私と彼のいる珈琲店

けろよん

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第1話

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 私は旅をしている旅人だ。
 別に使命感に燃えたり、目的があったりするわけじゃない。
 のんびりと気ままな旅をするのが好きなだけ。
 そんな旅先でふと見かけた珈琲店があった。
 何となくピンと来た。私は自分の勘と興味を引いた物には立ち寄ることにしている。
 雰囲気も良さそうな店なので入ってみることにした。
 カランコロン。軽快な音を聞きながら店に入る。
 普通なら『いらっしゃいませー』と気分良く迎えられるところだろうが。
「ああん? てめえ、何をしに来た?」
 なぜか店員と思しき男に睨まれた。長身でかっこよくて店の雰囲気にあったお洒落と思える男子だが、なぜ睨まれないといけないのか。
 回れ右して帰っても良かったが、私は客であるのだし、びびって逃げたと思われても癪に障る。
 正直に答えることにした。
「コーヒーを飲みに来たんですけど」
「そうかよ。だったらさっさと座れよ」
 何という横柄な態度だろう。店員は客を案内しようともしない。
 私が不満を持って彼を睨み付けていると、逆に睨み返されてしまった。
「お前、俺が選んでやらないと自分の座る席も決められないのか?」
「選べますよ!」
 わたしはずんずんと店内を進むと、あえて彼のすぐ傍の正面の席に陣取った。
 今になって気づいたが、店内には良い音楽が流れていた。
「良い曲ですね」
 私は耳に心地のいい音楽に気分をよくして言うのだが、彼はムッとしたままだった。
「お前に音楽のセンスが分かるのかよ」
「分かりますよ!」
「お前は偉い音楽の先生か何かなのかよ」
「偉い音楽の先生じゃなくても曲の良さは分かるでしょう?」
「フッ、ちがいねえ」
 あ、ちょっと笑った。
 何だ、可愛いところもあるんじゃないか。
 私が少し気分をよくして彼を見ていると、彼は何かを差し出してきた。
 メニュー表だ。
「選べよ。コーヒー飲みに来たんだろ?」
「ほい来た」
 私はメニューに目を通し、選んだ。
「じゃあ、カプチーノでお願いします」
「お前、珈琲店まで来てカプチーノなんて飲むのかよ」
「悪い?」
「別に悪かねえよ。ちょっと待ってろ」
 待てと言われたので、しばらく待つ。
 彼がカプチーノを持って、テーブルに置いた。
「ごゆっくり」
 せっかくなのでゆっくりしてやることにする。
 カプチーノは美味しかった。
 冷めるのももったいないのでちょっと急ぐことにした。
 静かな店だ。あまり流行ってないのだろうか。
 ゆっくり飲んでいたのに、飲み終わってしまった。
 私は伝票を持って立ちあがった。
 彼がレジを打って、私はお釣りを受け取った。
 良い手をしていると思った。
「また来いよ」
「はい」
 自然と言葉が口に出ていた。
 私はまた来ても良いと思えるぐらいにはこの店を気に入ったようだ。
 少し寂しいと思いながら旅を続けることにした。
 吐いた息はカプチーノの甘い香りがした。
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