名探偵になりたい高校生

なむむ

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七十七話 体育祭 二

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 体育祭、続いての競技は、借り物競走。
 借り物競走とは、各自スタートし、テーブルの上に置いてある紙を取り、書かれている内容の物を持ち、ゴールに行くと言う人気の競技。
 まずは一年生から。
 席に着き一年生が走るのを見ているが、どうも様子がおかしい…
 人気の競技のはずだが一年生は各生徒が苦い顔浮かべながら走っている。中には顔を赤くして走る生徒もいるようだ…

「なんか、一年のみんな様子が変じゃないか?」
 俺は隣に座る灰村に話し掛ける。
「そうね。まあ、今年の借り物競走はちょっと特殊だからね、うちのクラスも苦戦するかもね」

 特殊とはいったい…

 一年生の部が終わり、次は俺達二年の番。
 まずは男子、うちのクラスの第一走者である遠山くんはスタートラインに立っている。

「部長!!一位取りなさいよぉ!!」

 金田さんが大きな声を出し、遠山くんにエールを送る。
 声が聞こえたのか、遠山くんはこっちを向き手を上げている。

「位置について、よーい」

 バンッ!!

 スターターピストルが鳴ると、各自がテーブルに向かって走って行く。
 遠山くんはビリでテーブルに到着した。
 なるほど、金田さんが言った通り、足はあまり速くないらしい…

 全員が紙を取り、すぐに動き出すと思いきや、全員が立ち尽くしていた。
「なんだこりゃあ!!」

 一人の生徒が紙を見ながら大声を上げると、その他の生徒達も、同じように声を上げている。

「なあ、灰村。さっき特殊って言ってたけど、それって?」
「今年の借り物競走のお題を作ったはラブコメ部。だから、恋愛に関わる事が多いらしいの。例えば、好きな人を連れてくるとか」
「そりゃ、大変だな…でもそんなの適当に連れてくれば問題ないじゃない?それに恋人でもいれば好きな人とか書いてあっても、なにも問題ないだろ」
「恋人がいればね。だけどこの競技に出ている二年は一人も彼女、彼氏持ちはいない。だから、好きな人とか引いちゃったら大変だよね。後、適当に連れてくればいいって言ったけど、借り物競走ルールで、書かれている内容は必ず本人とゴールにいる先生に見せる事。内容が一致していればそのままゴール。違うなら、もう一度やり直し」
「好きな人が一致してるかどうかなんてどうやって証明するんだよ」
「さあ、その場で告白とかじゃないかな。そこは一応書かれてるでしょ」

 なんか、体育祭終わったら、色々もめそうな気がすけど…

 各生徒が固まっているなか、ただ一人走っている人がいる。
 遠山くんだ。

 遠山くんが、走るの見ると他の生徒達も負けるわけには行かないのか、覚悟を決めた表情をしながら走り始める、遠山くんはあっさり抜かされるが、これは単に足の速さがは関係ないからそこは問題ない。

「遠山くーん、がんばってー」

 他のクラスの数名の女子から、声援を貰う遠山くん。
 さすがイケメン枠である彼を応援する人は結構いるんだな。

「むっ。部長って本当にモテるのね」

 声を出した女子の方を見ながら金田さんは言っている。

「誠実もまあ、イケメンだからな、俺には劣るけど」
「あんたは顔だけだけど」

 そんな二人のやりとりを見たあと、レースに視線を戻す。

 何人かが、灰村の元にやってきた。

「三組の灰村さん、一緒に、何も聞かずに一緒に来てくれ」
「なんで?」
「いや、兎に角来て欲しい」
「書かれている内容を教えて欲しいんだけど」
「ぐっ…そ、それは」

 顔を赤らめて灰村を見る男子生徒。
 恐らく、告白なのだろう。
 この生徒は灰村の事が好きなようだ。
「灰村さんの事が…」
「私の事が?」
「前々から、気になってました!!だから俺とゴールに行って欲しい」

 突然の告白に周りの生徒は手を口に添え、わあっとした表情で、灰村と男子生徒を交互に見ている。

「無理。君の事よく知らないし、これからも知ろうと思わない。残念ね。さ、他の紙を取りに戻りなよ」
「くそおおおおぉ!!」

 男子生徒は再び、テーブルに戻っていく。
 失恋もし、この体育祭はきっと彼には良い思い出が出来ないだろうな。

 残りの二人も、灰村に挑むが、無残に散り、テーブルまで足取り重く戻っていく。
 可哀想だ…

「金田、一緒にきてくれ!!」

 そんな中、遠山くんが登場し、金田さんを指名した。

 これまでの流れを考えると、遠山くんも金田さんに告白になるのか?
 まわりの生徒も遠山くんの言葉に期待している。

「な、なによ…」

 金田さんも告白されるのかと、顔を若干赤らめていた。

「ゴール前で先生に証明しなければ意味が無い、とりあえず僕と来て欲しい、このお題、金田以外いないんだ」
「…う、うん」

 遠山くんは金田さんの手を引き、二人でゴールに走って行く。
 これは美男美女のカップル誕生の瞬間かと、クラスの女子は騒いでいた。

 遠山くんは金田さんを連れトップで走り、ゴール前にいる先生の元へ辿り着く。

「お、遠山。来たな。さて、お題は?」
「僕のお題はこれです」

 遠山くんは先生に紙を渡す。
 先生は紙を受け取り、中身を確認すると、金田さんを見た。

「さて、遠山。これをどうやって証明する」

 遠山くん金田さんの方に振り向き、真剣な表情をした。

「金田…」
「な、なに?」
「一緒に走ってくれてありがとう」
「あ、うん…」
「それと…」
「それと?」
「後ろにいるおばあさん」
「はっ?おばあさん…?」
「ああ、僕のお題は、いつも後ろに幽霊を連れている女子、だ。金田、言わなかったけど、僕は霊感があるんだ、今まで言わなくてごめん。金田と出会った時からずっと、幽霊が見えていたから気になっていたんだ。右肩にいるその人は誰だい?」
「嘘…でしょ…?」

 金田さんは凄まじい速度で自分の右肩を見た後、金田さんは決して見えてはいないだろうが、そこにいるとはっきり言われたせいかみるみるうちに顔が青くなっていく。

「ぎゃあああああ!!怖いいい!!」

 金田さんは今日一の悲鳴を上げ、遠山くんに抱きついた。

「祓って、祓ってぇ!!部長!!助けてぇ」
「先生。これでどうでしょうか」
「二年三組、遠山。お題達成により、合格だ」

 遠山君はそのまま抱きついている金田さんと一緒にゴールし、見事一位になった。

「はっはっは。金田ありがとう。君のおかげで一位になれたぞ」
「そんな事より速く、右肩にいる奴ーーーー!!」
「ああ、ごめんな。そんな人はいないよ。僕は霊感なんて無い。金田を怖がらす為についた嘘さ」
「…はっ。嘘」
「うん。嘘だ」
「ふ、ふ、ふざけんなぁ!!死ね!!」

 金田さんの右ストレートが遠山くんの腹部にヒットした。

 膝から崩れ落ち、金田さんに謝る遠山くん。

「ご、ごめんって言ってるだろ」
「じゃあ、本当のお題ってなんだったのよ」
「そ、それはね」

 金田さんは先生からお題が書かれた紙を受け取り確認した。

【可愛くて、怖がりな人】

「ふ、ふーん…じゃあ今度食堂奢ってくれたら許してあげるよ」
「ああ、了解した」

 三組第一走者の遠山くんは見事に一位となる。
 続いては第二走者。
 佐竹くんだ。
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