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八十四話 体育祭 九
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二人三脚を同着とはいえ、一位となった俺達三組。クラスの士気は午前中同様上がったままだ。
二人三脚から戻ったクラスメイトを全員が迎えていた。俺は後方からゆっくり歩いて自分の席に向かう灰村に声を掛けた。
「お疲れ」
「うん。すぐに次の競技に向かうけどね」
「飯島さんと練習してたのか?凄い速かったな」
「練習は一度もしてないよ。飯島さん部活で忙しいし。体育の時間も別行動してる。単に私が飯島さんの走りを調べ、記憶しただけ。後はイメトレかな」
それだけであそこまで走れるとは。すげーな。
俺達が話していると、相方の飯島さんと、金田さんが近づいてきた。
「ねえねえ、灰村さん。ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」
「なに」
「あの作戦の事なんだけど」
「ああ、あれ」
「なになに、走りながら作戦なんて話してたのあんた達」
作戦?そういえば、飯島さんが四組を一瞬見ていた時があったな。あれの事かな。
「教えてもいいけど……二人とも口は堅い方?」
「うんまあ、言うなと言われれば言わないけど」
「私も堅いよ」
「そう。なら教えるけど、飯島さんはちょっと驚くかも。まずは、アンカー対決。跡野くんと近藤くんペアだけど、四組ペアがバトンを落とさず、走る事が出来たら、間違いなく負けていた。バトンを落とし、先行させる事でようやく互角になる。走る距離が後少しでも長かったら同着になる事は無く抜かれていた。だから私は四組にバトンを落としてもらう必要があった」
「落としてもらう必要があったって」
「四組志摩くんがバトンを受け取る事は体育祭が始まる前からわかっていたから」
「ちょ、ちょっと待って。なに、灰村さん何でそんな事わかんのよ」
「志摩くんはサッカー部のキーパーだし、物を掴むって事ならきっとキーパーである志摩くんがバトンを掴むんだろうなって」
「ああ、そういうこと……」
灰村は淡々と話す。俺はこの言い方をする灰村が真実を言っていないと感じた。
「それで、続きだけど。志摩くん。彼は飯島さんの事、好きなのよ」
「……へっ?」
「だから、飯島さんに志摩くんをチラ見させ、自分はあなたの気持ちを知っている、けれど、私は……って感じで俯かせ、動揺させる事でバトンを落とすかもってね。まあ、こればっかりは運だったんだけどね」
「ああ、そうなんだー。あははは」
飯島さんは少し頬を紅くし、自分の席に戻っていく。
「金田さん。一つ言っとくけど。この作戦がなかったら。多分、私と走ってたのはあなたよ」
「えっ!!マジ」
金田さんは明らかに上機嫌になり、自分の席へと戻っていった。
その様子を眺めた灰村は、俺に視線を向ける。
「どこまで真実だ」
「半分かな。志摩くんの事は本当。事前に飯島さんに話したらきっと動揺するのは飯島さんだから言わなかった。金田さんとのペアも本当かな。飯島さんほどでは無いけど、彼女も運動神経はいいのは体育の授業で確認済みだし」
「その二人の事より、志摩くんの件は?」
「茶道部倖田さん。彼女から情報を貰った。堀田さんと戦える事を条件に。周りに話しても優勝出来ると思っていたようね自信満々だったよ」
「それで弱点が無いか調べたのか」
「そういう事になるね。内田くんに志摩くん。100m走の女子の事。こっちに有利になりそうな事をね」
「頼りになるな灰村は……」
「敵として戦った見たい?」
「いや、味方でいてくれ」
少しは戦って見たいと思ったが、多分勝てないだろうな……。
灰村との話を終え、自分の席に戻る。クラスのと言うか、他のクラス含め女子の姿が見えない。
ああ、そうか。次は女子全員参加の玉入れか。
一年、二年、三年がぶつかる競技となっている。
校庭の中央に設置された玉を入れるネットが三つ。赤、緑、青の色で別れており、俺達二年は緑色のネットに入れる事に。色分けはジャージの色で、二年は緑、一年は青、三年は赤となっている。ちなみに玉も三色に別れている。
時間内にネットにどれだけ、入れられるか競うおなじみの競技だが、この学校は他とは違い、入れ方は自由だと言う事。投げ入れる事が一般的だが、この学校は生徒に全力でやって欲しいとの事らしく、好きな入れ方をして構わない。足を使って入れても良いし、道具を使って入れてもいい。まあ、道具を使う人は周りの人に道具が当たらないように使用しなければいけないが。
制限時間は二分。スターターピストルが鳴り、一斉に投げ始める。
やはり、投げる人が多い。道具を使う人もいるのだろうか。
「一番最初に入れるのは私よ!!」
誰よりも早く投げ始めたのは我がクラスのトップバッターの嗚呼さんだ。宣言通り一番最初にネットに入れる事に成功する。
「ああ!!最高!!一番は私にこそふさわしいわ」
一番最初に入れた嗚呼さんだが、その後はまるで入れる事が出来ないでいる。どうやら、嗚呼さんは一番を達成した瞬間、本来のステータスに戻ってしまうようだ。
二年女子は順調に玉を入れている、他のクラスの女子で玉入れが得意な人もいるのだろう活躍していた。一方でうちのクラスだ。嗚呼さんの他に誰が目立つだろうか。俺の予想では、バスケ部である、飯島さんに期待が掛かる。
「よっと」
バスケのシュートフォームで、玉をネットに向かって投げるが、バスケと勝手が違う為中々入らない。
その様子を三年の米田先輩が、見ていた。
「コラー茜ぇ!!なんだそのシュートは!!」
「げぇ、よ、米田先輩ぃ」
米田先輩に叱られ、萎縮したのか、その後も飯島さんは外しては叱られるを繰り返していた。
「米田先輩って部活だと別人になるって聞いた事あったけど。部活意外にも変わるんだな」
「雪先輩は茜ちゃんには厳しかったからな。期待してたし。一番可愛がってた。久しぶりだ、茜ちゃんが怒られてるの見るの。いやー懐かしい」
「コラー茜ぇ!!」
「ひぃー。すみませぇーん」
飯島さんは今回不調に終わりそうだな。
「お、孝一。見て見ろよ、ゆりあちゃんが少し離れた所でなにかやってるぞ」
快斗に言われ、視線をネットから少し離れた所に立つ麦野さんに向ける。麦野さんは、道具を使っている様だ。
「あれって、ゴルフの構えだよな?」
「だろうな、ゆりあちゃんはこの学校唯一のゴルフ部員だし。木で出来たゴルフクラブで打つつもりだな。声を掛けたい所だけど、集中してるし、声を掛けないで欲しいって思ってる」
「なんでわかる」
「そりゃ、俺だから」
麦野さんは足元にある玉を見つめ、木で出来たクラブを振り、玉に当てると、玉はネットに吸い込まれていく。
「よし!!」
小さくガッツポーズを決めた麦野さんはその後もどんどん玉を入れていく。
凄いな。
「さてさて、灰村さんはと」
快斗が灰村を探す。そういえば灰村はどこにいるのだろう。
灰村は、三つあるネットのちょうど中心の場所に立っていた。手には玉を持っているが投げてはいない。そんな灰村に一人の女子が近づく。夢沼先輩だ。
「やあ、灰村」
「……なんか用」
「冷たいねぇ。可愛い後輩に話し掛けちゃいけないわけ」
「あんたが絡んでくるとろくな事がないから」
「そんな事言わずにさ。どお、この玉入れ。どこが勝つと思ってる」
「さあ、わかんない」
「嘘ね。分かってるでしょ。さっきから灰村は一年の方ばかり見てる。気になる生徒でもいるの」
灰村と夢沼先輩。二人が何を話しているのかは分からないが二人が、一年の方を見ているのだけはわかった。俺も二人につられ、一年を見る事に。
「はいはいはい!!私にどんどん玉をちょうだーい」
一年の玉入れで大活躍していたのは探偵部の後輩伊藤だった。
伊藤は玉をどんどんと投げている。伊藤が投げた玉は外れる事無く、入っていた。
「伊藤凄いな」
「香和里ちゃんは運動神経は超良いからな。なにやっても活躍するさ」
中学から伊藤の事を知っている快斗は驚く事もなく伊藤の事を見ている。
「一年生は香和里ちゃんに全てを託してる。まあ、それが一番良いかもな。運動に関しては香和里ちゃんに敵う人はそうはいないし」
「へえ、そうなんだ」
「灰村さんはそれが分かってたんじゃ無いのか。さすが灰村さん、素敵だ」
まあ、灰村なら伊藤の事調べてそうだな。
さて、灰村はと。
「あの一年の子。凄いじゃん。確か探偵部の一人よね」
「そうね。香和里ちゃんの事は知ってるけどあそこまで凄いとはね」
「それに胸も超でっかい」
「おっさん見たいねあんた」
「あの子も大きいけど……」
灰村と会話中の夢沼先輩は突如、灰村の胸へと手を伸ばし、胸を触る。
「わお、意外とボリューミーじゃん」
夢沼先輩は灰村の胸を揉んでいる。この光景は見て良い物なのだろうか……。
灰村はすぐに夢沼先輩の手を払う。
「おい!!見たか!!三年の夢沼先輩が今、灰村さんの胸揉んでたぞ!!」
この光景を見ていたのは俺だけじゃ無かったようで、クラスの男子、スケベ代表の近衛くんとその他クラスの男子達もバッチリ見ていたようで近衛くん程では無いが、明らかに興奮していた。
そのスケベの視線に天罰が下る。
「見てんじゃねえよ」
灰村の最大級の睨みが男子に向けられる。
久しぶりに見た灰村の睨み相変わらずの破壊力のようで、灰村に視線を向けられた男子は全員が萎縮し、視線を逸らした。
「うっわ。恐っ」
「あんたが余計な事するからでしょ」
「余計な事とは思わないけどね、男子達にサービスしなきゃ」
「だったら自分の身体でやれよ」
「灰村の身体の方が周りを興奮させられると思ったからよ。この光景を思い出し、今日おかずにするバカいるかもね」
「きも……」
「まあ、灰村に絡むのはこれくらいにしてあげる。あんまりやるとあんたキレて去年のクリスマスの事言ってきそうだし」
「その事は言わないよ。今あんたは私に敵意を向けている訳では無いし。安心しなよ」
「あら優しい。惚れちゃいそう」
「所であんたのクラス、一人足りないみたいだけど」
「ああ、あの人ね。特別枠だから次に出場する事になってる」
「……次ね」
夢沼先輩は灰村との会話が終わったのか、手をヒラヒラとさせ、三年の群衆の中へと消えていき、灰村も二年の中へ戻っていった。
時間が過ぎ、玉入れが終了し、結果は一年伊藤の活躍が大きかったらしく、大差で一位。続いて二位、三年。三位が二年となった。二年はゴルフ部の麦野さんが活躍していたが、三年には一球差で負けてしまった。
戻ってきた灰村は、総合的に、現在は三年五組が一位である事を告げてきた。玉入れの結果で俺達二年は敗北した事で、順位が入れ替わったそうだ。
「次の綱引きで三年に負けたら、もう総合一位はとれない。間宮くん。君に掛かってる」
次は綱引き。
俺がようやく競技に出る事になる。
二人三脚から戻ったクラスメイトを全員が迎えていた。俺は後方からゆっくり歩いて自分の席に向かう灰村に声を掛けた。
「お疲れ」
「うん。すぐに次の競技に向かうけどね」
「飯島さんと練習してたのか?凄い速かったな」
「練習は一度もしてないよ。飯島さん部活で忙しいし。体育の時間も別行動してる。単に私が飯島さんの走りを調べ、記憶しただけ。後はイメトレかな」
それだけであそこまで走れるとは。すげーな。
俺達が話していると、相方の飯島さんと、金田さんが近づいてきた。
「ねえねえ、灰村さん。ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」
「なに」
「あの作戦の事なんだけど」
「ああ、あれ」
「なになに、走りながら作戦なんて話してたのあんた達」
作戦?そういえば、飯島さんが四組を一瞬見ていた時があったな。あれの事かな。
「教えてもいいけど……二人とも口は堅い方?」
「うんまあ、言うなと言われれば言わないけど」
「私も堅いよ」
「そう。なら教えるけど、飯島さんはちょっと驚くかも。まずは、アンカー対決。跡野くんと近藤くんペアだけど、四組ペアがバトンを落とさず、走る事が出来たら、間違いなく負けていた。バトンを落とし、先行させる事でようやく互角になる。走る距離が後少しでも長かったら同着になる事は無く抜かれていた。だから私は四組にバトンを落としてもらう必要があった」
「落としてもらう必要があったって」
「四組志摩くんがバトンを受け取る事は体育祭が始まる前からわかっていたから」
「ちょ、ちょっと待って。なに、灰村さん何でそんな事わかんのよ」
「志摩くんはサッカー部のキーパーだし、物を掴むって事ならきっとキーパーである志摩くんがバトンを掴むんだろうなって」
「ああ、そういうこと……」
灰村は淡々と話す。俺はこの言い方をする灰村が真実を言っていないと感じた。
「それで、続きだけど。志摩くん。彼は飯島さんの事、好きなのよ」
「……へっ?」
「だから、飯島さんに志摩くんをチラ見させ、自分はあなたの気持ちを知っている、けれど、私は……って感じで俯かせ、動揺させる事でバトンを落とすかもってね。まあ、こればっかりは運だったんだけどね」
「ああ、そうなんだー。あははは」
飯島さんは少し頬を紅くし、自分の席に戻っていく。
「金田さん。一つ言っとくけど。この作戦がなかったら。多分、私と走ってたのはあなたよ」
「えっ!!マジ」
金田さんは明らかに上機嫌になり、自分の席へと戻っていった。
その様子を眺めた灰村は、俺に視線を向ける。
「どこまで真実だ」
「半分かな。志摩くんの事は本当。事前に飯島さんに話したらきっと動揺するのは飯島さんだから言わなかった。金田さんとのペアも本当かな。飯島さんほどでは無いけど、彼女も運動神経はいいのは体育の授業で確認済みだし」
「その二人の事より、志摩くんの件は?」
「茶道部倖田さん。彼女から情報を貰った。堀田さんと戦える事を条件に。周りに話しても優勝出来ると思っていたようね自信満々だったよ」
「それで弱点が無いか調べたのか」
「そういう事になるね。内田くんに志摩くん。100m走の女子の事。こっちに有利になりそうな事をね」
「頼りになるな灰村は……」
「敵として戦った見たい?」
「いや、味方でいてくれ」
少しは戦って見たいと思ったが、多分勝てないだろうな……。
灰村との話を終え、自分の席に戻る。クラスのと言うか、他のクラス含め女子の姿が見えない。
ああ、そうか。次は女子全員参加の玉入れか。
一年、二年、三年がぶつかる競技となっている。
校庭の中央に設置された玉を入れるネットが三つ。赤、緑、青の色で別れており、俺達二年は緑色のネットに入れる事に。色分けはジャージの色で、二年は緑、一年は青、三年は赤となっている。ちなみに玉も三色に別れている。
時間内にネットにどれだけ、入れられるか競うおなじみの競技だが、この学校は他とは違い、入れ方は自由だと言う事。投げ入れる事が一般的だが、この学校は生徒に全力でやって欲しいとの事らしく、好きな入れ方をして構わない。足を使って入れても良いし、道具を使って入れてもいい。まあ、道具を使う人は周りの人に道具が当たらないように使用しなければいけないが。
制限時間は二分。スターターピストルが鳴り、一斉に投げ始める。
やはり、投げる人が多い。道具を使う人もいるのだろうか。
「一番最初に入れるのは私よ!!」
誰よりも早く投げ始めたのは我がクラスのトップバッターの嗚呼さんだ。宣言通り一番最初にネットに入れる事に成功する。
「ああ!!最高!!一番は私にこそふさわしいわ」
一番最初に入れた嗚呼さんだが、その後はまるで入れる事が出来ないでいる。どうやら、嗚呼さんは一番を達成した瞬間、本来のステータスに戻ってしまうようだ。
二年女子は順調に玉を入れている、他のクラスの女子で玉入れが得意な人もいるのだろう活躍していた。一方でうちのクラスだ。嗚呼さんの他に誰が目立つだろうか。俺の予想では、バスケ部である、飯島さんに期待が掛かる。
「よっと」
バスケのシュートフォームで、玉をネットに向かって投げるが、バスケと勝手が違う為中々入らない。
その様子を三年の米田先輩が、見ていた。
「コラー茜ぇ!!なんだそのシュートは!!」
「げぇ、よ、米田先輩ぃ」
米田先輩に叱られ、萎縮したのか、その後も飯島さんは外しては叱られるを繰り返していた。
「米田先輩って部活だと別人になるって聞いた事あったけど。部活意外にも変わるんだな」
「雪先輩は茜ちゃんには厳しかったからな。期待してたし。一番可愛がってた。久しぶりだ、茜ちゃんが怒られてるの見るの。いやー懐かしい」
「コラー茜ぇ!!」
「ひぃー。すみませぇーん」
飯島さんは今回不調に終わりそうだな。
「お、孝一。見て見ろよ、ゆりあちゃんが少し離れた所でなにかやってるぞ」
快斗に言われ、視線をネットから少し離れた所に立つ麦野さんに向ける。麦野さんは、道具を使っている様だ。
「あれって、ゴルフの構えだよな?」
「だろうな、ゆりあちゃんはこの学校唯一のゴルフ部員だし。木で出来たゴルフクラブで打つつもりだな。声を掛けたい所だけど、集中してるし、声を掛けないで欲しいって思ってる」
「なんでわかる」
「そりゃ、俺だから」
麦野さんは足元にある玉を見つめ、木で出来たクラブを振り、玉に当てると、玉はネットに吸い込まれていく。
「よし!!」
小さくガッツポーズを決めた麦野さんはその後もどんどん玉を入れていく。
凄いな。
「さてさて、灰村さんはと」
快斗が灰村を探す。そういえば灰村はどこにいるのだろう。
灰村は、三つあるネットのちょうど中心の場所に立っていた。手には玉を持っているが投げてはいない。そんな灰村に一人の女子が近づく。夢沼先輩だ。
「やあ、灰村」
「……なんか用」
「冷たいねぇ。可愛い後輩に話し掛けちゃいけないわけ」
「あんたが絡んでくるとろくな事がないから」
「そんな事言わずにさ。どお、この玉入れ。どこが勝つと思ってる」
「さあ、わかんない」
「嘘ね。分かってるでしょ。さっきから灰村は一年の方ばかり見てる。気になる生徒でもいるの」
灰村と夢沼先輩。二人が何を話しているのかは分からないが二人が、一年の方を見ているのだけはわかった。俺も二人につられ、一年を見る事に。
「はいはいはい!!私にどんどん玉をちょうだーい」
一年の玉入れで大活躍していたのは探偵部の後輩伊藤だった。
伊藤は玉をどんどんと投げている。伊藤が投げた玉は外れる事無く、入っていた。
「伊藤凄いな」
「香和里ちゃんは運動神経は超良いからな。なにやっても活躍するさ」
中学から伊藤の事を知っている快斗は驚く事もなく伊藤の事を見ている。
「一年生は香和里ちゃんに全てを託してる。まあ、それが一番良いかもな。運動に関しては香和里ちゃんに敵う人はそうはいないし」
「へえ、そうなんだ」
「灰村さんはそれが分かってたんじゃ無いのか。さすが灰村さん、素敵だ」
まあ、灰村なら伊藤の事調べてそうだな。
さて、灰村はと。
「あの一年の子。凄いじゃん。確か探偵部の一人よね」
「そうね。香和里ちゃんの事は知ってるけどあそこまで凄いとはね」
「それに胸も超でっかい」
「おっさん見たいねあんた」
「あの子も大きいけど……」
灰村と会話中の夢沼先輩は突如、灰村の胸へと手を伸ばし、胸を触る。
「わお、意外とボリューミーじゃん」
夢沼先輩は灰村の胸を揉んでいる。この光景は見て良い物なのだろうか……。
灰村はすぐに夢沼先輩の手を払う。
「おい!!見たか!!三年の夢沼先輩が今、灰村さんの胸揉んでたぞ!!」
この光景を見ていたのは俺だけじゃ無かったようで、クラスの男子、スケベ代表の近衛くんとその他クラスの男子達もバッチリ見ていたようで近衛くん程では無いが、明らかに興奮していた。
そのスケベの視線に天罰が下る。
「見てんじゃねえよ」
灰村の最大級の睨みが男子に向けられる。
久しぶりに見た灰村の睨み相変わらずの破壊力のようで、灰村に視線を向けられた男子は全員が萎縮し、視線を逸らした。
「うっわ。恐っ」
「あんたが余計な事するからでしょ」
「余計な事とは思わないけどね、男子達にサービスしなきゃ」
「だったら自分の身体でやれよ」
「灰村の身体の方が周りを興奮させられると思ったからよ。この光景を思い出し、今日おかずにするバカいるかもね」
「きも……」
「まあ、灰村に絡むのはこれくらいにしてあげる。あんまりやるとあんたキレて去年のクリスマスの事言ってきそうだし」
「その事は言わないよ。今あんたは私に敵意を向けている訳では無いし。安心しなよ」
「あら優しい。惚れちゃいそう」
「所であんたのクラス、一人足りないみたいだけど」
「ああ、あの人ね。特別枠だから次に出場する事になってる」
「……次ね」
夢沼先輩は灰村との会話が終わったのか、手をヒラヒラとさせ、三年の群衆の中へと消えていき、灰村も二年の中へ戻っていった。
時間が過ぎ、玉入れが終了し、結果は一年伊藤の活躍が大きかったらしく、大差で一位。続いて二位、三年。三位が二年となった。二年はゴルフ部の麦野さんが活躍していたが、三年には一球差で負けてしまった。
戻ってきた灰村は、総合的に、現在は三年五組が一位である事を告げてきた。玉入れの結果で俺達二年は敗北した事で、順位が入れ替わったそうだ。
「次の綱引きで三年に負けたら、もう総合一位はとれない。間宮くん。君に掛かってる」
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