛び出して行く。
やっ、ステファノ様!
怪我をしちゃう、ステファノ様もマッシモにも怪我をして欲しくない。でもわかってる。
そんなのは私のエゴだよね。
けれども目をそらさずエンマはステファノを目で追った。
攻撃魔法など子供なみの力しかない。
でも援護なら。
「(シールド)」
「(完全防御障壁)」
エンマは会場内にシールドを素早く張りステファノには完全防御障壁をはった。たぶんそんな魔法を使える者など居ないかもしれない。
でも、もうなりふり構ってられないと思った。
柔らかな優しい世界で生きてきた。転生だ、チートだと騒ぐ隅には今の平和なエンマの愛しい世界を手放す可能性なんてやっぱりいらないと思ってこっそり安心感を持っていた。
無くしたくなかった。今の生活を。
だから、例えば人と違うこのユキちゃんから貰った力を使えばエンマは人と違うことで目立ってしまう。
神殿に行きたくないからとずっと新たな力を兄以外には隠していた。
だけど、今はそんなのどうでも良かった。
ステファノが傷つけられたらどうしよう。ステファノが死んでしまったらどうしようと、ただひたすら怖かった。
だって変でしょ?
あの殿下であるエドアルドが、エンマを守り、ステファノが焦った声でやって来るなんて。
エンマの張った防御の魔法を見てエドアルドは一瞬驚いた顔を見せたがステファノの背にはそれは分からなかった。
ステファノは瞬く間に魔法で剣を出し切りかかる。
剣戟の響きにエンマは何度も息を止めて瞳を揺らした。
ドキドキしすぎて気が遠のきそうだった。本当に気を失う訳にはいかない。震える手の平をぎゅっと握りしめるとピリッと手の平が自分の爪で傷つけられ血が滲む。
少し意識がはっきりした頃には決着がつきそうな勢いだった。
ステファノの魔法を帯びた刃が蒼白い光を放ちマッシモに届く、そう思った瞬間ライラがマッシモの前に立ちステファノが剣を収納し左の手に出現させる。
「どけ」
低いステファノの声にも反応しない女をステファノの部下数名が取り押さえるとマッシモの姿は既にその場から消えていた。
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