堂崎くんの由利さんデータ

豊 幸恵

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堂崎のライバル!?

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「……身長も体型もお前に近い。歳は……あのときはまだ大学生だったと思うが。就活中って言ってたな」
「あのときって、いつ?」
「二年前くらい」
「えー……歳も僕とほぼ同じか……」
 というか、由利さんとの出会いもほぼ同時期じゃないか。これはマジで僕の運命のライバルじゃないの、こいつ。

「大学もわかんないよね。何か特徴とかある?」
「真面目そうな奴。さらさらの黒髪で目が大きくて、化粧とかピアスとか縁がなさそうなタイプだった。あと香水じゃないいい匂いがした」
 ん? 何か一部どこかで聞いた特徴だな。
「今の由利さんの好みと真逆じゃん」
「だ、だから好みだとは言ってねえだろ。そういう奴だったって話」
 ごまかせてないよ、由利さん。

「他には? 家が分かってるならその周辺の大学の友達を当たってみるから。見た目以外の特徴とかある?」
「家はS区あたりだったが……」
「S区かあ。僕は就活セミナー巡りのために、親戚のアパートの空き部屋に二・三週間滞在させてもらったことがあるくらいだな……。あの周辺の大学ってどこだっけ」
 そういえば由利さんに初めて会ったのも、ちょうどこの時だったっけ。

「特徴って言えば、お前がこの間○△商事のデータくれたろ。そいつ就活用にあれにすごくよく似たデータを作ってたんだよ。……お前、実は知り合いだったりしない?」
「へえ、データを? データ収集分析同好会の仲間なら他の大学とも交流あるから、僕が知ってる人の可能性もあるかも。データのやりとりを同じフォーマット使ってしたりするから」
「……そんな同好会あんのか。まあいいや、もし情報があるならありがたい」

「そんで、由利さん。そいつが見つかったとして、どうすんの?」
 僕はメモに人捜しのためにやることを書き出してから、再び彼を見た。
「え? えーと、とりあえず謝罪?」
「……ほんと、一度しか会ってない大学生に、一体何したんですか、あんたは。……それで、謝罪した後はどうすんの。罪悪感から逃れたいだけなら、そこで許しがもらえればOKだろうけど」
「あー、うん……」
 なんとも歯切れの悪い返事だ。

「あわよくばお付き合いしたいなどと、恋人の僕を前にそんなこと考えてる?」
「いや、俺みたいなクズと付き合うなんて、あっちが嫌だろ。目が合っただけで逃げられたんだし、俺は絶対嫌われてる」
「かもしれない、でしょ。はいはい、分かった」
 僕はやることリストのメモだけ切り取って、手帳型スマホケースのポケットに突っ込んだ。

「では由利さんのお悩みをぶった切って、テーブルの上に並べていきますね。どう処理するかは由利さん次第」
 ボールペンのおしりでテーブルをコンコンと叩く。
 それに由利さんが少しだけ居住まいを正した。
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