恋愛小説に踊らされている婚約者様へ。悪役令嬢になりますので早めの婚約破棄を所望します

ゆずこしょう

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卒業パーティ

卒業パーティ

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デザインを変えて1ヶ月半…

1時は間に合わないかもしれないと諦めかけたものの、何とか最後まで終わらせることが出来た。


「な、なんとか終わったわ…」

この3ヶ月。レオ様はずっと邸にいて、もはや家族のように馴染みすぎている。
最近では、お兄様と難しい話をしたり、お父様と品種改良した野菜について語っている。レオ様も研究などが好きなようで、目をきらきらさせながら研究室を見ているとあとからお兄様が教えてくれた。


「良かった…あまり手伝えなくてすまなかった。」


私が疲れているのか耳としっぽが項垂れているように見える。

レオ様は必死に助けてくれようとしたのだが…あまりに失敗が多く、手に針を何度も指していたのもあって…最後は殆ど見ていて貰うだけになっていた。


見ているだけだと飽きたりすることも多いと思うのに律儀にずっと見ていて、なんだかその姿が少し可愛らしくみえた。


「大丈夫ですよ。レオ様の意外な一面を知れてよかったです。さぁ!いよいよ明日は卒業パーティーですね!レオ様の卒業パーティーでもありますし、楽しましょう。」

卒業パーティーが終わればアドルフとの事もきっと全てが終わっているだろう。

約1年、ずっと恋愛小説に踊らされていた2人もそろそろ夢から覚める時間だ。

エミーリエとアドルフの最後がどうなるのか…それが今から楽しみでしかならない。

それと同時に、レオ様との時間が最後になると思うと少しだけど、本っ当に少しだけど寂しく感じる。

3ヶ月間、アドルフとずっと一緒であれば苦痛にしか感じないことがレオ様と一緒だと毎日が楽しかった。


「あ、あぁ。そうだな。そ、それと…ヴェロニカ。卒業パーティーのあと少し時間を貰えないだろうか?…」

卒業パーティーの後であれば特に何も無かっただろう。レオ様の言葉にこくりと頷いてから返事をする。


「いいですよ。そのまま帰るだけでしたから、その時声をかけてくださいませ。」


それだけ伝えると、明日に備えてお互い休むことにした。



⟡.·*.··············································⟡.·*.



「今日は卒業パーティー日和で良かったわね。」

カーテンを開けて大きく伸びをする。雲ひとつない快晴だ。

これだけ天気がいいと、天気も私たちの味方なそんな気がした。


「ヴェロニカお嬢様。あまり時間もありませんし、準備をしましょう。」

どうやら今回な久しぶりに縦巻きロールのウィッグを着けなくていいようだ。


「イザベラお嬢様より、今回はドレス似合う化粧にするように仰せつかっております。黒を基調としたドレスですので口紅は赤く致しましょう。あとアイメイクも少し濃いめの方が似合いますね。目尻をアイラインであげて、アイシャドウは暗めの色で…目頭に赤いシャドウをグラデーション乗せましょう。」

テキパキと準備をしていくハンナを見ているとあっという間に着替えが全て完成していた。


ドレスの形はベルラインなども考えたが、黒いドレスということもあったのでマーメイドドレス一択になった。

その分裾に行けば行くほど刺繍が映えるように工夫してある。ダンスを踊った時は鳳凰が舞うような動きになるのでそれも楽しみだ。


髪は下側纏めてもらい、手作りで作ったヘアアクセをつけたら完成だ。


「どう…かしら?」


「とても素敵です。ヴェロニカお嬢様。その姿を見ればレオナルド様もイチコロです。」

イチコロって…
別にそのためにこのドレスを作ったわけじゃないのだけど。


「さぁ、エントランスでレオナルド様がお待ちですよ。行きましょう。あっ!そういえば。イザベラお嬢様からこちらを預かっております。」

黒い鉄扇を渡して来るハンナ。


どこまで言ってもブレないハンナとイザベラお姉様にほっとした。


「やっぱり鉄扇は必要なのね…まぁ、何かあった時のために持っていくわ…」

2人で部屋を出てエントランスに向かうと髪をきっちりとキメたレオナルド様とトーマスお兄様が立っている。

「トーマスお兄様はジャンリーヌと一緒に行かれるのですね。」


「そうだ。だから先に家を出るよ。2人はゆっくりおいで…。」


それだけ言うとサッと家を出ていった。


「レオ様。とても似合っていますね。ネクタイが派手かと思いましたが、そんなことがなくて良かったです。」


「あ、ありがとう。ヴェロニカも似合っている。その刺繍は素晴らしいな…。これは絶対優勝間違いないだろう。」

優勝か…途中からはアドルフ達に負けたくなくて頑張っただけなのだけど…もし優勝出来たら自分に少しだけ自信が持てるかもしれない…。



「だといいのですが…。さぁ、参りましょうか。」


貴族院に着くと、皆がこちらをチラチラと見てくる。
そんなに派手だっただろうか…。


「すごい見られていますね。」


「そうだな。それだけこのドレスが素晴らしいということだろう。」

確かに色々な方とすれ違ったが、可愛らしい小鳥や花などの刺繍が多かった。これ凄いっていうのはパッと見ではなかったけど…。


「そ、そうでしょうか…そうだといいのですが。早くアンネマリー達に会いたいですね。なんだかとても視線が…恥ずかしいです。」


私の手を取りスマートに歩いていくレオ様を見ていると、やっぱり王太子なのだなと改めて気づかされた。
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