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コーヒーブレイク

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「ゴメン。
そんなに堪えるとは思わなくて」
三浦が4本の缶コーヒーを夕花の自販機から買って来て夕花、女性2人に手渡した。
「三浦さん、毎度有難うございます」
夕花は三浦に深々と頭を下げた。
「こちらこそ良心価格で提供して下さってるから助かってます」
三浦は笑ってプルタブを引き上げて缶コーヒーを呷った。
すると、三浦に食って掛かっていた女性がポツリポツリと話しを始めた。
「コインは…私がゲームをしていたから…少しは…も、持って…いましたけど、公園の遊具新設の元手はクラウドファンディングで得たお金です」
「「クラウドファンディング?!」」
三浦と夕花の声がはもった。
プッシュ!
身を縮めていた女性が缶コーヒーのプルタブを引き上げて他3人の注目を集めた。
「コーヒー頂きます」
「どうぞ」と三浦。
嬉しそうに亜美が缶コーヒーを飲んだ。
「私も頂きます」
佳子も続いてコーヒーで喉を潤した。
「今、話題になって…いる公園ですが。
工事前は、あまりにも…ボ、ボロボロで。
ゾウの遊具なんて目から…ペンキが垂れて泣いている様に…見える有り様で。
けど妹の亜美がボロボロ過ぎるから…こそ…出来る事が…あ、あるって……写真を撮って…役場の方に訊ねに行ったんです」
「「そしたら?」」
「そんな予算はとれないって」
「だろうね。
橋の修繕工事が緊急を要するって言ってたから」
三浦は缶コーヒーを呷った。
「だから妹がクラウドファンディングに…
そしたら妹の読みが当たって予想以上の寄付が集まって、見に行ったら、あんな立派な遊具が入ったものだから…私もビックリして…その上
『町おこし隊』がやってくれたって噂に…二重にビックリして…どこで間違った噂が…流れたんでしょう…ね?」
佳子の話しを訊いて『結構大元から勘違いしてる人がいた』と思いながら夕花は顔をひきつらせた。
「それから公園の工事を見終わって散歩して此処まできたら、コチラの方の独り言が聴こえてきたんです」
夕花は佳子の視線に続いて皆の視線が集まってきて、ビクッと体を強ばらせた。
「そんなに大きな声で言ってましたか?!」
夕花は恐る恐る訊ねた。
「はい、流木のオブジェ?を見ながら…
『キャンプファイアみたいに、燃やそう』とかなんとか?」
「あれは、ただ集めただけです!
オブジェだなんて、とんでもない!」
夕花の通知表の美術の欄にはアヒルが、ずっと浮かんでいた。
「え?!そうなんですか?
燃やしてしまうなんて勿体ないな~と思って1枚撮ってありますよ。
キリンじゃないんですか?」と三浦。
「違いますよ!」
「でも地方紙の表紙になりますよ。
あのオブジェ」
「え?!」
夕花が三浦に詰め寄った。
「もう依頼だして送信しましたから……手遅れです」
夕花は泣き出しそうな顔を浮かべ三浦を仰ぎ見た。
「そんなに、嫌なんですか?!」
三浦が一歩後退るとドンっ!と後ろにいた人にぶつかった。
「すみません!」
「いえ。コチラこそ。
地方紙の表紙になるなら、友人に送ったのは、まずかったですか?」
 え?!
夕花は三浦の影から見えた男の顔に目を丸くした。
「いえ。大丈夫ですよ」と三浦。
「誠!?
何故また平日にいるの?!」
「有給休暇の消化。
夕花がイベントをするって言うから、カメラ持参できちゃったよ」
誠が、にこやかに手首から、ぶら下げたカメラを見せてきた。
「ところで仲良さそうだけど彼氏?」
笑顔を浮かべている誠から冷気が漂っている様に感じた三浦と夕花はお互いに顔を見合せてから、誠に向き直ると首を横にブンブン振って否定した。
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