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1章.現代
23.
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いつの間にか眠っていて晴一に起こされた。すごくいい夢を見た。晴一と毎日一緒に起きて朝食を食べる夢だった。いってくると晴一は言って僕のおでこにキスをする。それを見送って洗濯を干す夢だった。
「夢見てた?幸せそうな顔して寝てたぞ。オムライスでも食べてたか?」
「ううん。洗濯物干してた。晴一が行ってきますってキスしてくれる夢…。」
晴一が嬉しそうに微笑む。
「大丈夫。それは夢じゃなく現実になるから。」
そろそろ携帯を返さないといけない。
「晴一から切って僕からは無理。」
わかったと晴一が好きだよと言って電話を切る。今日を失敗出来ない。手島さんに携帯とシャツを渡す。僕は裸なので目を合わしてくれない。
「あー、えっと智美さんから連絡きたら言いますのでそれまで部屋にいてください。あと、智美さんが帰ってきたらベッドに横になって辛そうな顔でいてくださいね。」
「手島さん、本当にありがとうございます。」
「いえ。大丈夫です。上手くいきますから。さぁ、部屋に戻って。あんまり優くんの裸を見るなと言われてますから。智美さんより俺は飛田さんに殺されちゃうよ。」
お互いに笑って部屋に戻った。数時間するとあの人が戻ってくると言う。僕はベッドに横になる。自分で出したものとはいえ気持ち悪いし乾いているが匂いもすごい。
「ただいま~どうだった?」
リビングで声がする。帰ってきた。僕は晴一が僕を嫌いと言って出ていく想像をする。想像でも晴一が傷つくのは考えたくなかった。
「智美さーん。お帰り~もうさぁ、泣いちゃって泣いちゃって。嫌がるあの子が可哀想で燃えちゃったよ。」
二人で部屋に入ってきた。乱れたシーツ、あちらこちらに飛び散った体液、裸の僕を見てあの人は満足気な顔だった。
「でも、身体綺麗ね。あなたことだから噛み跡あるかと思ったけど。」
言われるとは思っていた。身体に跡を付けることは晴一が許さなかったのだ。振りだとしても。首輪はハサミや実際に噛んでもらった。
「途中意識なかったからなぁー。項だけ狙ってたのかも。それに意識あるときは…嫌じゃん。自分のとか付いてるんだよ。なるべく触りたくもないし。」
「ははっ、酷い人。で、中出したんでしょ。今度は妊娠してるわね。確実に。ちょっとあんた汚ないから早くお風呂入って。部屋も綺麗にしてもらわないと。臭いわ。」
のろのろと起き上がり部屋から出ていく。二人を通りすぎるとき、手島さんがあの人に気付かれないようにちょんと肩に触れた。上手くいったんだと安心した。二人で出かける話をしている。安心してお風呂に入った。きっと手島さんが晴一にも連絡してくれるだろう。
「後は、待つだけ…。」
長くて3ヶ月。僕は助け出されるのを待つだけ。きっと上手くいく。ぎゅっと自分を抱いた。
それからも変わらない日々が続いた。学校には行くことはない。3食出されるご飯。体力を付けるために僕はきちんと食べる。晴一とも約束をしたから。逃げることもあるかもしれないから、体力をつけるように体重を増やすように言われた。そして部屋でストレッチもする。部屋の中で籠ってると筋肉も落ちる。腹筋はほとんどできないけど、身体を伸ばしたり部屋の中を歩き回ったりして過ごした。ハウスキーパーが来ている時は部屋を出ないように言われている。だから僕が部屋で何をやっているか知られることはない。くじけないようにいつもキースのキーホルダーを机に置いて見張ってもらってる。
「今日は腕立て伏せ10回は出来るように頑張るよ。見ててね。」
話し相手がいないので最近はいつも話しかけている。キースを目の前に置いていーちにーいと腕立て伏せをする。10回終わるとキースにキスをする。
1ヶ月が経った。まだ部屋から出られずにいた。それでも希望をもって毎日を過ごしていた。
2ヶ月経っても何も変わらなかった。僕はあと1ヶ月もあると思うように心がけた。挫けそうな心を何とか奮い立たせ、まだ大丈夫まだ大丈夫と呪文のように呟く。
ある日あの人が帰ってきた。最近ではほとんどマンションには帰ってこなかったので油断していた。キースのキーホルダーを机の上に置いたままだった。
「最近、よくご飯食べるって聞いてたからおかしいと思ってたのよね~つわりもないみたいだし。妊娠してないみたいね。あいつが種無しかあんたが病気なのかって所かしら。しかも何これ?飛田先輩にでも貰ったの?」
キーホルダーを取り上げられ内心焦る。騒いだ所で何も変わらない。
「むかつくのよねー。あんたが嬉しそうにしてるの見るの。」
そう言うとキースの頭と身体の部分を持ち引きちぎった。
「…っ。」
「そうそう。そういう顔してて。全くまた相手探さないと。その前に病院行った方がいいかしら。発育が遅いせいなのか、もしかしたら病気かもしれないわね。まぁ、どっちにしても本当面白くないわ。」
と言って蹴り倒された。鎖を短く持たれ逃げることも出来ない。顔も容赦なく蹴られる。鼻血が出ているが押さえることも出来ない。鎖を引っ張られるからだ。体力を付けたつもりだったが、まだこの人に力ではかなわなかった。
「はぁはぁはぁ…あースッキリした。じゃあ、また相手探してくるから大人しくしとくのよ。」
ドアが閉じる音が聞こえた。きっと明日は身体中腫れ上がっているだろう。立ち上がることも出来ず、目の前に真っ二つになったキールに手を伸ばす。
「…ごめん…ね。晴一から貰ったのに…僕の宝物。」
握り締めてそのまま意識がなくなった。
床で眠ったのもいけなかったんだろう。身体中痛くて本格的にヤバいと思った。いつもは手で庇うのだけど昨日は出来なかった。
「起き上がれないや。なんだか目もよく見えない気がする。血が付いてるのかな?鼻も詰まってる。血が中で固まったかも。息苦しいし。」
鼻声になってる。独り言をいう声が鼻声で可笑しくなった。床にもべったり血が付いている。乾いてない。そこでおかしいことに気付いた。もしかして血が止まってない?何時間気を失っていたのだろう。少しの間だったのかもしれないけど、かなりの血が流れている。力が入らない。
「もしかして、このまま死んじゃうのかな?」
その時扉が開いた。誰かが入ってきたけど分からない。
「あんた何やってんの?それより早く起きなさいよ。」
もしかしたら蹴られてから数分だったのかもしれない。
「優斗が話があるって食事をしながら今後について話合いたいって。初めてよ、発情期以外で優斗に会えるなんて。友華と別れて私と一緒になる話かしら。早く支度して。あなたも一緒にって言われてるんだから。」
そう言われても起き上がれない。無理やり起こされベッドに座らせられた。ハウスキーパーを呼んで支度をさせられた。初めて見るハウスキーパーは男の人だった。僕を憐れむような目で無言で支度を手伝ってくれた。鼻血も止まってホッとした。顔は腫れているだろうけど。
きっと僕を助け出すための話だ。やっとここから出れる。暴力のない世界に。
「あーこんなことなら、あんた蹴らなきゃよかったわよ。前みたいに上手く誤魔化してよ。」
はいと返事をして、立ち上がろうとしたがふらつく。何かに掴まらないと立ってられない。今日は曇りなのか薄暗いし。キースをそっとポケットに入れた。こんなところに置いとけない。
「なにあんた具合悪いの?面倒くさいわね~渡辺くんタクシーまでこれ連れてきて。」
抱き抱えられタクシーまで連れていかれる。浮かれ気分で前を歩くあの人に気付かれないように渡辺くんが小声で話しかけてきた。
「ごめんなさい。今までずっと君を助けられなくて。今日助けられるって聞いてる。だからだから…幸せになって…。」
タクシーに乗せられる時に冷たいタオルも渡された。顔を冷やす。やっぱり虐待に気付いていても助けない人がいるんだなと思った。僕はここらか抜け出せたら虐待をされてる子供達を救う仕事に付きたいそう思った。
「夢見てた?幸せそうな顔して寝てたぞ。オムライスでも食べてたか?」
「ううん。洗濯物干してた。晴一が行ってきますってキスしてくれる夢…。」
晴一が嬉しそうに微笑む。
「大丈夫。それは夢じゃなく現実になるから。」
そろそろ携帯を返さないといけない。
「晴一から切って僕からは無理。」
わかったと晴一が好きだよと言って電話を切る。今日を失敗出来ない。手島さんに携帯とシャツを渡す。僕は裸なので目を合わしてくれない。
「あー、えっと智美さんから連絡きたら言いますのでそれまで部屋にいてください。あと、智美さんが帰ってきたらベッドに横になって辛そうな顔でいてくださいね。」
「手島さん、本当にありがとうございます。」
「いえ。大丈夫です。上手くいきますから。さぁ、部屋に戻って。あんまり優くんの裸を見るなと言われてますから。智美さんより俺は飛田さんに殺されちゃうよ。」
お互いに笑って部屋に戻った。数時間するとあの人が戻ってくると言う。僕はベッドに横になる。自分で出したものとはいえ気持ち悪いし乾いているが匂いもすごい。
「ただいま~どうだった?」
リビングで声がする。帰ってきた。僕は晴一が僕を嫌いと言って出ていく想像をする。想像でも晴一が傷つくのは考えたくなかった。
「智美さーん。お帰り~もうさぁ、泣いちゃって泣いちゃって。嫌がるあの子が可哀想で燃えちゃったよ。」
二人で部屋に入ってきた。乱れたシーツ、あちらこちらに飛び散った体液、裸の僕を見てあの人は満足気な顔だった。
「でも、身体綺麗ね。あなたことだから噛み跡あるかと思ったけど。」
言われるとは思っていた。身体に跡を付けることは晴一が許さなかったのだ。振りだとしても。首輪はハサミや実際に噛んでもらった。
「途中意識なかったからなぁー。項だけ狙ってたのかも。それに意識あるときは…嫌じゃん。自分のとか付いてるんだよ。なるべく触りたくもないし。」
「ははっ、酷い人。で、中出したんでしょ。今度は妊娠してるわね。確実に。ちょっとあんた汚ないから早くお風呂入って。部屋も綺麗にしてもらわないと。臭いわ。」
のろのろと起き上がり部屋から出ていく。二人を通りすぎるとき、手島さんがあの人に気付かれないようにちょんと肩に触れた。上手くいったんだと安心した。二人で出かける話をしている。安心してお風呂に入った。きっと手島さんが晴一にも連絡してくれるだろう。
「後は、待つだけ…。」
長くて3ヶ月。僕は助け出されるのを待つだけ。きっと上手くいく。ぎゅっと自分を抱いた。
それからも変わらない日々が続いた。学校には行くことはない。3食出されるご飯。体力を付けるために僕はきちんと食べる。晴一とも約束をしたから。逃げることもあるかもしれないから、体力をつけるように体重を増やすように言われた。そして部屋でストレッチもする。部屋の中で籠ってると筋肉も落ちる。腹筋はほとんどできないけど、身体を伸ばしたり部屋の中を歩き回ったりして過ごした。ハウスキーパーが来ている時は部屋を出ないように言われている。だから僕が部屋で何をやっているか知られることはない。くじけないようにいつもキースのキーホルダーを机に置いて見張ってもらってる。
「今日は腕立て伏せ10回は出来るように頑張るよ。見ててね。」
話し相手がいないので最近はいつも話しかけている。キースを目の前に置いていーちにーいと腕立て伏せをする。10回終わるとキースにキスをする。
1ヶ月が経った。まだ部屋から出られずにいた。それでも希望をもって毎日を過ごしていた。
2ヶ月経っても何も変わらなかった。僕はあと1ヶ月もあると思うように心がけた。挫けそうな心を何とか奮い立たせ、まだ大丈夫まだ大丈夫と呪文のように呟く。
ある日あの人が帰ってきた。最近ではほとんどマンションには帰ってこなかったので油断していた。キースのキーホルダーを机の上に置いたままだった。
「最近、よくご飯食べるって聞いてたからおかしいと思ってたのよね~つわりもないみたいだし。妊娠してないみたいね。あいつが種無しかあんたが病気なのかって所かしら。しかも何これ?飛田先輩にでも貰ったの?」
キーホルダーを取り上げられ内心焦る。騒いだ所で何も変わらない。
「むかつくのよねー。あんたが嬉しそうにしてるの見るの。」
そう言うとキースの頭と身体の部分を持ち引きちぎった。
「…っ。」
「そうそう。そういう顔してて。全くまた相手探さないと。その前に病院行った方がいいかしら。発育が遅いせいなのか、もしかしたら病気かもしれないわね。まぁ、どっちにしても本当面白くないわ。」
と言って蹴り倒された。鎖を短く持たれ逃げることも出来ない。顔も容赦なく蹴られる。鼻血が出ているが押さえることも出来ない。鎖を引っ張られるからだ。体力を付けたつもりだったが、まだこの人に力ではかなわなかった。
「はぁはぁはぁ…あースッキリした。じゃあ、また相手探してくるから大人しくしとくのよ。」
ドアが閉じる音が聞こえた。きっと明日は身体中腫れ上がっているだろう。立ち上がることも出来ず、目の前に真っ二つになったキールに手を伸ばす。
「…ごめん…ね。晴一から貰ったのに…僕の宝物。」
握り締めてそのまま意識がなくなった。
床で眠ったのもいけなかったんだろう。身体中痛くて本格的にヤバいと思った。いつもは手で庇うのだけど昨日は出来なかった。
「起き上がれないや。なんだか目もよく見えない気がする。血が付いてるのかな?鼻も詰まってる。血が中で固まったかも。息苦しいし。」
鼻声になってる。独り言をいう声が鼻声で可笑しくなった。床にもべったり血が付いている。乾いてない。そこでおかしいことに気付いた。もしかして血が止まってない?何時間気を失っていたのだろう。少しの間だったのかもしれないけど、かなりの血が流れている。力が入らない。
「もしかして、このまま死んじゃうのかな?」
その時扉が開いた。誰かが入ってきたけど分からない。
「あんた何やってんの?それより早く起きなさいよ。」
もしかしたら蹴られてから数分だったのかもしれない。
「優斗が話があるって食事をしながら今後について話合いたいって。初めてよ、発情期以外で優斗に会えるなんて。友華と別れて私と一緒になる話かしら。早く支度して。あなたも一緒にって言われてるんだから。」
そう言われても起き上がれない。無理やり起こされベッドに座らせられた。ハウスキーパーを呼んで支度をさせられた。初めて見るハウスキーパーは男の人だった。僕を憐れむような目で無言で支度を手伝ってくれた。鼻血も止まってホッとした。顔は腫れているだろうけど。
きっと僕を助け出すための話だ。やっとここから出れる。暴力のない世界に。
「あーこんなことなら、あんた蹴らなきゃよかったわよ。前みたいに上手く誤魔化してよ。」
はいと返事をして、立ち上がろうとしたがふらつく。何かに掴まらないと立ってられない。今日は曇りなのか薄暗いし。キースをそっとポケットに入れた。こんなところに置いとけない。
「なにあんた具合悪いの?面倒くさいわね~渡辺くんタクシーまでこれ連れてきて。」
抱き抱えられタクシーまで連れていかれる。浮かれ気分で前を歩くあの人に気付かれないように渡辺くんが小声で話しかけてきた。
「ごめんなさい。今までずっと君を助けられなくて。今日助けられるって聞いてる。だからだから…幸せになって…。」
タクシーに乗せられる時に冷たいタオルも渡された。顔を冷やす。やっぱり虐待に気付いていても助けない人がいるんだなと思った。僕はここらか抜け出せたら虐待をされてる子供達を救う仕事に付きたいそう思った。
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