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3 現状とこれから
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互いに落ち着くのを待って、向かい合うように席に着く。
「正直に、お話しします。フェドナルンド様は、周囲の方々に、嫌われて、います」
表情をうつむかせたまま、ミルトはそう言葉を紡いでくれた。
そんな彼女に、俺は優しく声をかける。
「ハズレスキルである錬金術とは関係なく。そうだな?」
「……はい」
暴君のような言動。
権力を盾にした脅し。
話はそれだけにとどまらない。
「フルンデル伯爵家全体が嫌われていて、その影響も大きいです」
祖父までは良かったが、急な情勢の変化で代替わり。
野心の強い父は、領民に高い税を課した。
「増えた収入で、領軍を増やしておられます」
当たり前の話だが、急な戦力の増加は、他の貴族からの反発を招く。
民からの反発も強い。
「お金で強い人を集めて、王様になろうとしている。そう噂する方もいます」
だが、それらはすべて、伯爵である父の権力の範囲内。
調査は入るが、踏み込めるだけの証拠は見つからない。
王国のルール上問題ないため、王家も手を出せないらしい。
「私の家は、先代の伯爵さまに、助けてもらいました」
その縁で俺たちの婚約が決まり、後に父の暴走が始まったそうだ。
許嫁として領地を見て、彼女は伯爵家のあり方を直接目にした。
「私は、伯爵家が長く続くとは思えません……」
強い軍を使って魔物を狩る。
得た素材で、軍を強くする。
伯爵家と領軍だけで金が回り、領地は荒れ始めているそうだ。
「民と貴族。その両方を敵に回した家が、栄えた歴史はないです」
その状況下で、俺がハズレスキルを神に与えられた。
仮に長男が不幸で亡くなっても、俺が伯爵家を継ぐことはない。
ミルトが伯爵家に関与し、方向修正をする未来はなくなった。
「なので、フェドナルンド様を怒らせて……」
処刑されようと思ったのか。
ミルトが殺されれば、大義名分が出来る。
実家である男爵家を旗頭にして、多くの貴族が伯爵家を攻めるのだろう。
「男爵にそう命じられたのか?」
「いえ。私の独断で動きました」
「……そうか」
仕草を見る限り、嘘は言っていない。
それに、はじめから不思議に思っていた点もある。
「メイドすら連れていないのは、周囲を守るためだな?」
「はい。私のわがままに、付き合わせることは出来ないので」
相手は12歳の少女。
そう思っていたが、彼女はこの世界で12年生きた貴族。
自分の思いを恥じるばかりだ。
「身を挺した忠告。ありがたく受け入れる」
異世界に来た嬉しさ。
錬金術に対する高揚感。
ラノベの中に入れたと浮ついていた自分を恥ずかしく思う。
「改めて、ミルトレイナ男爵令嬢に問いたい。俺と共に、伯爵家を正す気はあるか?」
ピクリと肩を跳ねさせた彼女が、ゆっくりと顔を上げる。
不安そうに本を抱きながらも、まっすぐに俺の目を見返した。
「今日のフェドナルンド様は、本物ですか……?」
「なるほど。そんなに処刑されたいのか?」
俺はクスリと肩を揺らして、苺のタルトに手を伸ばす。
冗談だというと、彼女は驚きながらも、自分の言葉を紡いだ。
「なんだか今日は、大人の方と、話しているみたいです」
「錬金術のスキルを与えられて、俺も大人になったのだろう」
俺からすると、あなたは本当に12歳ですか? って聞きたいがな。
日本なら小学生か?
逆上がり。いや、サッカー部がモテる!
ダッシュで帰ってゲームやるぜ!
小学校の記憶なんて、そのくらいしかない。
なにはともあれ、
「仮に今の俺が偽物だとして、ミルトレイナ嬢に不都合はあるか?」
「……ないです」
その答えがすべてだろう。
「改めて問いたい。俺と共に、伯爵家を正す気はあるか?」
「はい」
迷いのない答えが聞けてホッとする。
彼女が抱える本を見て、俺は姿勢を正した。
「であれば、俺に錬金術を教えてもらいたい」
「……錬金術を、ですか?」
「ああ。俺が持つ唯一のものだ」
現状の俺は、ハズレスキルを持ったクズだ。
父や兄、弟に意見をしても、まともに取り合ってもらえるとは思えない。
まずは、威張り散らせるだけの権力を取り返す必要がある。
「目標は次期伯爵の座。だが、それも手段の1つでしかない」
なすべきことは、彼女が言った『伯爵家を正す』こと。
ダメだとわかれば、次期伯爵にも、錬金術にも、こだわる気もない。
「すべての可能性を探りたい。そう思っている」
気になるのは
『次世代は良くなりそうだと、亡き父に良い報告が出来そうです』
そう言ったセバスの言葉。
セバスは父の側近だが、悪い人間には思えなかった。
父を筆頭に、長男も双子の弟もクズだ。
母を含めた婦人たちも、金や権力に魅入られている。
「セバスに話を持ち掛けてみるのはありだな」
なにはともあれ、自分の可能性を探ることから始めよう。
それと、唯一の協力者である彼女との関係も築きたい。
「ミルド。俺のことを愛称で呼ぶことを許す。これからはフェドナと呼ぶように」
まずは形から。
フェドナルンドって長いしな。
気軽に呼び合える仲になれば、いろいろと動きやすくなる。
「わかりました。……フェドナ様」
「うむ」
先は長そうだが、時間が解決してくれる問題もある。
まずは錬金術で出来ることを探る。
そこから始めよう。
「正直に、お話しします。フェドナルンド様は、周囲の方々に、嫌われて、います」
表情をうつむかせたまま、ミルトはそう言葉を紡いでくれた。
そんな彼女に、俺は優しく声をかける。
「ハズレスキルである錬金術とは関係なく。そうだな?」
「……はい」
暴君のような言動。
権力を盾にした脅し。
話はそれだけにとどまらない。
「フルンデル伯爵家全体が嫌われていて、その影響も大きいです」
祖父までは良かったが、急な情勢の変化で代替わり。
野心の強い父は、領民に高い税を課した。
「増えた収入で、領軍を増やしておられます」
当たり前の話だが、急な戦力の増加は、他の貴族からの反発を招く。
民からの反発も強い。
「お金で強い人を集めて、王様になろうとしている。そう噂する方もいます」
だが、それらはすべて、伯爵である父の権力の範囲内。
調査は入るが、踏み込めるだけの証拠は見つからない。
王国のルール上問題ないため、王家も手を出せないらしい。
「私の家は、先代の伯爵さまに、助けてもらいました」
その縁で俺たちの婚約が決まり、後に父の暴走が始まったそうだ。
許嫁として領地を見て、彼女は伯爵家のあり方を直接目にした。
「私は、伯爵家が長く続くとは思えません……」
強い軍を使って魔物を狩る。
得た素材で、軍を強くする。
伯爵家と領軍だけで金が回り、領地は荒れ始めているそうだ。
「民と貴族。その両方を敵に回した家が、栄えた歴史はないです」
その状況下で、俺がハズレスキルを神に与えられた。
仮に長男が不幸で亡くなっても、俺が伯爵家を継ぐことはない。
ミルトが伯爵家に関与し、方向修正をする未来はなくなった。
「なので、フェドナルンド様を怒らせて……」
処刑されようと思ったのか。
ミルトが殺されれば、大義名分が出来る。
実家である男爵家を旗頭にして、多くの貴族が伯爵家を攻めるのだろう。
「男爵にそう命じられたのか?」
「いえ。私の独断で動きました」
「……そうか」
仕草を見る限り、嘘は言っていない。
それに、はじめから不思議に思っていた点もある。
「メイドすら連れていないのは、周囲を守るためだな?」
「はい。私のわがままに、付き合わせることは出来ないので」
相手は12歳の少女。
そう思っていたが、彼女はこの世界で12年生きた貴族。
自分の思いを恥じるばかりだ。
「身を挺した忠告。ありがたく受け入れる」
異世界に来た嬉しさ。
錬金術に対する高揚感。
ラノベの中に入れたと浮ついていた自分を恥ずかしく思う。
「改めて、ミルトレイナ男爵令嬢に問いたい。俺と共に、伯爵家を正す気はあるか?」
ピクリと肩を跳ねさせた彼女が、ゆっくりと顔を上げる。
不安そうに本を抱きながらも、まっすぐに俺の目を見返した。
「今日のフェドナルンド様は、本物ですか……?」
「なるほど。そんなに処刑されたいのか?」
俺はクスリと肩を揺らして、苺のタルトに手を伸ばす。
冗談だというと、彼女は驚きながらも、自分の言葉を紡いだ。
「なんだか今日は、大人の方と、話しているみたいです」
「錬金術のスキルを与えられて、俺も大人になったのだろう」
俺からすると、あなたは本当に12歳ですか? って聞きたいがな。
日本なら小学生か?
逆上がり。いや、サッカー部がモテる!
ダッシュで帰ってゲームやるぜ!
小学校の記憶なんて、そのくらいしかない。
なにはともあれ、
「仮に今の俺が偽物だとして、ミルトレイナ嬢に不都合はあるか?」
「……ないです」
その答えがすべてだろう。
「改めて問いたい。俺と共に、伯爵家を正す気はあるか?」
「はい」
迷いのない答えが聞けてホッとする。
彼女が抱える本を見て、俺は姿勢を正した。
「であれば、俺に錬金術を教えてもらいたい」
「……錬金術を、ですか?」
「ああ。俺が持つ唯一のものだ」
現状の俺は、ハズレスキルを持ったクズだ。
父や兄、弟に意見をしても、まともに取り合ってもらえるとは思えない。
まずは、威張り散らせるだけの権力を取り返す必要がある。
「目標は次期伯爵の座。だが、それも手段の1つでしかない」
なすべきことは、彼女が言った『伯爵家を正す』こと。
ダメだとわかれば、次期伯爵にも、錬金術にも、こだわる気もない。
「すべての可能性を探りたい。そう思っている」
気になるのは
『次世代は良くなりそうだと、亡き父に良い報告が出来そうです』
そう言ったセバスの言葉。
セバスは父の側近だが、悪い人間には思えなかった。
父を筆頭に、長男も双子の弟もクズだ。
母を含めた婦人たちも、金や権力に魅入られている。
「セバスに話を持ち掛けてみるのはありだな」
なにはともあれ、自分の可能性を探ることから始めよう。
それと、唯一の協力者である彼女との関係も築きたい。
「ミルド。俺のことを愛称で呼ぶことを許す。これからはフェドナと呼ぶように」
まずは形から。
フェドナルンドって長いしな。
気軽に呼び合える仲になれば、いろいろと動きやすくなる。
「わかりました。……フェドナ様」
「うむ」
先は長そうだが、時間が解決してくれる問題もある。
まずは錬金術で出来ることを探る。
そこから始めよう。
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