名探偵になりたい高校生

なむむ

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四十二話 後夜祭

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 全力高校の三日間の文化祭も時間となり最後に校内放送で生徒会長である檜山先輩の言葉が放送された。
「文化祭みなさんお疲れ様でした!!今年もいい文化祭となり僕はとても嬉しく思います。今年の文化祭は特に盛り上がった様で、二日目には全開高校の文化祭のスーパー縁日に凄い子が現れたり、三日目には腕相撲がとても強い中学生が現れたりしたらしいね。なにより、今年のメインイベントと言ってもいい、一年生の本堂恵子さんのライブが大盛り上がりして、みなさんとても楽しかったのではないでしょうか。さて、文化祭も無事に終わり、残す所はこの後にある後夜祭のみになります。参加は自由ですが、是非皆さん参加してください。大きなキャンプファイヤーをみんなで眺めよう。それでは僕の放送はこれで終わりにします。本当にお疲れ様でした!!」

 放送も終わり、クラスのみんなは続々と校庭に向かっている様子。もちろん俺も向かうつもりだ。
 後夜祭はお客さんはいない為ウチの生徒と先生のみで行う事になっている。
 三日間たくさんの人がいたから、生徒だけになったこの学校は、人数が少なく感じてしまう。いつもはこれが当たり前なんだけど…

 俺は校庭に向かう前に部室に向かった。
 この三日間この部室にはほとんど来てなかったし、少しだけ、一人で落ち着こうと思ったからだ。
 しかし、扉をコンコンとする音が鳴り、扉がガラガラと開くと、本堂さんが入って来る。
「やっほー、おつかれ」
「本堂さんか、お疲れ。ライブ大成功に終わったみたいだね」
「うん。それでね、間宮くんに言わなきゃいけない事あってさ」
 ガラガラと扉を閉めた後、俺の隣に座ってくる。
「言わなきゃいけない事って、オーディションの結果?」
「うん。それもある」
 それも?他にもなにかあるのかな?
「まずは、オーディション。受かったよ。私」
「おお!!よかったじゃん」
「うん。みんなのおかげだよ。霧島先生は泣いて喜んでくれた。私ももらい泣きしちゃったんだけどね…えへへ」
「本堂さんが本気で取り組み、全力で頑張ったからだよ。おめでとう」
「ありがとう。間宮くん達がライブを成功させてくれたってのが一番大きいよ。社長と約束してたんでしょ、妨害は絶対にさせないって」
「…聞いたの?あの社長に?」
「うん。全部。そもそも間宮くんが社長と話した時に引き下がった時点で私不合格だったらしいんだけどね」
「マジ?」
「マジだよ。私に人を見る目がないって事で、即不合格」
 あ、危なかった~。灰村、ありがとう。
「私ね、間宮くんが一生懸命走ってるの見えてたんだ。だから、なにも不安じゃ無かった。きっとこの人は護ってくれるって信じてた」
「俺一人の力じゃ無いよ。灰村や快斗がいたからなんとか出来た」
「ふふ、そうかもね。二人にも後でちゃんとお礼言わないと」
 ………なぜか沈黙してしまう。
 ど、どうするか…
「そ、それにしても本堂さん、歌あんなに上手かったんだね。デートの時にカラオケでも行けばよかったなー」
「カラオケには行かなかったねそういえば。でも、私はカラオケには行くつもりはなかったんだよね~」
「そうなの?確かにカラオケ行こうとは一言も言わなかったね」
「私の歌声は本番まで聞かせるつもりはありませんって思ってたし。それに…」
「それに?」
「あの時はまだ、異性と二人っきりで個室に入るのは抵抗あったんだ」
 なるほど、確かに個室でなにかあったら、逃げれないしな。
 もちろん、俺はそんな事はするつもりはなかったけど。
「まあ、今ならいけるけど、間宮くんとなら。後さ、灰村さんって何者?」
「灰村?」
「うん、実はね、三曲目に人がいない事は私、知ってたんだ」
「え、そ、そうなの」
「だから、灰村さんに相談したの。誰かいないって?いなければ、本番はCDで音楽流すか、アカペラで歌おうと思ってたんだけど。そしたら、まさか灰村さんが弾いてくれるなんて。びっくりしちゃった」
 三曲目に人がいない。これは社長が手を回したのか、それともマジのアクシデントだったのか、どっちだろ。
「でも、三曲目に人がいないってわかってたんなら、三曲目は歌わないってのも出来たんじゃない?」
「それは考えなかったよ。三曲目は絶対に歌いたかったの」
「恋愛ソングだよね。いい歌だった」
「でしょ?あの曲聴いて、『私告白する勇気でた』って言われた時は嬉しかった。歌ってよかったーって」
「恋愛ソングはアンコールの二曲目でもあったしそっちでもいい気がしたけど。あれもいい歌だったよ」
「あれはね…ダメだよ…」
 ダメ?俺の中ではいい歌に聴こえたけどな。本堂さんの中ではよく無かったのかな。
「ダメって、嫌いってわけじゃないよ。三曲目はさ、みんなが恋愛の気持ちになってくれればいいなって思って歌ったの。でもね、最後の曲はさ…」
「うん」
「わ、私の気持ちを…う、歌ったんだ」
「そうなんだ。つまり、三曲目を歌わないとみんながこの後に色々行動起こすきっかけが作れないかもって事かな」
「いや…違うんですけど…てかさ。今ので気が付かないの?」
「え。なにが?」
 本堂さんは大きなため息を吐いた。
「なるほどぉ。灰村さんの言う通りだ…」
 灰村からなにを聞いたんだろ…
「まあ、この話を別として、間宮くん。お礼したいんだ」
「お礼だなんて別にいいよ。本堂さんが合格したって聞いただけで満足だ」
「それじゃ私の気がすまない。お礼をします。そうねぇ。キスしてあげようか」
「はっはっは。本堂さん、その手には引っ掛からないよ。それに簡単にそう言う事言っちゃダメだよ。キスとかは好きな人にするもんでしょ」
「うん、そうだね。じゃあキスしようか」
「はい?」
「はい?」
 ん?どうゆうことだ…
「うん?わかんない?キスは好きな人とする物なんでしょ。だからキスしよって」
「えっと…それって…」
「好きだよ。間宮くん」
 好き。今好きって言った…?
 目の前にいる美女が俺に?
「答えは言わなくていいよ。私の気持ちを言いたかっただけだから。間宮くんのおかげで誰かを好きになるって気持ちがわかった。だから最後の曲も歌えた。あれは私から間宮くんへのメッセージ。受け取ってもらえなかったみたいだけど…
 なら、直接言葉で伝えようってね。だから嘘じゃないよ。もう一度言おうか?」
 本堂さんは真剣な顔をしている。少し顔が赤くなっているから、本気で言ってるんだろう。てことはマジで俺のこと…
「好きだよ。でも、付き合ってとかは言うつもりはないんだ。さっきも言ったけど、私の気持ちを伝えたかっただけ。間宮くんには別の人とちゃんと付き合って欲しいって思ってる。これも本心だよ。でもね…」
 チュ。
 ホッペに柔らかい感触がする。本堂さんの唇が俺の頬に当たったようだ…
「隙あり。間宮くんのファーストホッペ頂きましたー!!それじゃ、もう行くね。キャンプファイヤーでみんなと踊るって約束してたんだぁ!!また来週学校でね!!バイバイ!!」
 そう言って本堂さんは部室から出て行ってしまった。
 頬をさすり、呆然してしまう。
 初めて告白されたな…それもあんな美女に…
「追いかけて、付き合ってって言えば?確実に付き合えるよ。相手はアイドルで初めての恋人。自慢出来るんじゃ無い?」
 灰村が扉の前に立ち、俺に言ってくる。
「盗め聞きとは、随分だな」
「聞きたくて聞いたんじゃないよ。それに、本堂さんから、間宮くんに告白するって言われてたし」
「なんで、灰村に言ったんだろ?」
「……知らない。てか、これ、あげるよ」
 灰村の手には遊園地ペア入場券が握られている。
「昨日のスーパー縁日のヨーヨーすくいで手に入れたやつ。これで、本堂さんでもデートに誘ったら?」
「デートに誘うかどうかは別として、ありがたくもらうよ。灰村から物を貰えるなんて滅多に無いことだし」
 俺はチケットをありがたく、灰村様から貰う。どうやら来年の年末迄有効の様だ。
「さて、そろそろ時間だし、キャンプファイヤーでも見に行くか。灰村も来るだろ?」
「そうね。せっかくだし行くよ」
 俺達は部室から出て、校庭で行われているキャンプファイヤーを眺めた。
 轟々と燃える炎を囲みみんなが楽しそうに踊ったり、カメラで撮ったりしている。
「楽しい、三日間だったな」
「そうね。来年も楽しみね」
 高校生活最初の文化祭。色々あって大変な事もあったけど、結果的にはいい思い出になったな…
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