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第1話
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世界中に不思議な洞窟が現れたのは何年前のことだっただろうか。
愛華はよく覚えていなかったが、幼稚園ぐらいの頃にはすでにテレビで特集が組まれて騒がれていたような気がする。
誰からともなくダンジョンと呼ぶようになったその洞窟。そこから多くのモンスター達が現れた。
世界は少しパニックになったが人類の対応は早かった。モンスターに対処するべく出資者達が集まってギルドと呼ばれる組織が結成され、多くの勇敢な若者達がそこに冒険者として登録してモンスターの討伐に当たることになったのだ。
軍隊はすでに過去の物となった。花形の冒険者達の放つスキルと呼ばれる超常的な特殊能力はどんな近代兵器をも軽く凌駕する威力と柔軟性を備え、みんなが彼らに憧れ冒険者になることを志願した。
そんな時代、モンスターと冒険者の戦いなど遠くの別世界の出来事としか思えないような田舎町にも冒険者に憧れる者達がいる。
ごく普通の中学生の少女、相澤愛華はクラスのリーダー格の少年武田陽斗のグループについて学校の裏山に出来たダンジョンにやってきていた。
このダンジョンは弱いモンスターしか出ない場所で、近所の人々からはあまり危険視されてはいないが、ここに近づいてはいけないよ程度のことは言われる戦いの練習場所には持ってこいの場所なのだ。
そんなダンジョンの洞窟で、愛華はパーティーの仲間達の応援をしていた。
クラスメイトの男子達がモンスターと戦っている。
「陽斗君、スライムがそっち行ったよ!」
「言わなくても分かってる!」
元気なスポーツ少年の陽斗が安物の剣を手に、スライムに果敢に挑んでいく。恐れを知らない彼はまさしく勇者のようだ。その活躍ぶりには女子なら誰もが目を奪われることだろう。
だが、彼だけを見ているわけにはいかない。あたしは他のパーティーメンバーにも目を移す。
「修哉君、コウモリが編隊を組んでこっちに来てるよ!」
「騒がないでください。気が散ります」
眼鏡の秀才タイプの彼は少しわずらわしそうに眉を顰めながらも、呪文を唱えて攻撃を放つ。
コウモリの心配は無さそうだ。あたしは足元に近づいてくる物に気が付いた。
「孝二君! あたしの足元に大きなダンゴムシがいるんだけど!」
「虫ぐらい自分で対処しろよ!」
「ええー!」
格闘家タイプの彼はすばしっこいネズミのような敵と格闘を繰り広げている。攻撃がなかなか当たらないようで、すっかりムキになっている。
ダンゴムシは自分で何とかするしか無さそうだ。あたしはとりあえずその場を移動することにした。
ダンゴムシは追ってこなかった。良かった。狙われてなかった。あたしはほっと安堵の息を吐いた。
そう時間を掛けることもなく、モンスター達は順調に退治されていった。
ここのモンスター達は弱いのだ。
今日のところは全部退治したが明日になればまた再ポップして、あたし達の練習台となることだろう。
「今日も楽勝だったね」
完全勝利とは気持ちの良いものだ。
ダンジョンから出てあたしは上機嫌だったのだが、陽斗達は何だかムスッとした顔をしていた。
それを不思議に思って、あたしは陽斗の顔を覗き込むようにして訊ねた。
「どうかした? 陽斗。何だか浮かない顔をして」
「うわ! お前、顔近えよ」
「ごめん」
あたしは離れて彼と向かい合った。
「前から言おうと思ってたんだけどよ」
陽斗はそう前置きして、少し頭を掻きむしってから言った。
「やっぱり言っておくか」
「うん、言って」
あたしは気楽に応じる。彼らとは小学校からパーティーを組んでいる仲なのだ。何も遠慮することは無いと思った。
彼は言う。いつになく真面目な顔をして。
「このパーティーにな。お前いらないわ」
「え!?」
あたしは思わず絶句してしまった。いらないとはどういうことだろう。わけが分からなかった。
彼らとはずっと一緒にパーティーを組んでいたのに。
他のパーティーメンバーに目を向けると、修哉と孝二も同じように浮かない顔をしていた。
そして、彼らも同じようなことを言った。あたしをいらないと。そう言ったのだ。
「君ってくだらないことで騒ぎますし」
「いや、別にあたしはくだらないことでなんて騒いでないよ!? 騒いでないよね!?」
「ただの虫で騒いでただろ」
「だってこんな大きなダンゴムシだったんだよ! こーんなに大きかったんだよ!」
あたしは手で大きさを表現して見せる。
「こーんなに! これぐらいの!」
「とにかく!」
さらに言い訳を重ねようとすると、それを遮るようにパーティーのリーダー格の陽斗が声を上げて言った。
「もうお前来なくていいからな!!」
「ええええ!?」
リーダーの言葉に反対を唱える仲間はいなかった。
こうして、あたしはパーティーから追放されたのだった。
愛華はよく覚えていなかったが、幼稚園ぐらいの頃にはすでにテレビで特集が組まれて騒がれていたような気がする。
誰からともなくダンジョンと呼ぶようになったその洞窟。そこから多くのモンスター達が現れた。
世界は少しパニックになったが人類の対応は早かった。モンスターに対処するべく出資者達が集まってギルドと呼ばれる組織が結成され、多くの勇敢な若者達がそこに冒険者として登録してモンスターの討伐に当たることになったのだ。
軍隊はすでに過去の物となった。花形の冒険者達の放つスキルと呼ばれる超常的な特殊能力はどんな近代兵器をも軽く凌駕する威力と柔軟性を備え、みんなが彼らに憧れ冒険者になることを志願した。
そんな時代、モンスターと冒険者の戦いなど遠くの別世界の出来事としか思えないような田舎町にも冒険者に憧れる者達がいる。
ごく普通の中学生の少女、相澤愛華はクラスのリーダー格の少年武田陽斗のグループについて学校の裏山に出来たダンジョンにやってきていた。
このダンジョンは弱いモンスターしか出ない場所で、近所の人々からはあまり危険視されてはいないが、ここに近づいてはいけないよ程度のことは言われる戦いの練習場所には持ってこいの場所なのだ。
そんなダンジョンの洞窟で、愛華はパーティーの仲間達の応援をしていた。
クラスメイトの男子達がモンスターと戦っている。
「陽斗君、スライムがそっち行ったよ!」
「言わなくても分かってる!」
元気なスポーツ少年の陽斗が安物の剣を手に、スライムに果敢に挑んでいく。恐れを知らない彼はまさしく勇者のようだ。その活躍ぶりには女子なら誰もが目を奪われることだろう。
だが、彼だけを見ているわけにはいかない。あたしは他のパーティーメンバーにも目を移す。
「修哉君、コウモリが編隊を組んでこっちに来てるよ!」
「騒がないでください。気が散ります」
眼鏡の秀才タイプの彼は少しわずらわしそうに眉を顰めながらも、呪文を唱えて攻撃を放つ。
コウモリの心配は無さそうだ。あたしは足元に近づいてくる物に気が付いた。
「孝二君! あたしの足元に大きなダンゴムシがいるんだけど!」
「虫ぐらい自分で対処しろよ!」
「ええー!」
格闘家タイプの彼はすばしっこいネズミのような敵と格闘を繰り広げている。攻撃がなかなか当たらないようで、すっかりムキになっている。
ダンゴムシは自分で何とかするしか無さそうだ。あたしはとりあえずその場を移動することにした。
ダンゴムシは追ってこなかった。良かった。狙われてなかった。あたしはほっと安堵の息を吐いた。
そう時間を掛けることもなく、モンスター達は順調に退治されていった。
ここのモンスター達は弱いのだ。
今日のところは全部退治したが明日になればまた再ポップして、あたし達の練習台となることだろう。
「今日も楽勝だったね」
完全勝利とは気持ちの良いものだ。
ダンジョンから出てあたしは上機嫌だったのだが、陽斗達は何だかムスッとした顔をしていた。
それを不思議に思って、あたしは陽斗の顔を覗き込むようにして訊ねた。
「どうかした? 陽斗。何だか浮かない顔をして」
「うわ! お前、顔近えよ」
「ごめん」
あたしは離れて彼と向かい合った。
「前から言おうと思ってたんだけどよ」
陽斗はそう前置きして、少し頭を掻きむしってから言った。
「やっぱり言っておくか」
「うん、言って」
あたしは気楽に応じる。彼らとは小学校からパーティーを組んでいる仲なのだ。何も遠慮することは無いと思った。
彼は言う。いつになく真面目な顔をして。
「このパーティーにな。お前いらないわ」
「え!?」
あたしは思わず絶句してしまった。いらないとはどういうことだろう。わけが分からなかった。
彼らとはずっと一緒にパーティーを組んでいたのに。
他のパーティーメンバーに目を向けると、修哉と孝二も同じように浮かない顔をしていた。
そして、彼らも同じようなことを言った。あたしをいらないと。そう言ったのだ。
「君ってくだらないことで騒ぎますし」
「いや、別にあたしはくだらないことでなんて騒いでないよ!? 騒いでないよね!?」
「ただの虫で騒いでただろ」
「だってこんな大きなダンゴムシだったんだよ! こーんなに大きかったんだよ!」
あたしは手で大きさを表現して見せる。
「こーんなに! これぐらいの!」
「とにかく!」
さらに言い訳を重ねようとすると、それを遮るようにパーティーのリーダー格の陽斗が声を上げて言った。
「もうお前来なくていいからな!!」
「ええええ!?」
リーダーの言葉に反対を唱える仲間はいなかった。
こうして、あたしはパーティーから追放されたのだった。
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