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五十話 クリスマス会
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二学期の終業式が終わり、明日から冬休みとなる。
だが、その前に本日の十七時に、全開高校と共同でクリスマス会が行われる。
クリスマス会または恋活などと言われているこの会は、恋人のいない人達の出会いの場として大変賑わうのだとか。
そして、時刻は十七時。
場所は大勢の人が入れる建物。
両校が貸切りで借りているその建物に、全力と全開高の全生徒、全教職員が集まっている。
俺は大勢の人が入れる程の大きなホールの隅で、開始の挨拶をしている、両校の生徒会長を眺めていた。
「さて、今年もクリスマス会がやって来ました!!今日は我々全力高校と姉妹校である、全開高校の全ての人達が集まるビッグイベントです!!皆さん大いに楽しんで下さい」
全力高校の生徒会長である、檜山先輩の挨拶だ。
そして、隣に立っているのは、全開高校の生徒会長であり、俺の幼馴染の玲那が立っている。
「私は、このクリスマス会に初めての参加になります。なので、本日は色々な方とお話をして、全開と全力高校との交流を深めたいと思っています。皆様、どうかよろしくお願いします」
全開高校一年で、生徒会長の座に就いている玲那。
あいつは全開高校でどの様な評価を受けているんだろうか。
「外面はいいわね、女王様は」
俺の横にいた灰村は玲那の事を見ながらそう言ってくる。
二人は仲が悪い。今日もこの日二人が衝突しない事を俺は密かに願っている。
「それじゃ、二人の挨拶も終わったし、後は自由行動でしょ。私はどこかに行ってるから」
「どこかって?」
「どこかはどこか。一人で静かに時間潰してる」
「いや、せっかくなんだし、誰かと話したら?」
「興味ないかな。食べ物だけ調達して終わるまで姿を隠す。間宮くんと一緒いると、能登さんが来るだろうし。来たら来たでめんどくさいのよ」
「玲那が俺の所来るとは限らないんじゃない?さっきも色々人と話したいとか言ってたじゃん」
「嘘でしょそんなの。それともなに、君、私と一緒にいたいの?」
「いや、そーじゃないけどさ…せっかくならお前も楽しんだらいいのにって」
「変な男達が群がって来るのがうざいの」
「…それが本音か」
「そーゆー事だから。それじゃ。君は楽しんでなよ」
灰村はそう言って、早々にホールから出て行ってしまった。
「さて、俺はどうするかね」
自由行動となり、なにをしていいかわからないでキョロキョロとしていると快斗が俺に声を掛けて来た。
「孝一。なにやってんだよ。せっかくの出会いの場だぞ!!全開高校のレディ達に声を掛けないなんて失礼じゃないか」
イケメン快斗は目をキラキラと輝かせながら言ってくる。
こいつはイケメンだし、声を掛けられるだろうな。
内面を知ったらどの女子も離れて行くだろうけど。
「こんな大勢の中で何かをするって事が初めてだから何するか迷ってんだよ」
「もったいねーなー。まぁ、それも良いのかも。初々しさがあってさ。まぁ俺はたくさん声掛けるけどなぁ」
「そうか、頑張れよ」
「所で灰村さんは?」
「どこか行ったよ」
「どこかって?」
「どこかはどこかだろ。俺は知らん。快斗、全開高校の人達に声を掛けるんだろ?灰村の事構ってる暇ないだろ」
「灰村さんの近くで他の女子と話、灰村さんが嫉妬してくれるのが狙いなんだけど」
灰村は絶対嫉妬しない…むしろ、そのまま付き合いなとか言いそうだ。
「まぁ灰村さんを探しつつ、色々なレディ達とお話しようかな。それじゃあな。孝一も頑張れよ」
快斗は手を上げ離れて行った。
さてと、俺もどこか、行くか。取り敢えずご飯を調達するか。
ホールの中央にたくさんの食材が並んであり、俺は適当に取って食べる事に。
空いている席に腰を下ろして周囲を見ると、恋人がいる人は早々にホールから姿を消して行き、いない人達は女子に声を掛けている、もしくは友達同士でゲームなどをして遊んでいる。
俺の様に一人でいる人はほとんどいない。
つまり、俺は寂しい奴と言うわけだ。
「やっぱり、一人でいた」
一人で黙々とご飯を食べている俺に声掛けて来る一人の女子の声。
「他の人と交流は?」
「もう、終わった」
「そうか」
「クソ村はいないみたいだし。私と行動しようよ。孝ちゃん」
「え~」
「なに?私と行動したくないの?」
「いや…そうじゃないが」
正直、行動はしたくない。
こいつと行動すると疲れるからだ。
一緒に買い物に行くと、一時間は平気で店の中で待たされる。
いい思い出がないのだ。
「さぁて、行くわよ」
玲那は俺の腕を掴み強引にホールから連れ出した。
ホールから出て、しばらく歩くと、全面ガラス張りなっていて、外のイルミネーションが眺められる、絶景スポットに辿り着いた。
周囲には恋人達がいる。
俺達がここに来るのは場違いなのでは?
「綺麗な所よね、ここ」
玲那はイルミネーションを眺めながら話しかけてくる。周りの恋人達に配慮したのか小声だ。
「確かに、綺麗だな。イルミネーションなんて中々見ないし、こうやって改めて見ると、たくさんの人が見に来るのがなんとなくわかる」
「私は、クリスマス会が始まる前に一度下調べでここに来てるの」
「へぇ。なら、なんでここに俺を連れて来た」
「孝ちゃん、イルミネーションなんて普段見ないでしょ。だから見せてあげようってね」
「なるほどね。確かに、一人だったらここには来ないだろうな。周りも恋人だらけだし」
「周りの方達は私達をどう見えてるかしらね」
「自分達の世界に入ってるから、俺達なんて、見えてないだろ」
「そうでしょうね。だから、平気でキスとかしてるもの」
『ほら』と玲那は一組のカップルを指を差す。
一組のカップルは、抱き合い、キスをしている。
俺達は高校生ですよね。人前でキスとかよく出来んな。
「部屋も外のイルミネーションの光以外は電気も点いていない、意外と周りなんか見えないのよ。私達みたいに観察でもしないとね。素敵な事だと私は思うけど」
「周りが気にならないってんならいいのかもな」
彼女がいたら俺もここでキスしたりするのだろうか?
今の段階ではわからない。彼女いないし。
「それじゃ、次に行きましょ」
玲那は再び、俺の腕を掴み歩き出す。
廊下を歩いていると、突然カシャっと
シャッターを切る音が鳴る。
なんか文化祭でも同じ様な事があったな。
「やあ、間宮くん」
夢沼先輩だ…この人は今日は誰とも行動していないのだろうか。カメラを片手に立っている。
「それと、全開高校の生徒会長の、えっと…能登さんだっけ?」
「孝ちゃん、こちらは?」
「夢沼先輩。二年で新聞部だ」
俺は適当に先輩の事を紹介する。
「そう。初めまして、夢沼先輩。私は全開高校、生徒会長の能登 玲那といいます。隣にいる間宮の幼馴染です」
「ああ、そうなの。だから間宮くんとそんなに親しげに話していたのね」
「先輩も孝ちゃんと親しげですね。孝ちゃんの所属している、探偵部とやらで関わりがあるのでしょうか」
「そうだね。探偵部の間宮くんには随分お世話になったわね」
この先輩、本堂さんの事根に持ってんのかな、やっぱり…。
「そうですか。孝ちゃんは普段はマヌケっぽいですが、いざって時は役に立ちますでしょう」
「そうね。探偵部に世話になっている人は結構いるよ。所で」
「なんでしょう」
「間宮くんと幼馴染って事は、灰村とも知り合い?」
「ああ、いましたねそんな女。もちろん知り合いですよ。知り合いたくも無いですが」
「ふふ、嫌いなんだ」
「ええ」
「君も灰村になにかされたのかな?」
「いえ、別に。ただ単に嫌いなだけですよ。先輩も嫌いみたいですね」
「まぁね。私達気が合いそうね」
「どうでしょう。私はまだ、先輩の事は知りませんので」
「ふふ、可愛い子ね」
夢沼先輩は不適な笑みを浮かべている。
てか、やはり夢沼先輩は、灰村に恨みがある様だな。
「それでは、私達はこれで」
玲那は一礼した後、俺の腕を掴み歩き出す。
「灰村の弱点教えようか?」
夢沼先輩は背を向けたまま話す。
灰村の弱点だって?
「灰村の弱点ですか」
「そ。弱点。あいつに勝ちたいとか思った事ない?」
「先輩は灰村を潰したい様ですね。面白いです。一応弱点を教えて貰えますか?」
「弱点は…君の隣にいる、男。間宮くんだよ」
「孝ちゃん?」
灰村の弱点が俺ってどう言う事だ?
「灰村は、間宮くんって強力なボディガードがいるから、安心して、でかい態度を取れるのよ。つまり、間宮くんを落とし、灰村から離れさせれば、灰村は大人しくなる。それに灰村が間宮くんに好意があれば、精神的にボロボロになるはず」
「…そうですか」
「一緒に灰村潰す?」
「孝ちゃんがいる目の前でよくそんな事言えますね」
「そういえばそうね。これは何か、対策しないと」
「それに、せっかくのお誘いで申し訳無いのですが、お断りさせていただきます。先輩が灰村を潰すのを心から応援しています」
「そう、残念ね」
「そういう事ですので失礼しますね」
玲那は歩き出す、俺もそれに続き歩き出す。
「ああ、そうそう。先輩」
玲那は歩きながら、夢沼に話す。
「灰村の弱点が孝ちゃん、なんて思っている時点で、あなたは灰村には勝てませんよ。せいぜい頑張って下さい。さっきも言いましたが応援はしています」
玲那はしばらく話さなかった。俺の腕を掴み黙々と歩いていく。
どこに行くつもりだ。
辿り着いた先は巨大なクリスマスツリーが飾られているホールだ。
「でっか…何メートルあんだ」
「六メートルあるそうよ。大きいよね」
「それより、さっきの…」
「さっきの?ああ…夢沼先輩の事?」
「そうだよ。応援って」
「応援は応援よ。あの人が灰村を潰すならそれでいい。でも、無理ね」
「俺も灰村が負けるとは思ってないけど」
「そうでしょうね。クソ村から孝ちゃんを奪うですって。バカなのねあの人。そんなんでいいなら、中学時代で灰村なんか潰せるわよ」
「つまり、お前は、灰村の味方って事でいいのか」
「はぁ?何言ってんの。クソ村は私以外、潰せないでしょ。あんな先輩じゃ無理よ。裏から、灰村を潰そうとしているあの人じゃね」
「灰村を潰すのは、お前って言いたいのか?」
「潰すとか、言い方悪いね。私は灰村に負けを認めさせたいだけよ」
玲那は金田さんとは違う意味でライバル視しているんだな。
「灰村の出方が見ものね。さて、次に行きましょ」
玲那は俺の腕を掴み再び歩き出した。
だが、その前に本日の十七時に、全開高校と共同でクリスマス会が行われる。
クリスマス会または恋活などと言われているこの会は、恋人のいない人達の出会いの場として大変賑わうのだとか。
そして、時刻は十七時。
場所は大勢の人が入れる建物。
両校が貸切りで借りているその建物に、全力と全開高の全生徒、全教職員が集まっている。
俺は大勢の人が入れる程の大きなホールの隅で、開始の挨拶をしている、両校の生徒会長を眺めていた。
「さて、今年もクリスマス会がやって来ました!!今日は我々全力高校と姉妹校である、全開高校の全ての人達が集まるビッグイベントです!!皆さん大いに楽しんで下さい」
全力高校の生徒会長である、檜山先輩の挨拶だ。
そして、隣に立っているのは、全開高校の生徒会長であり、俺の幼馴染の玲那が立っている。
「私は、このクリスマス会に初めての参加になります。なので、本日は色々な方とお話をして、全開と全力高校との交流を深めたいと思っています。皆様、どうかよろしくお願いします」
全開高校一年で、生徒会長の座に就いている玲那。
あいつは全開高校でどの様な評価を受けているんだろうか。
「外面はいいわね、女王様は」
俺の横にいた灰村は玲那の事を見ながらそう言ってくる。
二人は仲が悪い。今日もこの日二人が衝突しない事を俺は密かに願っている。
「それじゃ、二人の挨拶も終わったし、後は自由行動でしょ。私はどこかに行ってるから」
「どこかって?」
「どこかはどこか。一人で静かに時間潰してる」
「いや、せっかくなんだし、誰かと話したら?」
「興味ないかな。食べ物だけ調達して終わるまで姿を隠す。間宮くんと一緒いると、能登さんが来るだろうし。来たら来たでめんどくさいのよ」
「玲那が俺の所来るとは限らないんじゃない?さっきも色々人と話したいとか言ってたじゃん」
「嘘でしょそんなの。それともなに、君、私と一緒にいたいの?」
「いや、そーじゃないけどさ…せっかくならお前も楽しんだらいいのにって」
「変な男達が群がって来るのがうざいの」
「…それが本音か」
「そーゆー事だから。それじゃ。君は楽しんでなよ」
灰村はそう言って、早々にホールから出て行ってしまった。
「さて、俺はどうするかね」
自由行動となり、なにをしていいかわからないでキョロキョロとしていると快斗が俺に声を掛けて来た。
「孝一。なにやってんだよ。せっかくの出会いの場だぞ!!全開高校のレディ達に声を掛けないなんて失礼じゃないか」
イケメン快斗は目をキラキラと輝かせながら言ってくる。
こいつはイケメンだし、声を掛けられるだろうな。
内面を知ったらどの女子も離れて行くだろうけど。
「こんな大勢の中で何かをするって事が初めてだから何するか迷ってんだよ」
「もったいねーなー。まぁ、それも良いのかも。初々しさがあってさ。まぁ俺はたくさん声掛けるけどなぁ」
「そうか、頑張れよ」
「所で灰村さんは?」
「どこか行ったよ」
「どこかって?」
「どこかはどこかだろ。俺は知らん。快斗、全開高校の人達に声を掛けるんだろ?灰村の事構ってる暇ないだろ」
「灰村さんの近くで他の女子と話、灰村さんが嫉妬してくれるのが狙いなんだけど」
灰村は絶対嫉妬しない…むしろ、そのまま付き合いなとか言いそうだ。
「まぁ灰村さんを探しつつ、色々なレディ達とお話しようかな。それじゃあな。孝一も頑張れよ」
快斗は手を上げ離れて行った。
さてと、俺もどこか、行くか。取り敢えずご飯を調達するか。
ホールの中央にたくさんの食材が並んであり、俺は適当に取って食べる事に。
空いている席に腰を下ろして周囲を見ると、恋人がいる人は早々にホールから姿を消して行き、いない人達は女子に声を掛けている、もしくは友達同士でゲームなどをして遊んでいる。
俺の様に一人でいる人はほとんどいない。
つまり、俺は寂しい奴と言うわけだ。
「やっぱり、一人でいた」
一人で黙々とご飯を食べている俺に声掛けて来る一人の女子の声。
「他の人と交流は?」
「もう、終わった」
「そうか」
「クソ村はいないみたいだし。私と行動しようよ。孝ちゃん」
「え~」
「なに?私と行動したくないの?」
「いや…そうじゃないが」
正直、行動はしたくない。
こいつと行動すると疲れるからだ。
一緒に買い物に行くと、一時間は平気で店の中で待たされる。
いい思い出がないのだ。
「さぁて、行くわよ」
玲那は俺の腕を掴み強引にホールから連れ出した。
ホールから出て、しばらく歩くと、全面ガラス張りなっていて、外のイルミネーションが眺められる、絶景スポットに辿り着いた。
周囲には恋人達がいる。
俺達がここに来るのは場違いなのでは?
「綺麗な所よね、ここ」
玲那はイルミネーションを眺めながら話しかけてくる。周りの恋人達に配慮したのか小声だ。
「確かに、綺麗だな。イルミネーションなんて中々見ないし、こうやって改めて見ると、たくさんの人が見に来るのがなんとなくわかる」
「私は、クリスマス会が始まる前に一度下調べでここに来てるの」
「へぇ。なら、なんでここに俺を連れて来た」
「孝ちゃん、イルミネーションなんて普段見ないでしょ。だから見せてあげようってね」
「なるほどね。確かに、一人だったらここには来ないだろうな。周りも恋人だらけだし」
「周りの方達は私達をどう見えてるかしらね」
「自分達の世界に入ってるから、俺達なんて、見えてないだろ」
「そうでしょうね。だから、平気でキスとかしてるもの」
『ほら』と玲那は一組のカップルを指を差す。
一組のカップルは、抱き合い、キスをしている。
俺達は高校生ですよね。人前でキスとかよく出来んな。
「部屋も外のイルミネーションの光以外は電気も点いていない、意外と周りなんか見えないのよ。私達みたいに観察でもしないとね。素敵な事だと私は思うけど」
「周りが気にならないってんならいいのかもな」
彼女がいたら俺もここでキスしたりするのだろうか?
今の段階ではわからない。彼女いないし。
「それじゃ、次に行きましょ」
玲那は再び、俺の腕を掴み歩き出す。
廊下を歩いていると、突然カシャっと
シャッターを切る音が鳴る。
なんか文化祭でも同じ様な事があったな。
「やあ、間宮くん」
夢沼先輩だ…この人は今日は誰とも行動していないのだろうか。カメラを片手に立っている。
「それと、全開高校の生徒会長の、えっと…能登さんだっけ?」
「孝ちゃん、こちらは?」
「夢沼先輩。二年で新聞部だ」
俺は適当に先輩の事を紹介する。
「そう。初めまして、夢沼先輩。私は全開高校、生徒会長の能登 玲那といいます。隣にいる間宮の幼馴染です」
「ああ、そうなの。だから間宮くんとそんなに親しげに話していたのね」
「先輩も孝ちゃんと親しげですね。孝ちゃんの所属している、探偵部とやらで関わりがあるのでしょうか」
「そうだね。探偵部の間宮くんには随分お世話になったわね」
この先輩、本堂さんの事根に持ってんのかな、やっぱり…。
「そうですか。孝ちゃんは普段はマヌケっぽいですが、いざって時は役に立ちますでしょう」
「そうね。探偵部に世話になっている人は結構いるよ。所で」
「なんでしょう」
「間宮くんと幼馴染って事は、灰村とも知り合い?」
「ああ、いましたねそんな女。もちろん知り合いですよ。知り合いたくも無いですが」
「ふふ、嫌いなんだ」
「ええ」
「君も灰村になにかされたのかな?」
「いえ、別に。ただ単に嫌いなだけですよ。先輩も嫌いみたいですね」
「まぁね。私達気が合いそうね」
「どうでしょう。私はまだ、先輩の事は知りませんので」
「ふふ、可愛い子ね」
夢沼先輩は不適な笑みを浮かべている。
てか、やはり夢沼先輩は、灰村に恨みがある様だな。
「それでは、私達はこれで」
玲那は一礼した後、俺の腕を掴み歩き出す。
「灰村の弱点教えようか?」
夢沼先輩は背を向けたまま話す。
灰村の弱点だって?
「灰村の弱点ですか」
「そ。弱点。あいつに勝ちたいとか思った事ない?」
「先輩は灰村を潰したい様ですね。面白いです。一応弱点を教えて貰えますか?」
「弱点は…君の隣にいる、男。間宮くんだよ」
「孝ちゃん?」
灰村の弱点が俺ってどう言う事だ?
「灰村は、間宮くんって強力なボディガードがいるから、安心して、でかい態度を取れるのよ。つまり、間宮くんを落とし、灰村から離れさせれば、灰村は大人しくなる。それに灰村が間宮くんに好意があれば、精神的にボロボロになるはず」
「…そうですか」
「一緒に灰村潰す?」
「孝ちゃんがいる目の前でよくそんな事言えますね」
「そういえばそうね。これは何か、対策しないと」
「それに、せっかくのお誘いで申し訳無いのですが、お断りさせていただきます。先輩が灰村を潰すのを心から応援しています」
「そう、残念ね」
「そういう事ですので失礼しますね」
玲那は歩き出す、俺もそれに続き歩き出す。
「ああ、そうそう。先輩」
玲那は歩きながら、夢沼に話す。
「灰村の弱点が孝ちゃん、なんて思っている時点で、あなたは灰村には勝てませんよ。せいぜい頑張って下さい。さっきも言いましたが応援はしています」
玲那はしばらく話さなかった。俺の腕を掴み黙々と歩いていく。
どこに行くつもりだ。
辿り着いた先は巨大なクリスマスツリーが飾られているホールだ。
「でっか…何メートルあんだ」
「六メートルあるそうよ。大きいよね」
「それより、さっきの…」
「さっきの?ああ…夢沼先輩の事?」
「そうだよ。応援って」
「応援は応援よ。あの人が灰村を潰すならそれでいい。でも、無理ね」
「俺も灰村が負けるとは思ってないけど」
「そうでしょうね。クソ村から孝ちゃんを奪うですって。バカなのねあの人。そんなんでいいなら、中学時代で灰村なんか潰せるわよ」
「つまり、お前は、灰村の味方って事でいいのか」
「はぁ?何言ってんの。クソ村は私以外、潰せないでしょ。あんな先輩じゃ無理よ。裏から、灰村を潰そうとしているあの人じゃね」
「灰村を潰すのは、お前って言いたいのか?」
「潰すとか、言い方悪いね。私は灰村に負けを認めさせたいだけよ」
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