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第二章 真理亜と古の王サラマンディア
第34話 フェニックスの企み 真理亜の危機
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その夜、真理亜は自転車に乗って走っていた。
兄からは中学生の女の子が夜に出歩くのは補導されるから止めろと言われたが、ヴァンパイアは夜に現れるのだ。こちらも夜に出ないわけには行かなかった。
「シャーペンの芯が切れちゃった。ちょっと買ってくるね」
そう誤魔化すように言って家を飛び出し、そして今走っている。
真理亜とて何も算段もなくこの夜を選んだわけではない。何か不穏な物が動き出そうとしている気配を感じるのだ。町の人達は気づいていないようだが。
それは町の地表からいずれ吹き出しそうに近づいている。ヴァンパイアと関係があるかは分からないが、魔の物であるのは確かだ。
高い霊的能力でそれを察知した真理亜は、自分の予感が示すままに自転車を漕いで走っていった。
そして、何回目かの角を曲がって、街灯の照らす人気のない暗い道を走っているところで少女の予感は実感へと変わった。
「これはビンゴね」
感じる気配がヴァンパイアに関係があるかはまだ分からないが、明らかに邪悪な気だ。ならばハンターにとっては倒すべき敵に繋がっているはず。
「待ってなさいよ。必ず尻尾を掴んでみせる!」
目標を捉えた真理亜は調子に乗って自転車を漕ぐ速度を上げていった。
「真理亜の奴、遅いな」
家で紫門は時計の針を気にしながら妹の帰りを待っていた。コンビニなんて自転車で十分ぐらいの距離だ。すぐに行って帰ってこれる。だから夜に外出する許可を与えてやって見送ったのだが……
「まさかあいつヴァンパイアを倒しに行ったんじゃないだろうな!」
真理亜の性格を考えればありそうなことだった。夜になるとうずうずしているようだったし。気が付いた紫門はすぐに自転車を飛ばして最寄りのコンビニへと向かった。
店内に入り、棚を見る。
シャーペンの芯は売っている。だから売り切れだからと他に行った可能性は無い。
しかし、真理亜の姿がない。途中でもすれ違わなかった。
退屈そうにしている店員を見れば、しばらく客が来ていないことは明らかだ。
見てくれは可愛くて最近ヴァンパイアの騒動で有名になった真理亜が来れば、店員はもっと嬉しそうにニコニコしているはずだから。そう兄は思う。
「冗談じゃないぞ!」
真理亜が補導されれば責任は自分や家族にまで及ぶ。今のような平穏な暮らしは送れなくなるかもしれないし、中学一年生の女の子を夜の町で放置して遊ばせた保護者失格なんてレッテルを貼られてはたまったものではない。
前の夜は校庭にみんながいたから良かったが、今度はそうはいかない。
「早まった真似はするなよ、真理亜!」
紫門はコンビニから再び自転車を飛ばす。彼の行く先はヴァンパイアの住む家だった。
暗く寂しいライトだけが照らす路上にボロを纏った人物が立っていた。彼は炎を纏った槍を振り下ろし、結果が出るのを待ちながら思案していた。
「どうやら生半可な力では王への謁見は叶わないようですね。もう数か所巡ってみますか。周囲を突き崩せば中央をさらけ出すことも出来るかもしれません。数もまた力なりか」
彼は踵を返して立ち去ろうとする。だが、少女の凛とした声に呼ばれてその足を止めた。
「待ちなさい! 悪党!」
「私を悪党呼ばわりですか。正義を為しにこの星へ来た私を!」
フェニックスは振り返る。その先にいた少女は真理亜だった。自転車を降りて近づいてくる少女がただ者でないのはフェニックスにはすぐに分かった。
訝し気に見つめる彼に向かって、少女は問う。厳しい口調で。
「あなたは誰!? ここで何をしているの? ヴァンパイアの仲間なの!?」
「ククク……ふはははは」
誰がヴァンパイアの仲間なものか。誰のせいで苦労していると思っているのか。
フェニックスにとってはあまりにも可笑しい質問で、つい心の底からの笑いを漏らしてしまった。警戒を強める少女を手を出してやんわりと宥める。
「失礼。あまりにも可笑しい質問だったのでね。私はフェニックス。この星の邪悪を滅するためにここへ来て、今ヴァンパイアを倒すための布石を打っていた所なのですよ」
「あなたもヴァンパイアを倒すために!?」
「ええ」
目的が同じと聞いて真理亜は警戒は解かないまでも緩めた。フェニックスは親し気に言う。ヴァンパイアを倒すなら何でもいいとばかりに。
「ですが、策を動かすには私の力では足りないようなのです。誰かヴァンパイアを憎んでいて手を貸してくれるとても能力が高い良い人がいればいいのですけどね」
あまりにもストレートなフェニックスの誘い。彼は真っすぐに真理亜を見ている。
怪しい誘いではあったが、それよりも真理亜はヴァンパイアを見つけて倒すことを望んでいた。彼女の考えはすぐに纏まった。
「いいわ。ヴァンパイアを倒すためだもの。あたしは何をすればいい?」
「では、私の炎に同調し力を与えてください。それを彼の元へ送ります」
フェニックスの手に燃える炎が真理亜へと近づけられる。ただの炎でないことはすぐに分かった。正体は掴めないがヴァンパイアを倒すためだ。
真理亜は言われた通りに精神を同調させる。
気が少女から炎に送られ、力が強くなる。フェニックスはフードの奥で暗い笑みを浮かべていた。
「王よ。あなたの元へ生贄を送ります。どうか私の願いを叶えてくださいよ」
力が少しづつ抜かれ、真理亜の意識は暗闇へと落ちていった。ただヴァンパイアを倒すことだけを願って。
兄からは中学生の女の子が夜に出歩くのは補導されるから止めろと言われたが、ヴァンパイアは夜に現れるのだ。こちらも夜に出ないわけには行かなかった。
「シャーペンの芯が切れちゃった。ちょっと買ってくるね」
そう誤魔化すように言って家を飛び出し、そして今走っている。
真理亜とて何も算段もなくこの夜を選んだわけではない。何か不穏な物が動き出そうとしている気配を感じるのだ。町の人達は気づいていないようだが。
それは町の地表からいずれ吹き出しそうに近づいている。ヴァンパイアと関係があるかは分からないが、魔の物であるのは確かだ。
高い霊的能力でそれを察知した真理亜は、自分の予感が示すままに自転車を漕いで走っていった。
そして、何回目かの角を曲がって、街灯の照らす人気のない暗い道を走っているところで少女の予感は実感へと変わった。
「これはビンゴね」
感じる気配がヴァンパイアに関係があるかはまだ分からないが、明らかに邪悪な気だ。ならばハンターにとっては倒すべき敵に繋がっているはず。
「待ってなさいよ。必ず尻尾を掴んでみせる!」
目標を捉えた真理亜は調子に乗って自転車を漕ぐ速度を上げていった。
「真理亜の奴、遅いな」
家で紫門は時計の針を気にしながら妹の帰りを待っていた。コンビニなんて自転車で十分ぐらいの距離だ。すぐに行って帰ってこれる。だから夜に外出する許可を与えてやって見送ったのだが……
「まさかあいつヴァンパイアを倒しに行ったんじゃないだろうな!」
真理亜の性格を考えればありそうなことだった。夜になるとうずうずしているようだったし。気が付いた紫門はすぐに自転車を飛ばして最寄りのコンビニへと向かった。
店内に入り、棚を見る。
シャーペンの芯は売っている。だから売り切れだからと他に行った可能性は無い。
しかし、真理亜の姿がない。途中でもすれ違わなかった。
退屈そうにしている店員を見れば、しばらく客が来ていないことは明らかだ。
見てくれは可愛くて最近ヴァンパイアの騒動で有名になった真理亜が来れば、店員はもっと嬉しそうにニコニコしているはずだから。そう兄は思う。
「冗談じゃないぞ!」
真理亜が補導されれば責任は自分や家族にまで及ぶ。今のような平穏な暮らしは送れなくなるかもしれないし、中学一年生の女の子を夜の町で放置して遊ばせた保護者失格なんてレッテルを貼られてはたまったものではない。
前の夜は校庭にみんながいたから良かったが、今度はそうはいかない。
「早まった真似はするなよ、真理亜!」
紫門はコンビニから再び自転車を飛ばす。彼の行く先はヴァンパイアの住む家だった。
暗く寂しいライトだけが照らす路上にボロを纏った人物が立っていた。彼は炎を纏った槍を振り下ろし、結果が出るのを待ちながら思案していた。
「どうやら生半可な力では王への謁見は叶わないようですね。もう数か所巡ってみますか。周囲を突き崩せば中央をさらけ出すことも出来るかもしれません。数もまた力なりか」
彼は踵を返して立ち去ろうとする。だが、少女の凛とした声に呼ばれてその足を止めた。
「待ちなさい! 悪党!」
「私を悪党呼ばわりですか。正義を為しにこの星へ来た私を!」
フェニックスは振り返る。その先にいた少女は真理亜だった。自転車を降りて近づいてくる少女がただ者でないのはフェニックスにはすぐに分かった。
訝し気に見つめる彼に向かって、少女は問う。厳しい口調で。
「あなたは誰!? ここで何をしているの? ヴァンパイアの仲間なの!?」
「ククク……ふはははは」
誰がヴァンパイアの仲間なものか。誰のせいで苦労していると思っているのか。
フェニックスにとってはあまりにも可笑しい質問で、つい心の底からの笑いを漏らしてしまった。警戒を強める少女を手を出してやんわりと宥める。
「失礼。あまりにも可笑しい質問だったのでね。私はフェニックス。この星の邪悪を滅するためにここへ来て、今ヴァンパイアを倒すための布石を打っていた所なのですよ」
「あなたもヴァンパイアを倒すために!?」
「ええ」
目的が同じと聞いて真理亜は警戒は解かないまでも緩めた。フェニックスは親し気に言う。ヴァンパイアを倒すなら何でもいいとばかりに。
「ですが、策を動かすには私の力では足りないようなのです。誰かヴァンパイアを憎んでいて手を貸してくれるとても能力が高い良い人がいればいいのですけどね」
あまりにもストレートなフェニックスの誘い。彼は真っすぐに真理亜を見ている。
怪しい誘いではあったが、それよりも真理亜はヴァンパイアを見つけて倒すことを望んでいた。彼女の考えはすぐに纏まった。
「いいわ。ヴァンパイアを倒すためだもの。あたしは何をすればいい?」
「では、私の炎に同調し力を与えてください。それを彼の元へ送ります」
フェニックスの手に燃える炎が真理亜へと近づけられる。ただの炎でないことはすぐに分かった。正体は掴めないがヴァンパイアを倒すためだ。
真理亜は言われた通りに精神を同調させる。
気が少女から炎に送られ、力が強くなる。フェニックスはフードの奥で暗い笑みを浮かべていた。
「王よ。あなたの元へ生贄を送ります。どうか私の願いを叶えてくださいよ」
力が少しづつ抜かれ、真理亜の意識は暗闇へと落ちていった。ただヴァンパイアを倒すことだけを願って。
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