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第4話 魔法研究部へ向かう
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昼休みが終わって午後の授業が始まる。教科書を開きながらミリエルは周囲を警戒していた。
謎の声は授業の内容を知っていた。黒板に書かれた問題のヒントを教えてくれたのだから、黒板の見える場所にいるのは絶対だ。
ならば声を送ってきている犯人は教室にいる誰かのはずだ。そう睨んで周囲の様子を伺っていたのだが……
「じゃあ、次を……ミリエルさん、読んでくださいざます」
「ひゃい!?」
いきなり当てられて変な声を上げて立ち上がってしまった。次? 次ってどこだ? 聞いてなかった……
先生が怪訝な顔をして注意してくる前に中から声が聞こえてきた。
『35ページだぞ』
「あ、35ページね」
謎の声を気にするのは後だ。今はとにかく読まなければならない。
ミリエルは35ページを開いて読んでいく。静かな教室に少女の声はとても澄んで聞こえた。
「もう結構ざます。さすがはミリエルさん。良い声でざました」
「はあ」
何とか読み終わって席につく。腰を下ろすなり声は間髪入れずに聞こえてきた。
『よく読めたものだな』
「むかっ」
ミリエルはびくっとして立ち上がって周囲に向かって怒鳴ろうとしたのを何とか我慢した。
授業は静粛に続けられていく。みんな真面目に勉強している。危うくこの空気を壊すところだった。
落ち着いて席につく。
『俺が言うのも何だが授業は聞いた方がいいのではないか。人間の学問というのもこれはこれでなかなか興味深いものだ。人間はこうやって教育されていくものなのだな』
「誰のせいで気が散ったと思って……!」
ミリエルは苛立ったが相手の挑発に乗ってはいけないとグッと堪えた。またいきなり当てられては目も当てられない。
気にしないことにして今は授業に集中することにした。
今日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。生徒達は起立して礼をする。
午後の授業も終わって放課後。解放感に溢れる生徒達で賑やかな教室を後にして、ミリエルはネネに案内されて魔法研究部へと向かうことにした。
これから魔法に詳しい先輩を紹介してもらって、この謎の声が聞こえる現象について解き明かしてもらうのだ。
ネネに先導されて歩き慣れた自分の学年の教室が並ぶ廊下を突き進み、慣れない部室へと続く廊下へと踏み込む。
これより先は後戻り出来ない。そんな緊張感を胸にミリエルは歩いていく。
「こっちだよ、ミリエルちゃん」
「うん」
楽しそうに案内してくれるネネの背中の後についていきながら、ミリエルは自分の体を見下ろした。
謎の声がさっきから静かだ。もしかしたらいなくなったのだろうか。だとしたらこれから行くことが無駄になるのだが。
そんなちょっとした焦りを感じていると声がした。
『なんだ? この俺と話がしたいのか?』
すぐに声はいなくなったのではと不安に陰っていたことを後悔した。ミリエルは不満を呟く。先を行くネネに聞こえないように小声で。
「さっきから静かだったじゃない」
『初めて見る場所なのでな。今の人間の文明のレベルがどんな物なのか見ていたのだ」
この声の主もここを通るのは初めてなのだろうか。今もどこからか自分達を監視しているのだろうか。
素早く後ろを振り向いてみるが、怪しい人影は見えなかった。
『早く歩けよ。友達に置いていかれるぞ』
謎の声が急かしてくる。誰のせいだと思いながらミリエルは前を向いて、ネネの背中に小走りで近づいた。
「ミリエルちゃん、ちゃんとついてきてる?」
「うん、ついてきてるよ」
優しく気にかけてくれる友達に答える。ネネは気前よく言葉を続けた。
「部室は奥の方だからね。ずっと前の先輩が魔術の研究には静かな方が良いからと今の場所を選んだらしいんだ」
「ふーん、そうなんだ」
ネネの言葉に答えながら、ミリエルは自分の内心に話しかけた。
「誰か知らないけど、すぐにあんたの正体を突き止めてやるからね」
『それは楽しみだ。ここの人間はこの俺の力をどう計るのだろうな』
「むう」
声が余裕ぶっているのが気に入らない。だが、それも後少しの辛抱だ。親友のネネが紹介してくれる魔法に詳しい先輩ならこの問題をすぐに解決してくれるはず。
ミリエルはまだ見ぬ上級生を前向きに信頼する。
これが駄目なら先生に相談しようか。ミリエルはすぐに首を横に振ってその考えを否定した。
今でさえ先生には何だか目をつけられてる気がするのに、これ以上余計な火種を増やしたくなかった。
思考に耽っているうちに目的地に到着した。案内を終えたネネが立ち止まって振り返り、ミリエルも足を止めた。友達と一緒に横のドアの方を見る。
「ミリエルちゃん、ここが魔法研究部の部室よ」
「ここが魔法研究部の部室か」
初めて来る場所だ。ミリエルは息を呑んで見つめる。見た感じは普通のどこにでもある部屋のドアのようにしか見えない。
だが、謎の声の人物はミリエルの気づかない別の事を感じ取っているようだった。
『異質な気配を感じるな。ただ者でないのは確かなようだ』
「じゃあ、期待できるね」
ミリエルはちょっと気分を弾ませる。
「開けるね」
ミリエルが嬉しそうなのを好意と受け取ったのかネネが温和な顔に微笑みを浮かべて率先してドアを開けた。ミリエルは気の良い友達の後について部室の中へと踏み込んでいった。
謎の声は授業の内容を知っていた。黒板に書かれた問題のヒントを教えてくれたのだから、黒板の見える場所にいるのは絶対だ。
ならば声を送ってきている犯人は教室にいる誰かのはずだ。そう睨んで周囲の様子を伺っていたのだが……
「じゃあ、次を……ミリエルさん、読んでくださいざます」
「ひゃい!?」
いきなり当てられて変な声を上げて立ち上がってしまった。次? 次ってどこだ? 聞いてなかった……
先生が怪訝な顔をして注意してくる前に中から声が聞こえてきた。
『35ページだぞ』
「あ、35ページね」
謎の声を気にするのは後だ。今はとにかく読まなければならない。
ミリエルは35ページを開いて読んでいく。静かな教室に少女の声はとても澄んで聞こえた。
「もう結構ざます。さすがはミリエルさん。良い声でざました」
「はあ」
何とか読み終わって席につく。腰を下ろすなり声は間髪入れずに聞こえてきた。
『よく読めたものだな』
「むかっ」
ミリエルはびくっとして立ち上がって周囲に向かって怒鳴ろうとしたのを何とか我慢した。
授業は静粛に続けられていく。みんな真面目に勉強している。危うくこの空気を壊すところだった。
落ち着いて席につく。
『俺が言うのも何だが授業は聞いた方がいいのではないか。人間の学問というのもこれはこれでなかなか興味深いものだ。人間はこうやって教育されていくものなのだな』
「誰のせいで気が散ったと思って……!」
ミリエルは苛立ったが相手の挑発に乗ってはいけないとグッと堪えた。またいきなり当てられては目も当てられない。
気にしないことにして今は授業に集中することにした。
今日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。生徒達は起立して礼をする。
午後の授業も終わって放課後。解放感に溢れる生徒達で賑やかな教室を後にして、ミリエルはネネに案内されて魔法研究部へと向かうことにした。
これから魔法に詳しい先輩を紹介してもらって、この謎の声が聞こえる現象について解き明かしてもらうのだ。
ネネに先導されて歩き慣れた自分の学年の教室が並ぶ廊下を突き進み、慣れない部室へと続く廊下へと踏み込む。
これより先は後戻り出来ない。そんな緊張感を胸にミリエルは歩いていく。
「こっちだよ、ミリエルちゃん」
「うん」
楽しそうに案内してくれるネネの背中の後についていきながら、ミリエルは自分の体を見下ろした。
謎の声がさっきから静かだ。もしかしたらいなくなったのだろうか。だとしたらこれから行くことが無駄になるのだが。
そんなちょっとした焦りを感じていると声がした。
『なんだ? この俺と話がしたいのか?』
すぐに声はいなくなったのではと不安に陰っていたことを後悔した。ミリエルは不満を呟く。先を行くネネに聞こえないように小声で。
「さっきから静かだったじゃない」
『初めて見る場所なのでな。今の人間の文明のレベルがどんな物なのか見ていたのだ」
この声の主もここを通るのは初めてなのだろうか。今もどこからか自分達を監視しているのだろうか。
素早く後ろを振り向いてみるが、怪しい人影は見えなかった。
『早く歩けよ。友達に置いていかれるぞ』
謎の声が急かしてくる。誰のせいだと思いながらミリエルは前を向いて、ネネの背中に小走りで近づいた。
「ミリエルちゃん、ちゃんとついてきてる?」
「うん、ついてきてるよ」
優しく気にかけてくれる友達に答える。ネネは気前よく言葉を続けた。
「部室は奥の方だからね。ずっと前の先輩が魔術の研究には静かな方が良いからと今の場所を選んだらしいんだ」
「ふーん、そうなんだ」
ネネの言葉に答えながら、ミリエルは自分の内心に話しかけた。
「誰か知らないけど、すぐにあんたの正体を突き止めてやるからね」
『それは楽しみだ。ここの人間はこの俺の力をどう計るのだろうな』
「むう」
声が余裕ぶっているのが気に入らない。だが、それも後少しの辛抱だ。親友のネネが紹介してくれる魔法に詳しい先輩ならこの問題をすぐに解決してくれるはず。
ミリエルはまだ見ぬ上級生を前向きに信頼する。
これが駄目なら先生に相談しようか。ミリエルはすぐに首を横に振ってその考えを否定した。
今でさえ先生には何だか目をつけられてる気がするのに、これ以上余計な火種を増やしたくなかった。
思考に耽っているうちに目的地に到着した。案内を終えたネネが立ち止まって振り返り、ミリエルも足を止めた。友達と一緒に横のドアの方を見る。
「ミリエルちゃん、ここが魔法研究部の部室よ」
「ここが魔法研究部の部室か」
初めて来る場所だ。ミリエルは息を呑んで見つめる。見た感じは普通のどこにでもある部屋のドアのようにしか見えない。
だが、謎の声の人物はミリエルの気づかない別の事を感じ取っているようだった。
『異質な気配を感じるな。ただ者でないのは確かなようだ』
「じゃあ、期待できるね」
ミリエルはちょっと気分を弾ませる。
「開けるね」
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