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第1章 鈴の音の残響
第4響 彼の言葉は何時も正しい
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鈴織は倒れた相浦に手を差し出す。
「あ、ありがと...け、けど鈴織君、確か適性魔法無しじゃなかったっけ....?」
鈴織は腰ベルトに付いた鈴を確認しながら答える。
「ローブを着た老人も初めに言っていましたが、あの水晶で計れるのはどうやら赤、青、緑の三色の魔法のみのようです。他の種類があるかは今の所分かりませんが、私の使える魔法はそれに当てはまらないようですね。」
「す、すごいよ!それって特別な魔法ってことだよ、ね?」
「...いえ、どうでしょう。使い方によっては化ける可能性もありますが、それでもこれは使い勝手が悪すぎるように思います。」
「そ、そうかな?...けど、これで鈴織君の評価も改善されるよねっ?」
明るく言う相浦に、鈴織は首を横に振る。
「そのことなのですが、協力というのは魔法の事だけではなくてですね」
「...?」
「私は今日中に、この城を抜け出そうと思います。...相浦さん、手伝ってくれませんか?」
「...えと、それは夜の散歩とか、そういうのじゃ」
「ないですね。つまり、もう此処には戻って来ません。」
「...一応、なんで此処を出るのか聞いてもいい?」
「理由は二つあります。一つはこの世界を見て回りたいという私個人の好奇心。もう一つは...恐らく、近いうちにこのクラスは崩壊するからです。」
「....そっか、」
鈴織の返答に対し、相浦は目を瞑る。
十秒。
再び目を開け口を開く。
開かれた目には何も映っていない。
「うん。わかった...手伝うよ。けど、クラスが崩壊するなら此処にはもう居たくないな。私も一緒に連れて行ってくれる?」
微笑む相浦。
その目にはやはり何も映っていない。
「別にそれは構いませんが...しかし、クラス崩壊の理由を聞く前に返答して良かったのですか?私の考えが間違えているとは」
「いいの。.....鈴織君の言う事が間違いなわけないし...」
『香夜君の言う事が間違いなわけないから』
!?
「いまの台詞....どこかで....」
「......どうしたの?」
「...いえ。...なんでもありません。」
「...あ、そうだ。これだけは聞きたい、かな............ねぇ、どうして私を選んだの?」
相浦は自分の顔を鈴織の顔へと近づけ瞳を覗き込む。
「...なんとなく、ですよ。」
一瞬脳裏を過った言葉をもう一度しまい込み、鈴織はこれからの事を相浦に説明する。
「あ、ありがと...け、けど鈴織君、確か適性魔法無しじゃなかったっけ....?」
鈴織は腰ベルトに付いた鈴を確認しながら答える。
「ローブを着た老人も初めに言っていましたが、あの水晶で計れるのはどうやら赤、青、緑の三色の魔法のみのようです。他の種類があるかは今の所分かりませんが、私の使える魔法はそれに当てはまらないようですね。」
「す、すごいよ!それって特別な魔法ってことだよ、ね?」
「...いえ、どうでしょう。使い方によっては化ける可能性もありますが、それでもこれは使い勝手が悪すぎるように思います。」
「そ、そうかな?...けど、これで鈴織君の評価も改善されるよねっ?」
明るく言う相浦に、鈴織は首を横に振る。
「そのことなのですが、協力というのは魔法の事だけではなくてですね」
「...?」
「私は今日中に、この城を抜け出そうと思います。...相浦さん、手伝ってくれませんか?」
「...えと、それは夜の散歩とか、そういうのじゃ」
「ないですね。つまり、もう此処には戻って来ません。」
「...一応、なんで此処を出るのか聞いてもいい?」
「理由は二つあります。一つはこの世界を見て回りたいという私個人の好奇心。もう一つは...恐らく、近いうちにこのクラスは崩壊するからです。」
「....そっか、」
鈴織の返答に対し、相浦は目を瞑る。
十秒。
再び目を開け口を開く。
開かれた目には何も映っていない。
「うん。わかった...手伝うよ。けど、クラスが崩壊するなら此処にはもう居たくないな。私も一緒に連れて行ってくれる?」
微笑む相浦。
その目にはやはり何も映っていない。
「別にそれは構いませんが...しかし、クラス崩壊の理由を聞く前に返答して良かったのですか?私の考えが間違えているとは」
「いいの。.....鈴織君の言う事が間違いなわけないし...」
『香夜君の言う事が間違いなわけないから』
!?
「いまの台詞....どこかで....」
「......どうしたの?」
「...いえ。...なんでもありません。」
「...あ、そうだ。これだけは聞きたい、かな............ねぇ、どうして私を選んだの?」
相浦は自分の顔を鈴織の顔へと近づけ瞳を覗き込む。
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一瞬脳裏を過った言葉をもう一度しまい込み、鈴織はこれからの事を相浦に説明する。
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