当たり前の幸せ

ヒイロ

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後日談

その後.1

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実家に大人しくしていたが朝と夜数時間しか煇に会えないことがどんどん辛くなっていた。家にいれば煇が帰って行くことがない。また明日と別れの言葉がこんなにも寂しいなんて。

「お母さん今日家に帰りたい。」

朝食の片付けをしていたお母さんが笑った。

「意外と我慢したね。3日で帰ると思ってた。」

今日で10日。もっと早く帰ると思われていたらしい。

「じゃあ車で送るから。準備しておいで。」

うん。と返事して自分の部屋で帰る準備をする。大した量ではないが北海道の時の荷物もあったので車で送ってくれるのは助かる。

「家に何もないと思うから色々食材も入れとくよ。」

「ありがとう。」

帰る途中でスーパーに寄ってもらい色々買い足した。

家の前でお母さんと別れる。

「身体には気を付けて。体重戻ってないんだからあんまり無理しないようにね。」

「うん。わかってる。お母さん本当にありがとう。」

じゃあと言って別れ久しぶりの家に帰ってきた。

煇に連絡はしていない。とりあえず家の掃除からやらないと。

食事の支度をしてると電話が鳴る。煇からだ。

「もしもし、今から向かうよ。」

「あっ、煇ごめん家に帰ってきちゃった。」

「えっ。拓。お母さんと約束しただろちゃんと体重戻るまで実家にいるって。」

「うっ…。だって煇に会えないの寂しいんだもん。」

「だから毎日通ってるんだろ。俺も我慢してるんだから。許してもらうにはね。拓。」

「お母さんには許してもらったよ。3日で帰ると思ってたみたいだけど。」

「…そっか。春人さんには後で電話しとくよ。そろそろお願いしようかと俺も思ってたから。重り付けようかとマジで思ってたし。」

「ははっ、すぐにバレちゃうよ。」

「拓愛してる。」

「僕も。」

その日は煇の好きな物ばかりを作った。

「やっぱり拓のご飯が一番美味しい。」

「お母さんの美味しいって言ってたくせに。」

「そりゃあ美味しいよ。プロの味だもの。でも拓のが一番美味しい。だって俺の好みの味付けだし。」

「そう?」

「この間の魚アラ煮拓が作っただろ。」

「分かったの?」

「もちろん。何年拓のご飯食べてると思ってんの。あれが家の味だろ。」

本当に嬉しいかった。煇と過ごした時間がご飯一つで分かるなんて。

それから忙しいけど充実した日々が続きオリンピックも大盛況で終わった。

「拓そろそろ発情期じゃない?」

8月も半ばに近づいていた。予定で行けばそろそろだ。

「この間の発情期1人にしてしまってごめんね。これからは一緒にいるから。」

僕にとってあの発情期が今までで最悪な記憶だがきっと煇が忘れさせてくれると信じている。

「うん。」

「その前に話し合いをしたいんだけどいい?」

「わかった。」

その日は、休みで晩御飯を食べてから話そうということになった。二人で買い物に行きその日は二人でご飯を作った。

「何でこんなに綺麗に切れるんだ?同じようにやってるんだけどなぁー。」

「そりゃあ主夫歴長いですから。」

と、どや顔したらそろそろ俺も料理覚えないとと言った。僕が作るから覚える必要ないのになぁ~と思った。二人で晩御飯の片付けもしてコーヒーを入れた。

「話ししようか。」

「うん。」

緊張はしていたが不安はなかった。

「拓。今度の発情期で子供を作りたい。子供が欲しい。拓と俺の子供が。」

「えっ。ホントに?」

少し照れてる煇が僕を見て頷く。

「今頃気付くなんて遅いのかもしれないけど、春人さんが言ってた愛の結晶が欲しくなった。拓が産む側だし大変なのは分かってる。でも、拓との愛の形として子供が欲しいんだ。産むのを代わってやれないから大変なのは拓だけになってしまう。でも、俺も出来る限り手伝うから。駄目か?」

まさか子供の話しとは思ってもいなくて驚くとともに嬉しかった。

「びっくりしたけど嬉しい。僕も欲しいと思ってた。でも二人の問題でしょ。どう話していいか分からなかったから煇から言ってくれて本当に嬉しい。」

お母さんの話を聞いてから子供がいる生活がどんなに幸せだろうと思っていた。だけどやっぱりいらないと言われたらと思うと言い出せないでいた。

「ありがとう拓。」

「お願いします。っておかしいかな。ふふっ。」

そして次の発情期に子作りすることに決まった。
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